「20年間ライヴからは逃げずに」20周年アニバーサリー、矢井田 瞳が語る20年。ニューアルバム『Sharing』インタビュー

ー なるほど！

だから言われた方も「あ、これは来ないな」って分かってるんです（笑）。歌詞にも書きましたが「アホ」も大阪と東京ではニュアンスは違いますよね。アホって関西人にとっては時には褒め言葉になるし、友達に「アホやなぁ」って言われたら「あ、親友になったな」って思います（笑）。勿論本当に駄目なことをして「アホか！」って怒られる時もありますけど、この言葉には愛を感じることが多いんですよね。だからそういうニュアンスも伝われば嬉しいです。


ー 地元愛の曲って良いですよね。

でもそれこそ東京をテーマにした曲が日本で一番多いですよね。


ー ただあれって、地方から上京した人が描く東京が多くて。

そうそう！上京して夢を抱いたり挫折したり…みたいな曲はあるけど、東京の人が書く東京の曲も聴きたいなぁっていつも思います。


ー「はだしのダイアリー」はNHK『みんなのうた』の為の書き下ろしですが『みんなのうた』への楽曲提供は夢だったとか。

夢でした！だから今回はとても嬉しいです。例えば散歩している時やお風呂に入っている時など、本当に日常の中でふと『みんなのうた』の歌を鼻歌で歌っちゃう。例えば「コンピューターおばあちゃん」とか。私にとって『みんなのうた』はそういう存在なので、私もふと歌っちゃうメロディを大切に考えました。だからいつもはギターやピアノの前で曲を書くことが多いけどこの曲に関しては、自分の中から“名鼻歌”が出てくるまで楽器を持たないって決めたんです！


ー なんか修行みたい（笑）。

アハハハ！サビはバスに乗っている時に生まれたんですが、一日中ひたすら歩いたりして、ひたすら鼻歌の出待ち（笑）。デビュー当時、私が裸足で歌っていたせいか、NHKさんからは“裸足”というテーマを頂いていたんです。ただ私自身、裸足で過ごすことが好きなので、良いテーマを頂いたという気持ちでした。生まれたままの姿でいたいけど、生きていく上でそうはいかない。裸足のまでいたいけど、人間関係や色々なしがらみで時にはガードする。そういう状況を＜靴を履くこと＞と＜裸足＞になぞえらていったら面白いかなと思いました。


ー そもそも矢井田さんが歌詞を書く時の発想力の起点はどういうものなんですか？

基本は心が動いた時です。もっと言えば心が動いたけど説明出来ない時。この感情は何だろうと思った時に歌詞にすることが多いです。ただ、メロディやサウンドに対してああでもないこうでもないって試行錯誤するのは楽しくて好きなんですが、歌詞を書く時は（体に力を入れるジェスチャーで）「苦しい〜〜！」って（笑）。歌詞書きが楽だった時はこの20年間一度もないです。


ー そうなんですか？

でも結局それって苦しいことを後回しにしちゃうからなんですよね（笑）。楽しいって思う音作りだけ最初にやって、歌詞を最後の最後まで手をつけないから苦しくなるってデビューして7年くらいで気づいて（笑）、メロディが出来たとしてもまずこのメロディはどんなテーマを欲しがっているかを同時に考えるようにして、自然と生まれる言葉やハマりの良い言葉を少しでも自分の中に見つけてから楽しいことをやるようにするって変えました（笑）。


ー「きっとJust fine」はGAKUさんが作曲。GAKUさんは高高-takataka-さんを通じて一緒に音作りをされるようになったんですよね。

そうです。


ー オリジナルアルバムで別の方が曲を手掛けるのは初めてということですが、いかがでしたか？

多分、全く知らない方なら作曲をお願いすることはなかったと思うんですが、GAKUさんも高高-takataka-と同じ頃から音楽をやりとりしていたし、シンプルにGAKUさんの頭の中のサウンドが好きなので、GAKUさんが書いてくれた曲には自然と言葉が浮かんできました。それにGAKUさんは私の音域も熟知しているので、私のことを十分理解して作ってくれたんだと、曲を聴いてすごく分かりました。


ー 実際、アイリッシュとJ-POPのバランスが矢井田さんっぽくて、最初は矢井田さんが作られたのかと思いました。

嬉しいです。GAKUさんとある程度分かり合っているからこそ良い着地点が見つけられたと思っています。GAKUさんからは「ひたすら前向きで明るいことと1ミリも後ろ向きでないもの」というリクエストをもらっていたので、後ろ向きな思考に引っ張られないよう（笑）自分から出てくる前向きな言葉や、素敵だなと思う日常の瞬間を切り取って書きました。ただそれが私個人的なことになりすぎないようには意識したので、どこかの誰かが共感してくれると嬉しいですね。


ー 10月31日には【矢井田 瞳 20th Anniversary Release Live『Sharing』】がZepp DiverCity（TOKYO）で開催されますが、今回は有観客とオンラインのハイブリッド。

そうです！こういう形でのライヴは私自身初めての経験となるので、どんなことが出来るのかまさにリアルタイムで模索中です。「ヤイコの日」は無観客ライヴということもあって無観客ならではの演出も出来ましたが、今回はそれとも違うし。なので来てくれたお客さんにも、配信で観てくださるお客さんにも満足して頂けるステージになるよう頑張ります！


ー ありがとうございました。ライヴも楽しみにしています。


インタビュアー：秋山雅美（@ps_masayan）


■ 矢井田 瞳 オフィシャルサイト
https://yaiko.jp/