「20年間ライヴからは逃げずに」20周年アニバーサリー、矢井田 瞳が語る20年。ニューアルバム『Sharing』インタビュー
October 13, 2020 18:00
矢井田 瞳
ー でもカヴァーする上で大切な理由ですよね。
そう思います。彼らとは性別も年代も違うけど、心が熱くなる感じは共有出来るし、この曲はそういう曲だと思います。『Beginning』、『Keep Going』に続く『Sharing』は三部作の完結編みたいな裏テーマを自分の中に持っているんですが、そこに高高-takataka-のカヴァーを収録することでまとまりが良いと思ったし、私が歌っても聴く人に響いてくれるんじゃないかという確信がありました。
ー すごく良かったです!カヴァーはオリジナルアルバムでは初めてでしたよね?
初めてです。でもオリジナルアルバムは全曲自分の曲じゃなくては駄目みたいな括りを外すことで、きっと違う気持ちが生まれると思いチャレンジしました。『Sharing』というタイトル通り、もっと広く音楽を分け合うことにも繋がると思いましたし。
ー これは個人的なイメージですが、高高-takataka-さんのオリジナルが力強く前へ進むのに対して、矢井田さんのカヴァーは高く上空へ舞い上がるイメージでした。
この曲が持っている、聴く人の心を熱くする部分は絶対にキープしたいと思ったんですが、一曲通してゆっくり高揚していく方がきっと今の私の声や年齢に合っているんじゃないかと思ったので、そういう部分は意識しました。リアレンジしてくれたYaiko Bandの鶴ちゃん(鶴谷 崇)の力量もありますが。でも舞台袖でずっと聴いていたとはいえ、歌ってみるとこれがめっちゃ難しくて!やはり人の曲は譜割ひとつとっても私にはないものなので覚えられなかったり、「うわ、亮佑くん(高瀬亮佑)はこんなに難しい曲をあんなにあっさり歌ってたんだ」と思って見直してみたり(笑)。自分の中からイメージが沸いてくるオリジナル曲はすごく自然に歌えるからそれはそれで良いですが、カヴァーすることによって新たな血が自分の中に入って勉強にもなりました。
ー カヴァーって面白いですよね。それこそ先程の話じゃないですが、譜割も普段そのアーティストからは出ないものだし、ヴォーカルラインや旋律、すべてにとってそうなので、すごく新鮮で楽しいです。
あ、確かにそういうことを感じてもらえると嬉しいです!
ー「Gradation」は様々なサウンドの魅力を感じました。イントロのアコギも格好良いし。
それまさに高高-takataka-です!
ー そうだったんですか!めちゃくちゃ格好良いですし、そこからふっと抜けるAメロ、サビの清々しい疾走感。更にその高高-takataka-さんのアグレッシブなアコギだけでなくコーラス、シンセなど楽器が多用されていると思われるのに、ごちゃごちゃしていない感じで。
嬉しいです。この曲は私がアコギ弾き語りで書いた曲なんですが、プロデューサーのGAKUさんに「ヴォーカルは静かに熱くなりすぎず歌うのに、バックはめちゃめちゃ熱い演奏でロックしたい」とリクエストしたんです。ただそれをバンドではなく、あえて高高-takataka-にアコギで担当してもらうと面白いかもという挑戦から始まりました。細かいギターフレーズも亮佑くんと歩(高田歩)で二拍二拍で分けて弾いたり。そういう掛け合いも沢山入っているので、物凄く精密に一拍ずつ作られているんですが、さらりと聴けてライヴ感も感じるところを目指しました。
ー それは元々矢井田さんがこの曲で目指していた音作りだったんですか?
そうですね。ただ高高-takataka-と出会ったばかりの頃なら、こんな難しい音作りは出来なかったかもしれません。でも、もう一緒に一年半も音楽に携わってきた今だからこそ出来たことかなとも感じています。
ー 先日『ヤイコとヒロトとごゆるりと。』を観させて頂いたんですが、「かまってちゃん。」が気になるというコメントも多かったですね。
そうなんですよ!みんな食いついてくれて(笑)。やっぱりタイトルがちょっと強めだから(笑)。この曲の主人公は、自分の近くにいる“かまってちゃん”に、すごく辛い想いや腹立たしい想いをさせられてきたけど、それを全部噛み砕いて「。」をつけることで「はい終わり!チャンチャン」って終わらせるイメージです。ただ下手したら重くなりがちなテーマなので、ギターではなくウクレレを使いました。私、重くなりそうな歌詞ほど可愛い音とか使いたくなっちゃうんですよ(笑)。
ー でもそれがピッタリ合っています!でも“かまってちゃん”って、SNSが出てきてから、更に目立つようになりましたよね。
そうですよね。「え?それで私はどうしたら良いですか?」って言いたくなる時も沢山あるし(笑)。そういう“かまってちゃん”に引きずり込まれるような人生を送っていない人にはきっと理解出来ない歌詞だと思うんですが、時として深く狭く掘り下げることも音楽の醍醐味だと思っています。
ー 掘り下げるという意味では、関西限定シングル「ネオンの朝」ですが、何故関西限定シングルを作ろうと思われたんですか?
私は20年前の5月3日に関西限定シングル「Howling」でインディーズデビューしたんですが、元々20年後の同じ日に関西愛を歌った曲をリリースしようと計画していたんです。結局リリース日は変わりましたが。
ー なるほど。特に関西の人にはあるあるの歌詞が多いようで、例えば、行けたら行くわ…。
(関西弁で)「行けたら行くわ」ね。
ー やっぱり発音が全然違う(笑)。私は東京出身なので、その言葉のニュアンスがあまりわからなくて。
「行けたら行くわ」って言う時は行きますか?
ー 本当に都合が合えば行くし、行けなかったら連絡しますね。
ああ、本当に言葉通りなんだ。関西で「行けたら行くわ」は基本行かないけど、こう言っておけば丸くおさまるっていう感じです(笑)。言い方も結構軽いノリというか。