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長澤知之『GIFT』(12月7日発売)インタビュー

長澤知之『GIFT』(12月7日発売)インタビュー

December 2, 2016 18:00

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ー この曲が生まれたきっかけは何かあったの?

去年の夏、骨髄炎で入院していた病院にカール・ミレスというスウェーデンの彫刻家が作った彫刻「神の手」があって。


ー 7月のライヴで話していた彫刻だね。

そうそう。8mの塔の上で人間が神様の手の上に乗っている像で、人間はちょっと慄きながらもまっすぐ90度に天を見上げている。だから彼の表情を下から見ることは出来なくて、天から見ないと結局彼の表情は読めない作りになっていて。彼は神様しか見ていない。この世の中で何か悲惨なことが起こっていようが、周りにハッピーな団体がいようが、そんなことは気にしていない。「世」よりも「神」や「天」しか見ていないという姿にとても感銘を受けて。芸術にしたってそうだと思うんだよね。真っすぐに見る集中力、周りが何かを言ったとしても作品世界しか見ていない人の方を僕は美しく感じる。生きることに集中することもそう。人それぞれ生きている中で人生そのものが芸術だなと捉えるようになって。


ー なるほど。

東日本大震災のこともそうなんだけど、普通に生きている人がある日パタリと消えていなくなる。自分が普通に暮らしている中で、猫を可愛がったりギターを弾いたり友達とはしゃいだりして、家に帰って寝て、だるいなと思いながら朝目覚めて朝食を食べて、歌詞を書いたりして。ささやかながら「生活」の中で暮らそうとしている。それはみんなそうで、例えば秋山さんが今日ここに辿り着くまでに、何を着ようかな…この服はお気に入りだからこれを着ようって考えたり、家に帰って絵を描いたり。そういう暮らしをそれぞれの人が送っている中で、自分が日々当たり前にしていることや好きなことが絶たれるのはとても悲しいことでしょ。


ー 悲しい。

でも今あげたような日常を日常として送れていることが、何て言うのかな…愛らしい。普通に生きていられることが、授かり物のような素敵なことだなと思って。だからライヴの時も、みんながどうやってその会場まで辿り着いてきてくれたのか知らないし、ひょっとしたら東京以外から来てくれている人もいるかもしれない。その人がどういう人生を送っていて、例えば、小学生時代にいじめられたとか、高校の時に不登校になったとか、そういうのは知る由もないけど、そういうそれぞれの人生、それぞれの自分を味わってライヴ会場へ来てくれて、僕を見ていて僕もみんなを見ている。それが本当に美しく素晴らしいことだなと感じるようになってきたんだ。その人生を全う出来たら良いねという希望も込めて「人はみなアーティストだから 完成を描いてなくっちゃ」と歌う。もしかしたらその死がバッドエンドかもしれないけど、それも芸術だと僕は言いたくて。


ー バッドエンドも芸術ね。

死も生きることも全てまとめて本当に美しい「作品」なんだ、みんな作品を生きているんだって。それを意識するかしないかの問題だと思うけど、意識出来た瞬間から誰に対して…たとえそれが僕が嫌いな人でも生理的に無理と思える人だとしても、作品を生きているんだと考えると、美しいと思えるようになってきた。だから“アーティスト”を書こうと思ったんだ。

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ー “無題”も同じように「神の手」からの影響があるとライヴでは言っていたよね。

影響はあるね。死生観については小さい頃からずっと考えてきたことで、死んだ後どうなってしまうかが恐怖で、虚無になってしまうのが怖いなと思ったりしていた。でも虚無になることを怖がるということがそもそも不可知論だから、自分が分からないことを怖がること自体がナンセンス。もしかして分からないことは安心なのかもしれない。ソクラテスは、死を恐れることは人間の驕りであると言っているんだ。


ー 人間の驕り?

もし天国と地獄があるとして、天国に行ったら自分たちが憧れていた哲学者や会いたいと思う人にも会えるかもしれない。でも何もない虚無だったらそれを知ることが出来てそこに身を置くことが出来るからそれもよい。だから恐れること自体が人間の驕りだって。まあ僕はどうしても驕っているのか死を恐れるんだけど、そこに絶対的安心を誰かに教えて欲しいと思っていて。そこで神様とかに考え方を求めてしまうのは、キリスト教を信じる心をかつて持っていたことも関係しているとは思うけど。だから「大丈夫だよ、僕がそばにいるから安心していいよ」ってキリストが言っているように、人を遠い上から見つめているような感覚が欲しくて。だから僕が歌っているというよりも、こういう言葉をかけられたら最高だなと思うことを歌詞にしたんだ。


ー 長澤くんの曲が持つ優しさに、絶対的安心に似たものを感じている人は多いはずだと思うな。

そうだと嬉しい。曲を書きたいと思った時に、どこか懐かしいような新鮮な風景が体の中に宿って、そこがある種の天国のようになっていて今にもそこに行けそうなワクワク感があるから創作意欲が湧くんだ。そこに行きたいと思うから、音楽も続けていると思う。表現もそうだけど。


ー 音楽って、歌詞は言葉でありメロディは音符、つまり記号。ギターを鳴らすのも当然技術がいる。

そうだね。


ー でも長澤くんの音楽は、そういう技術や知識だけでない、その体の中に宿った懐かしいような新鮮な風景がキラキラと溜まって音になっているんだろうなと、今話を聞いていて自分なりに納得した。

技術は全然ないからね(笑)。


ー いやいや(笑)。でも長澤くんのギターは大好きだな。同じ曲でもその時々で本当に生き物のようにリズムが変わってワクワクする。

それは嬉しいな。

  YouTube

  リリース情報

長澤知之
「GIFT」

2016年12月7日発売

-収録曲-

01. 時雨
02. 舌
03. アーティスト
04. 君だけだ Acoustic Ver.
05. ボトラー
06. 風鈴の音色
07. 無題

  インフォメーション

Nagasawa Tomoyuki Live 'Gifted' 2017」

1月21日(土)東京キネマ倶楽部
16:00/17:00
問合せ:SOGO 03-3405-9999

1月24日(火)umeda AKASO
18:00/19:00
問合せ:GREENS 06-6882-1224

1月31日(火)福岡・照和
18:30/19:00
問合せ:キョードー西日本 092-714-0159

2月1日(水)福岡・照和
18:30/19:00
問合せ:キョードー西日本 092-714-0159

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