ー 曲の話になりますが、詩的表現から始まる“時雨”。途中から風景を感じさせるエピソードへ繋がる流れ、長澤くんが書いているブログと同じベクトルのリアルさを感じられて、とても心地よかった。この曲はいつ頃に作った曲?
メロディや構成の半分くらいは随分前に出来ていたね。これはよく用いる手法なんだけど、いつかの自分が書いたものを今の自分が引っ張り出して、今のバージョンにアップデートする。この曲もそうやって作ったんだ。
ー 吉本ヒロさんのドラムと、長澤くんのギターの絡み方がとても好きで。
ありがとうございます。ヒロくんは友達のサポートをやっていて。
ー 大柴広己さん?
オオシバンもそうだし、あと谷口貴洋くんとか。
ー ああ!
それで知り合って何度か飲んでいるうちに仲良くなって。今回のミニアルバムはリラックス出来る人と制作をしたい、それがまず条件だったんだ。音楽の現場はとにかく楽しいものだということを自分に再認識させたかった。ヒロくんはすごくリラックス出来る人。周りのことを見ながらきちんと行動出来る理性的な人だから、今回は是非ヒロくんに頼みたかった。
ー しかも彼のドラム、すごく素晴らしくて個人的にも惹かれたよ!
創作意欲のある人だから「こういうのどう?ああいうのどう?」って、子どもみたく無邪気に聞いてくるんだ。だからこっちも話しやすいし面白かった。 “時雨”で言えば、歌詞に沿って言葉が音像化されるように心がけていたんだ。だからヒロくんにもそういうお願いをして。「トトトトト…っと雨が降るみたいに。で、ここで突然土砂降りになる」そういうような話をしながらね。
ー あと”舌”のイントロ、「おかえり ただいま」という人の声や、全体的なやサウンドの面白さは益子さんテイスト…というかROVO感を感じたんだけど。
ああいう音の作り方はまるで僕にはないから。益子さんが得意とする分野のものなんだよね。本当は自分で「 おかえり ただいま」って言おうと思って試していたんだけど、やっぱり他者の声が良いと思って、色々な人に言ってもらったんだ。(目の前のICレコーダーを指差しながら)それこそこういうのを持って、呑みの席で「ちょっと”おかえり”って言って」って友達にお願いしたり、事務所のスタッフやそのお子さんに言ってもらったり(笑)。
ー 面白いね!
ガラッと風景が変わって見えるから、やっぱり自分以外の人の、しかも色々な声が入っている方が驚きや喜びを感じられると思うんだ。
ー 歌詞では何を歌っているんだろうと不思議になる部分と、すごく大切なことを言っているかもしれないと思わせる両面があって。ペトラって土地のこと?
アロンは人の名前でペトラは場所なんだけど、この曲は僕がよく書く歌詞のタイプ。ひとつは相手に伝えようとして分かりやすい言葉と理由を入れている。もうひとつは自分の中で完結してるものを作品として出して、後は解釈に任せる。だから、何を歌っているんだろうで終わってくれれば嬉しいなと思って(笑)。
ー なるほど(笑)。楽曲の話からはズレるけどライヴのMCで、最近映画を観ていると言っていたけど、何を観た?
何観たっけな…あ!『ガバリン』っていう映画を観た。子どもの頃に観た映画を大人になって観ることを最近よくしていて。音楽もそうだけど子どもの頃の視点って、今の自分の視点とは全く違うから、他人が観ている視点のようだったりするんだよね。このシーンをすごく覚えているけど、大人になって観た時に何でこのシーンが印象的だったのか理由が分からないとか。
ー 確かにそういうことってある。
子どもの頃は主人公の気持ちや主人公がどこに行ってどんな風景を見て、単純に純粋に感動している視点だったけど、大人になると「これはどうやって作っているんだろう?」とか「この人の演技は自然に見えるけど、監督から色々アプローチがあってこうやっているのかな?」って考える。子どもの頃は想像力の創造。大人になったら作る部分での想像。その視点が変わるから観ていてすごく発見が多いんだ。
ー あぁ、なるほどね。
だから自分に内在している子どもの時に観た記憶が、大人になって視点は全く違うけど、体も変わったけど、まるで他人のようなんだけど、他人の記憶を自分が覚えていて二人で観ているような感じ。
ー 面白い!
そう、面白いんだ。
ー 7月の【Nagasawa Tomoyuki Acoustic Live 2016】で初めて“アーティスト”を聴いた時、「人生は芸術」「人はみなアーティスト」という歌詞にすごく胸躍った記憶があって。
嬉しいな。最初は弾き語りだったからそのイメージが強かったんだけど、この曲はバンドで表現すべきだなと思って、今回はバンドサウンドにしてみた。
ー この曲でコーラスしているのは一色(徳保)さん?
そう、一色君。彼にコーラスをお願いしたくて。というのも一色君の生き方が僕にはアーティスティックに見えるから、彼が歌うべきだと思って。だから本当はこの曲を彼に提供したいなって思っていたんだけど、今回自分の作品に収録することになったから、それならせめてコーラスをしてもらおうって。この曲は一色君が歌うことに意味があると思っていたから。スタジオで嬉しそうに歌ってくれて僕も嬉しかった。
01. 時雨
02. 舌
03. アーティスト
04. 君だけだ Acoustic Ver.
05. ボトラー
06. 風鈴の音色
07. 無題
Nagasawa Tomoyuki Live 'Gifted' 2017」
1月21日(土)東京キネマ倶楽部
16:00/17:00
問合せ:SOGO 03-3405-9999
1月24日(火)umeda AKASO
18:00/19:00
問合せ:GREENS 06-6882-1224
1月31日(火)福岡・照和
18:30/19:00
問合せ:キョードー西日本 092-714-0159
2月1日(水)福岡・照和
18:30/19:00
問合せ:キョードー西日本 092-714-0159