【レビュー】back number『ブルーアンバー』

北川景子主演のカンテレ・フジテレビ系月10ドラマ『あなたを奪ったその日から』主題歌として書き下ろされた、back numberの「ブルーアンバー」。back numberにしては珍しいアコギで始まるイントロから、清水依与吏のブレスを通してAメロへ。今回も、ちいさい皮ラディック（タンバリン）は活躍しているようだ。栗原 寿の核心を突くようなバスドラはゆっくりと、しかし力強い。小島和也の感情を抑えるようなベースも、清水の歌声やストリングスのエモーショナルさ、つまり主人公の感情をかえって際立たせている。ブルーアンバー（青い琥珀）の石言葉を借りるとすれば＜静かに燃える感情＞そのものだ。清水はドラマの企画書から目を通し、ある程度全貌を把握した状態で曲作りをするも、歌詞が台詞に引きづられないよう意識したという。更に推敲を重ねられた言葉たちは、ドラマの背景や息を呑む北川景子氏の演技に重なり合う。

今作でサウンドプロデューサーに招いた蔦谷好位置は清水に対し、“完璧を超えられる作業をずっと当たり前のようにやり続けているのが清水依与吏”という旨の言葉をSNSで残している。ラジオで「蔦谷さんには認めてもらいたい」と発言した清水はその言葉をどう受け取ったのだろう。

筆者はドラマの最後、この曲が流れた時に曲自体がストーリーと同じ色で溶け込む感覚を覚えた。back numberだとか、タイアップだとかではなく、完全にストーリーの一部になってる感覚。これには感服させられた。だがドラマ主題歌としてだけではなく、キャリアや年齢を重ねてきたからこそ、今のback numberが表現しうる最高作品のひとつであることも間違いないだろう。