【レビュー】秦 基博『Trick me (GeG Remix)』
June 29, 2022 20:30
秦 基博
今年4月にリリースされたUNITED ARROWS green label relaxingコーディネーション・ソング「Trick me」を、変態紳士クラブのメンバーにして数多くのアーティストのプロデュースも手掛けるGeGがリミックスし、配信リリースされた。今までも「Girl(Tomita Lab. Remix)」や「鱗(うろこ)‐岡崎体育Remix」など、Remix曲は数曲あったが決して多くはない。だがそれらは確実に普段の秦 基博サウンドのフックになっている気がする。
今作ではBPMを僅かに高くし、イントロレスにアレンジ。空間を感じるボーカルエフェクトやナチュラルなビルドアップでオリジナルの世界観、もっと言えば“秦 基博”の世界観を崩さないRemixとなった。2019年にリリースされたGeGオールプロデュースの『Mellow Mellow~GeG's PLAYLIST~』は筆者も好んでよく聴いている。このアルバムにも収録されているが、GeGをイメージしたとき変態紳士クラブは勿論のこと、唾奇、BASI(韻シスト)、Young Coco、PERSIAなど、レゲエやヒップホップ(Lo-Fi含む)などが真っ先に頭をよぎる。
だがGeGは、秦の「僕らをつなぐもの」や「朝が来る前に」などを昔からよく聴いていたらしく、秦ファンからしてもこのあたりの曲が好きな人のサウンドプロダクションであれば、秦の魅力を十二分に引き出すRemixになったことに疑念を持たないのではないだろうか。少なくとも筆者はそう感じた。サンプリングを殆ど使わず楽器の音を大切に考えるGeGは既成の枠にとらわれない音作りをする。かといって奇をてらうこともなく、実にさり気なく、しかしRemixらしい高揚感で「Trick me」に新たな魅力を加えてくれた。