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【レビュー】Kenta Dedachi『Jasmine』

May 28, 2022 19:00

Kenta Dedachi

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LAの現役大学生シンガーソングライターKenta Dedachiの2ndメジャーシングル「Jasmine」は、リリース日の5月27日(金)より公開の映画『20歳のソウル』の主題歌。

この曲を語る上で映画について少し触れておこう。皆さんは「市船soul」という曲を知っているだろうか?市立船橋高校吹奏楽部に所属していた浅野大義さんが、野球部のために作曲したオリジナル応援曲のタイトルだ。この曲が試合で演奏されるとたちまち得点を呼び〝神応援曲″と言われるようになった。その後浅野さんは音楽大学に進学するも、癌に侵され二十歳という若さで生涯を終えた。この映画はそんな浅野さんと部員や顧問、母親や恋人との繋がり、闘病生活を描いた実話に基づく作品だ。
話を楽曲に戻すと、「Jasmine」は主人公のモデルとなった故・浅野大義さん自作のインストゥルメンタル「Jasmine〜神からの贈り物〜」のメロディーをもとに、Kenta Dedachiが映画の劇伴を手掛けるKOSEN(Colorful Mannings)と共に書き上げた楽曲。全編英語詞となる本作はKOSENがアレンジを担当、Mike Marrington(Drs)と須長和広(Ba)による骨太なリズム隊、大林武司の静謐なピアノ、そして室屋光一郎(Vn)率いる壮大なストリングスが加わり、胸に迫るサウンドに仕上がっている。エンジニアは空間オーディオミックスの第一人者、古賀健一が録りからミックスまでを行っている。
Kenta Dedachiの楽曲と言えば、R&B/SOULのグルーヴや、ワーシップソングからの影響、オーガニック・ミュージックの心地良さなど、ずば抜けたソングライティングセンスが魅力だが、今作は映画主題歌ということや他者作曲をベースに作り上げたメロディーなど楽曲の持つ意味合いの違いもあり、彼の新たな一面を感じることが出来た。音の広がりと共に透明感溢れる歌声は更に強調され(ここは古賀氏の技術が大だと思うが)、祈りや尊さに似た清らかさを感じる。『20歳のソウル』という映画タイトルにこじつけたわけではないが、もしかするとKenta Dedachiが20歳になる自身のこれからをテーマにした楽曲「20」(アルバム『Rocket Science』収録/2019)とベーシックな捉え方は似ているかもしれない。また、デビュー時からKenta Dedachiのサウンドプロデュースを手掛けてきたKOSENとのタッグということで、サウンドイメージの意思疎通はダイレクトに作品へと注がれているだろう。是非映画と共に、音楽に人生を捧げた浅野大義さんを想いを繋いだ「Jasmine」を感じてもらいたい。

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