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高橋優、アルバム『HAPPY』インタビュー!「『ライフワーク』というタイトルにしても良いぐらい、この2年3ヶ月の集大成になったんじゃないかな」

高橋優、アルバム『HAPPY』インタビュー!「『ライフワーク』というタイトルにしても良いぐらい、この2年3ヶ月の集大成になったんじゃないかな」

January 24, 2025 12:00

高橋優

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ー かまくらは昔から憧れていましたが、ますます気になりました!そして同じ秋田でも、「はなうた-pray for Akita-」は2023年の秋⽥豪⾬災害被災地に向けて作られた曲。「ONE STROKE SHOW〜一顰一笑〜」でも歌われていましたが、曲が出来て間もなくインスタライブで披露されましたよね。

作って3、4日目で歌いました。この曲はツアーで全公演セットリストに入れさせてもらいました。石川県でも歌ったし、熊本でも歌ったし。色々なことがありましたよね……。まぁ色々なことがない県なんてないんですが。東日本大震災の時も秋田県だけはあまり被害がなかったように報じられたけど、そんなことはなかったんですよ。その時は僕、秋田にいたので目の前で地割れも見たし、土砂災害があったのも知っています。僕自身、震度6を初めて経験したので恐ろしかったけど、そういった意味ではそれまで秋田は災害があまりない地域だったはずなんです。僕の人生経験なのでたかだか40年近くですが。それが今回の豪雨で、水没した家を壊さなければいけなかったり、片付けが10人、20人の人数では足りないぐらいの被害が出てしまっていたり。でも悔しいですが、同じことが東京で起こらないと、多分全国ニュースにはならないんだろうなと思いました。


ー 本来それではいけないんですけどね。

ええ。でもだからこそ改めて感じました。昨日まであったものが今日ここにあるとは限らないって。そうなった人をたくさん目の当たりにしたので……。


ー だからこそ「はなうた-pray for Akita-」の、“雨には負けた 風にも負けた 嵐が来たなら ぼくらは無力だ”という歌詞が、センチメンタルではなく現実を知ってるからこその言葉で胸がキリキリしました。

災害に遭われた方って、笑いながら普通に「大丈夫だぁ〜」とか言うんですよ。おじいちゃんとかが「息子も結婚して秋田にいないし、おら一人暮らしだ。あれ、あなた優さんでないのぉ?」って腰に手を当てて笑いながら少しお話して。本当に絶望を経験してる人って泣いたりしないのかもれません。だって70年以上住んだ家を目の前で壊されるんですよ。バールとかでガンガン壊されて、子どもか孫かの身長が刻まれている柱も容赦なく壊されて、それを立ち会って見ているわけですよ。「おじいちゃん、これ持っていっていい?大丈夫?」って言われて「あぁいいよ、いいよ持ってて」って淡々と見守りながら。


ー つらすぎて涙が……

逆もありましたけどね。「全部自分でやるから手伝いなんていらない!出てけ!」って。奥さんが手伝いを呼んだそうなんですが、旦那さんがそういうのを嫌がって目の前で奥さんが怒鳴られたりして。そうやって家族間でも意見が分かれるし、それぞれの物語があるんです。どうすることが人のためになるのかよりも、自分に何が出来るのか常に工夫の余地ありというか。<この時はこうやっておけばいい>みたいな答えを出さない方が良いことっていっぱいあるんだなと考えさせらました。人によっても家によっても違うし、災害の受け取り方も違う。そうやって考えながら答えが出ていない中でこの曲を書きました。ただ、自分が出来ることは心配することではなく、会いに行くことです。……これ、ブログで言うと結構反感も来るんですが、心配しなければいけない状態って、何もしてない状態だと思うし、極端に言えばあなたは失敗する可能性がある=信用出来ないと言っているようなものだと僕は思っているんです。勿論例外は沢山ありますが、心配している時間があるのなら何かしてあげれば良いというのが持論なんです。<被災者を心配しよう>みたいな風潮もありますが、それより各々出来ることをやろうよってなる。心配って心を配ると書くじゃないですか。


ー ええ。

だから心を配れば良いと思うんですよ。心を形に変えて配れば良い。それがたとえみかん1つでも良いじゃないですか。何もしないでただ心配だって言っているより。だから秋田の豪雨災害の時は秋田に、東日本大震災の時は福島に行きました。心配している時間より、会いに行った時間の方が長いんじゃないかなと思うぐらい、いっぱい行かせてもらいました。だからライブのMCでも「大丈夫だった?心配してたよ」とは口が裂けても言いたくないんです。お互い色々あったよねくらいのテンションが良い。だから「はなうた-pray for Akita-」でも“会いに行くよ”という言葉を入れています。


ー 秋田絡みでもかなり志向の違うのが「WINDING MIND」。歌詞が、がっつり秋田弁!単刀直入に伺いますが、どうしてこういう曲を?

この曲はこのアルバムの中では核心の曲なんです。幸せとは何なのか。僕は矛盾を楽しむことだと思っているんです。矛盾を恐れるのではなく、思った通りにならない部分を楽しめるようになれば、人生バラ色だと思っていて。先程スタッフとジムでのトレーニングについての話をしていたんですが、トレーニングって最初は思うようにいかないし、想像していたのと違う点も沢山見つかるんですよ。でもトレーニングを重ねるうちに思い通りになっていくこともあれば、更に自分の期待と違うものが見つかったりする。でも思っていたのと違うからという理由でガッカリしていたら、ジムに落ち込みに行くことになるじゃないですか。


ー そうですね。わざわざお金払って落ち込みに行く(笑)。

そうそう(笑)。あと人に求めすぎている人っているじゃないですか。


ー いますね。

自分の思い通りにならなかったら「全然期待と違った答えが帰ってきた」とか「そこまで気が回らない人なんだ」って陰でコソコソ言ったり。でもよっぽどじゃない限り、自分の思い通りに人を動かすのは無理だと思っているんですよ、僕は。そういう思い通りではない人や状況に出くわした時の矛盾を楽しめたら、めっちゃ面白い人生だと思うんです。昨日まで「私、パクチー嫌いなの」って言ってたのに、次の日めちゃくちゃパクチーを頬張ってたらびっくりするでしょ(笑)。


ー 矛盾の極みだね(笑)

ね!でもその矛盾をどう捉えるかだと思うんです。人から自分の期待と違った答えがかえってきた時、相手ではなく自分をどうコントロール出来るか。とまぁ、言うのは簡単ですが、僕だって人に期待しちゃう部分もあるし、言われて嫌なことは嫌だしそれで落ち込むこともあります。でももしそんな矛盾を恐れず生きていけたら最高だし、気持ちがねじ曲がっていたとしても、昨日と今日で言っていることが違ったとしても、夢が変わったとしても、みんなで受け取れたら本当の意味での世界平和になるんじゃいかと思って「WINDING MIND」を書いたんです。でもおそらく今この説明したことを喋っても響いてる人は一人もいないんですよ。また高橋、面倒くさいこと言い始めたと思われる(笑)。だからもっと何言ってるか訳わからなくしてやろうと思って。僕が大好きな秋田の人たちに僕のメッセージを受け取ってもらい、あと46都道府県の人たちには、高橋やっぱり訳わからない難しい人間だと思われても良いんです。ただサビの“どん(どん!)どん(どん!)どんどど”をみんなで一緒に歌う!意味は全然分からないけど、一緒に歌ってコール&レスポンスする。それが最高ですね。


ー 確かに歌詞は分からないところが多くて、どんど…どしゃっ…つ…いぐ……

“どんどどしゃっついぐ胸張っていげ!”ね(笑)。<どんどど>と<しゃっついぐ>って結構意味が似ていて、<どんどど>は勢いよく。<しゃっついぐ>は威勢よく。例えば、すごく勢いよく走っていったというのを、どんどどあの人走ってったっけって言うんですよ。で、しゃっついぐ行けよであれば、元気出していけよという意味。


ー あぁ、なるほど!

その部分は力強く、かなりのロングレンジで歌っていますからね。“♪どんどどしゃっついぐ胸張っていげーーーーーー!”って。


ー そうそう、力強い!では「ふまげられ」は踏まれる?

蹴られる。いじめられてる子供は「母さん今日ふまげられた〜」って泣いて帰って「ちゃんとふまげ返していいのんだ!」って言われる(笑)。うちの母さんがそういう人でしたね。やられたらやり返す方式(笑)。僕は右頬を殴られたら左頬を差し出す人間でいたいと思ってます。

<一同拍手>

いや、拍手されることでもないけど(笑)。僕のファンクラブ内のブログでは秋田弁講座をちょいちょいやってるんですよ。