POPSCENE - ポップシーン
POPSCENE - ポップシーン
高橋優、アルバム『HAPPY』インタビュー!「『ライフワーク』というタイトルにしても良いぐらい、この2年3ヶ月の集大成になったんじゃないかな」

高橋優、アルバム『HAPPY』インタビュー!「『ライフワーク』というタイトルにしても良いぐらい、この2年3ヶ月の集大成になったんじゃないかな」

January 24, 2025 12:00

高橋優

0
シェア LINE

2010年7月21日に『素晴らしき日常』でメジャーデビューし、今年デビュー15周年を迎える、高橋優。「spotlight」がNHK夜ドラ『褒めるひと褒められるひと』の主題歌に、「キセキ」がTBS『news23』エンディングテーマに、「オープンワールド」が秋⽥朝⽇放送『サタナビっ︕』テーマソング)に、「リアルタイムシンガーソングライター」があきたこまち40周年記念CMソングに起用されるなど、タイアップも多い。そんな高橋優が、2年3ヶ月ぶりにアルバム『HAPPY』を1月22日にリリース。今作はタイアップ曲の他に、怒りや皮肉、愛、笑顔を高橋らしい面とまったく新しい面で表現している。本文に繋がる「かくれんぼ」についてはレビューで触れるとして、今回はアルバム曲への想いや、秋田への想い、15年間のキャリアについてなど、ときどき脱線しつつ語ってもらった。


ー ベタな質問ですが、2024年は優さんにとってどんな年でしたか?

昨年は僕、本厄でした。


ー あぁ、そうでしたか!

そのせいか本厄らしいこともありました。声帯炎にもなったし「秋⽥CARAVAN MUSIC FES」(以下:CARAVAN FES)は2日間とも土砂降りに見舞われたし。まぁ天気ばかりは厄と関係ないかもしれないけれど、そういう試練的なことは結構ありましたね。でも僕自身のマインドは全然下がっていなかったですよ。初の47都道府県弾き語りツアー 2023-2024「ONE STROKE SHOW〜一顰一笑〜」を無事にやり遂げたし、雨の中でもCARAVAN FESを2日間中止することなく開催出来たし。勿論CARAVAN FESに関しては安全面を考慮しましたが。それにアルバム『HAPPY』のリリースを発表することが出来たのも2024年の大きなトピックだと思っています。


ー そのアルバム『HAPPY』ですが、“これぞ高橋優!”という部分と、“こんな高橋優は初めて!”という部分が混在していて聴き応えありました。随所に秋田愛も感じられましたし。

今回のアルバムは前作から2年3ヶ月ぶりだったので、ありがたいことにアルバム制作前から沢山のタイアップをいただいていて、その曲たちも収録出来ました。そこからアルバムタイトルを発表して、その後に5曲作ったんです。タイアップもほとんど人との繋がりから生まれたものだったので『ライフワーク』というタイトルにしても良いぐらい、この2年3ヶ月の集大成になったんじゃないかなと思っています。


ー そのタイアップのひとつ「オープンワールド」は、秋⽥朝⽇放送『サタナビっ!』のテーマソング。この曲はアコギの音が印象的ですが、全体を通してポップさもありながらラップがあったりストリングスが入ったり、エレキでロックっぽさがあったり。そういう色々な要素が入っているのは情報番組そのものだと勝手に感じました。

あぁ、なるほど!ゲームでオープンワールドってあるじゃないですか。


ー (小声で)ごめんなさい、私分からなくて……

RPGは分かります?ドラゴンクエストとか。


ー 分かります、分かります!

ああいうゲームって大体決められている世界があるというか、行けるとこが限られているんですが、どこでも行き放題見放題みたいなゲームデザインというかジャンルを、“オープンワールド”と言うんです。で、ゲームの世界ではオープンワールドという素晴らしいものが出来ているけれど、そもそも我々の日常もオープンワールドじゃなかったっけ?みたいな発想から曲を書き始めました。我々だって例えばこのビルの18階とかに降りても良いし地下のレストランに入っても良いわけじゃないですか。もっと言えば今日(取材日)は15時からこの場所でインタビューだけど、全然違うところにいたって良いんですよ。勿論、周りはざわつきますけどね。「秋山さんどこ行った?!」って(笑)。


ー それは大問題だね(笑)。

まぁね(笑)。でもそもそも自由自在のはずなのに、壁や窓……いわば人の常識というもので塗りたくられた場所にいるから、オープンワールドの概念は失わなければいけない。時間通りに扉を開け、おかしいことにならないようマニュアルに沿って生活をし、がんじがらめになってストレス溜まる。秋田ってそういう常識やルール、世間体みたいなものをすごく気にする人が多い気がしたんです。自分の日常は決まっていて、ここから新しいことはもう起こらないとすごく一生懸命に信じているというか、これから良いことが起こることを放棄しているというか。


ー 保守的なのかな?

そう。勿論全員じゃないですよ!ただ僕自身もその血が脈々と流れているからそう感じるんですが。本来僕は何もしないで部屋で寝ている時が1番幸せとか言っちゃいがちな人間なので(笑)、そういう自分を揺さぶって叩き起こしてどこかへ行かないと、新しいことって始まらないじゃないですか。


ー そうですね。

『サタナビっ!』で、例えば美味しいお店やオシャレなカフェが紹介された時、観た方たちは“これ俺の家の近くだ!”とか、“ここってこの前行ったところ!”って色々感じると思うんです。美味しいコーヒー1杯飲みに行くだけでも良いし、夢を追いかけるでも良い。そこに遅いとか無駄なことなんてないから、番組を観るだけでなく、ゲームのオープンワールドだけをやるのでもなく、自分自身オープンワールドの世界に飛び込んで行動に移してみたら良いなという想いで曲を書きました。


ー そのせいか、聴いていてとてもワクワクしました。

ありがとうございます!


ー 「BRAVE TRAIN」は、秋⽥県冬の⼤型観光キャンペーン「誰と⾏く?冬の秋⽥」のテーマソングですが、ドラムのリズムはなまはげ太鼓を感じさせましたが、驚くほど歌詞に“秋田”というワードが入っていないことに驚きました。この曲は書き下ろしなんですか?

実は書き下ろしなんです。このキャンペーンは、秋田県に遊びに来て欲しい、秋田県の魅力をみんなに知ってもらいたいというコンセプトなので、例えばハタハタやキリタンポなど秋田県特産のものを全部並べようかなとも思ったんですが「泣ぐ子はいねが」でそういうアプローチはしているので、キャンペーンを企画する側の気持ちというか、待ち受ける秋田県民側の気持ちを曲にしようと考えました。来るぞ、全国から秋田に色々な人が!美味しいものがあるかもしれないと思って来た時に、シャッター通りとか言われてる場合じゃないぞって。だからここから攻めていこうぜというキャンペーンになったら格好良いなと思ったんです。


ー その発想は面白いですね!

それとキャンペーンが、JR東日本秋田支社と連携しているので歌詞にも“汽笛”や“車窓”など出して、電車になぞらえてみました。サウンドで言うとAメロとかBメロとか、そういう概念をあまり気にせず書いたんです。なんだったら同じトラック内で急に別の曲が入ってきても良いくらい。


ー 何故そういう作り方を?

うーん……楽しいから。自分自身もワクワクしたいんですよね。


ー それってもしかすると1番大切かもしれませんね。それとこの曲だけではなく結構サウンド的に激しめのものも多くて格好良かったです。

ああ良かった、そう思ってもらえて!アルバム制作前にタイアップをいただいていた「spotlight」も「雪⽉⾵花」も「キセキ」も「現下の喝采」も王道的というか。もしまた、黒橋優と白橋優(高橋優 10th Anniversary Special 2Days「弾き語り武道館~黒橋優と白橋優」)で2Days武道館をやるとしたら、白橋の曲が揃った感じだったんです。その分アルバム全体を考えた時に、しっかり今の自分の表現を詰め込みたかったんです。この2年3ヶ月間、純白の高橋優だったわけではない。正直今だって色々なことに怒りを感じ、疑問を感じ、自分自身すごく転がっている自覚を持っているんですが、僕も41歳ですし、そろそろゆっくりぬるま湯に浸かってあとは上から目線で、「いやぁ〜、俺も20代の頃は大変だったよ」とか言ってるおっさんになれば良いかもしれませんが、全然その自覚がないんですよね。