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藤巻亮太、配信シングル「Heroes」インタビュー

藤巻亮太、配信シングル「Heroes」インタビュー

January 13, 2020 12:00

藤巻亮太

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ー そうだったんですか。でも改めて今、大人の目線でウルトラマンを考えた時、確かに大人が真剣に考えて作ったのが分かる気がします。

子どもの頃に観るものって、もしかしたら大人になるまで正義や悪への観念を決定づけちゃうかもしれないじゃないですか。


ー それは十分にありますね。

円谷プロダクションさんはそういう責任感を持って作品を作られている。だから音楽もそうでなければならないと思ったんです。子どもが観るものなので、すごく分かりやすくしなくてはいけない。それと同時にものすごく真剣に考えたものじゃなければいけない気がしていて。歌詞の意味は後でわかってくれれば良いんです。ただ、そこまで深掘りしたものを子どもたちに聴いて欲しいと思って。その分、曲としては分かりやすいメロディにしたり、一回聴いて格好良いと思ってもらえる疾走感は意識しました。だから作品としても歌詞とメロディの調和を考えてつくりました。


ー 実際にサウンドは疾走感に溢れていますし、サビはずっと耳に残っていて、実は今も脳内でリピートしています(笑)。

嬉しいなぁ…。そこを言ってもらえただけで本当に嬉しい!

ー イントロのギターリフから疾走感にワクワクさせられて、ドラムのボトムで力強さも感じられて、まさにヒーロー像が音で表現されていると思いました。

色々なアーティストがいる中で主題歌に僕を選んでくれたということで、やっぱりまずはギターロックサウンドを追求しようと思ったんです。歌詞だけ見るともっと厳かな世界になっちゃいそうだけど、それだと<調和>という意味では、もしかしたらバランスが悪いのかなと思って。歌詞では自分なりに想いを書ききれたので、サウンド面では疾走感が気持ち良いとか、とにかく格好良いとか、そういう感覚的な部分を大切にしました。それはに、ゆっくりしたテンポで語るよりも、勢いがあって本当に応援したくなって、オープニングでこの曲を聴いた後に、“ワクワクする物語がこれから始まるんだ”と思えるような、そういう世界をイメージしました。


ー ギターの音は結構重なっていますが、まさにバンドとしてライヴで表現出来るようなサウンドですし、1番と2番でドラムのリズムが違っているところも好きなんです。

ああいうのってライヴっぽいですよね!


ー ライヴっぽいです!それとラスサビに向かう演奏が……

あそこ、ヤバくないですか?!(笑)


ー ヤバいです!あの部分、何度聴いても気持ちがざわつきますもん(笑)。

そうですよね!嬉しいです!


ー それと、「ゼロになる覚悟はあるか」という歌詞も好きです。ゼロは「0」ですが、ウルトラマンZEROでもあるし。あとウルトラマンGEEDのキャッチコピーは「運命―覚悟を決めろ」なので、この2キャラクターを感じられました。

そこは意識しました。ZEROとGEEDというヒーローが持っている<名前>が背負っているものを歌詞の中に入れて、物語と歌の世界が寄り添っていけるような言葉選びを考えました。


ー 大人になるとゼロから新しいことに挑戦するのは勇気がいることだと思うんです。全くのゼロではありませんが、藤巻さん自身、独立してから色々新たな挑戦へ取り組んでいる気がするのですが。

本当におっしゃる通りなんです。最近、よく海老の話をしてるんですけど…。


ー え、海老ですか?(笑)

そう、あの海老(笑)。おめでたい席で海老が出る理由のひとつには、腰が曲がるまで添い遂げるとか元気でいるという意味がありますが、海老って成長すると一年に一度脱皮するんですって。


ー 知らなかった!

僕も知らなかったんです。でも一番立派になった時に脱皮、つまり殻を脱ぐ。だから成長のシンボルとしても海老ってめでたいんですって。


ー 立派になった時に殻を脱ぐって、海老って何か格好良いですね。

本当、格好良いんですよね。自分が何かしらで「ここは一番やったぞ!」と思った時から人間の停滞や堕落、守りが始まり、成長が止まると思うんです。だから積み上げて来たものを、感謝も含めて脱いで、またゼロから学び直すことが人間にとって一番の成長であり若くいられることなんじゃないかなと考えています。成功体験って、気持ち的な部分で非常に大切なものだけど、途中から停滞の原因にもなると思うから、“そういうものほど脱いで新しい気持ちで新たなものを学んでいけよ”って、自分に問うことも必要だと思うんです。


ー それはまさに藤巻さんが自分に問うたことなんですね。

そうなんです。ソロを始めた時も、“レミオロメン時代の成功体験はもう通用しないよ。そのかわり頑張ろう!”と思ったし、独立した時も、40歳手前で勿論一人では何も出来ないけど、その中でも自分で出来ることをもう一回しっかり見ていこうと思ったんです。そうなると出会いも自然と変わってきて。ウルトラマンとこうやって出会えたこともそうですね。殻を脱いだからこそ出会える世界が必ずあるので、むしろその新しい出会いを大切にしていく。そんな生き方をしたいです。 新しく挑戦させてもらうことが増えることで、“自分の中からこういう曲が出てくるんだ”と、感じられることもあります。


ー 例えば『RYOTA FUJIMAKI Acoustic Recordings 2000-2010』でレミオロメン時代の楽曲をセルフカヴァーしたことも挑戦のひとつでしたか?

そうですね。30代はそういう時間が多かったんです。自分の人生って結局、地続きじゃないですか。


ー ええ。

生まれた時から小学校、中学校、高校、大学、バンド、ソロ…ってそれぞれ区切ってはいるけれど、全部繋がっているんですよね。だからどこからどこまでの自分が大切だとか、どこからどこまでの自分だけで生きていこうとか、無理だと思ったんです。全部繋がっているということは、自分の人生に対しての肯定なんですよね、否定ではなく。だからどこかで区切るようなことはせずに全て受け入れてやっていこうと思った時、ものすごく前に進めたんです。特にソロが始まった頃って、制作したものがまだ何にもないのにソロにならなきゃいけないと思って、どこかで過去を否定していたんです。それって結構辛くて…。でも全部繋がっていて、その全部が自分なんだと思えた時に、自分の中に流れているものを肯定出来て前に進めた。否定することより肯定することを学べた30代は大きかったです。