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松室政哉、2ndシングル『僕は僕で僕じゃない』インタビュー

松室政哉、2ndシングル『僕は僕で僕じゃない』インタビュー

June 25, 2019 18:30

松室政哉

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ー これは個人的なイメージだけど、松室くんは自信に溢れていて、人付き合いが上手で物事をそつなくこなす…つまり器用なイメージがあるんですよね。勿論細かなことで凹んでいるところも見てきたし、色々落ち込むこともあるだろうけど。

当然自分に自信がないとプロとしては駄目だと思うんです。それは多分他のアーティストの方もみんなそうだと思うけど。でもそつなくっていうのはどうなんだろう(笑)。そうなのかな?ただメジャーデビューして関わってくれる人も圧倒的に増えるから、今まで自分が知らなかった作業や考え方を目の当たりにして、それまで経験出来なかった発見は沢山あります。それに対して悩むこともあるけど、基本的には僕自身そういうことを結構楽しめるんですよね(笑)。


ー それってそつないわけじゃなくて、適応能力が高いのかもしれない!

どうなんでしょうね。ただ、初めて会う人とか現場は楽しいし。


ー 人と話すの好きだしね。

ええ。でも家で一人の時は静かですよ……って大体そうか(笑)。


ー こわいよ、一人でずっと喋ってたら(笑)。

確かに(笑)。ああ…でも実家でも静かでしたよ。


ー え、そうなの?!じゃあ家族には無口だと思われてる?

思われてる(笑)。だから僕が出ているラジオとか聴いて「あんた、あんなに喋れんねんな。」って驚かれるし。


ー 逆に家族としては新しい発見だ。

そうそう(笑)。


ー ちょっと脱線しちゃったけど、新しい世界に足を踏み入れた時の理想と現実って、やっぱり受け入れるまで苦労しますよね。

僕自身、会社勤めの経験はないけど、 この曲の登場人物のイメージとしてひとつあるのが新社会人。新社会人として就職し、その中で求められることと自分がやりたいことの違いって、あって当たり前なんだけど「あの日の僕はもういない」「僕は僕で僕じゃない」と思うことで自分の心のバランスを取っているんです。そういうしんどさって絶対に誰しもが経験しているじゃないですか。


ー ええ。

ただ考え方として僕は、本当に嫌だったら辞めれば良いと思うんです。あくまでも考え方としてね。でもこの曲で言っているのは、そこに自分が見つけたいものがあるからこそ心のバランスを取ろうとしている。それって何も仕事のことだけじゃないと思うんです。例えば彼氏彼女が欲しい、幸せな家庭を築きたいなど個人的なシチュエーションでも自分自身に問いかけなきゃいけないし疑問を持たなきゃいけない。答えも出してあげなければいけないし…。そんな心の葛藤もこの曲のテーマではあります。


ー 松室くんが考える自分らしさとは?

なんでしょうね。多分80歳になっても答えられない気がします。この曲の中で「僕じゃなくなっていく」という歌詞は出てきますが、自分がどういう人間かって、結構周りから作られていくように思うんです。勿論やりたいことがあるのが前提ですが。自分が辿り着きたい場所や観たい景色に行くために色々な人が関わって下さり、その人たちに「松室ってこういう印象だよね」とか、「松室はこういう人間だよね」と言われて初めて自分自身が気づくことが結構あります。でも自分はどういう人間なのかってやっぱりまだ分からないかもしれません。


ー そこはある意味一生のテーマかもしれないですね。この曲は歌詞でポジティブさを出していないのに、もがいている主人公の葛藤によって逆にポジティブに導かれるというか。

サウンドが担っている役割は大きいですね。クセはあるけど歌詞とは対比しているちょっとキラッとしたポップ感。そのサウンドと歌詞の両方が合わさった時に出てくるポジティブさはとても大切にした部分です。アレンジャーの河野圭さんとアレンジを重ねる中でも、そのポップス感は最後まで重要なポイントとして重きを置いていました。


ー 今回歌詞はいしわたり淳治さんと共作ですが、今まで誰かと一緒に歌詞を作ることってありましたっけ?

初めてです。


ー 具体的にはどういう作り方を?

まずテーマや、何を歌いたいかを僕がいしわたりさんに伝えて、そこからメールや実際に会って歌詞を出し合っていきました。


ー いしわたりさんとの共作はどうでした?

すごく勉強になりましたよ。当たり前だけど一人で作っている時より視野が広がって、“そんな視点があるんだ”とか、“そんな表現があるんだ”と感じることが多かったし、いしわたりさんは的確に伝えてくれるし「それならこういうのはどう?」って色々アイデアも出してもらって、そういうキャッチボールが楽しかったです。


ー この曲は【Matsumuro Seiya Tour 2019 “City Lights”】(以下: City Lightツアー)のツアーファイナルのアンコールで初披露。結構泣きながら聴いている人が多かったと。

そうなんですよ。しかも男女問わず。例えば「きっと愛は不公平」みたいな失恋ソングって、この曲よりある意味メッセージが分かり易いと思うんです。映像も浮かび易いし。でも僕自身が表現したい葛藤の部分やその先の希望をあの場で初めてみんなに聴いてもらって、しかも泣いてくれている人がいるって…。改めてこの曲の持っている方向性を、発売前にお客さんに教えてもらった気がしました。だからあのタイミングでこの曲を披露出来たことは本当に良かったです。


ー この曲だけでなく、ライヴで発見できることって結構あるもの?

あります、あります。良い裏切りというか、良い予想外はやっぱり印象に残りますね。「シティ・ライツ」発売からCity Lightツアーまでって大体3、4ヶ月あったじゃないですか。


ー ええ。

その間、僕が思っていた以上にお客さんが『シティ・ライツ』をめちゃめちゃ聴いてくれているなと全曲で思ったんです。聴いて頂いていること自体すごく嬉しいのに、もっと深い域で『シティ・ライツ』の世界観を受け取ってくれていることを、City Lightツアーで生でお客さんの反応を観た時にすごく感じましたね。


ー 確かにインディーズ時代含め、City Lightツアーはお客さんの反応や雰囲気がまた違っていた気がしました。

そうですよね。