さかいゆう、ニューアルバム『Yu Are Something』インタビュー
January 23, 2019 11:30
さかいゆう
昨年、「確信MAYBE feat.おかもとえみ(フレンズ)」、「Brooklyn Sky feat. 黒田卓也」、「You’re Something」を3ヶ月連続で配信したさかいゆう。デビュー10周年目に突入し、オリジナルアルバムとしては約3年ぶりとなる『Yu Are Something』を1月23日にリリース。このニューアルバムを初めて聴いた時、さかい自身が本気で好きな音を詰め込んできたと、思わず笑みがこぼれた。洋楽でもJ-POP王道でもない、さかいの“ROOTS MUSIC”をテーマに制作された本作は、音楽好きであればきっとシビれるに違いない。レコーディングはさかいの音楽原点であるNew YorkやLos Angelesで実施し、Ray Parker Jr.、James Gadson、John Scofieldをはじめ、海外の大物ミュージシャンが参加。更におかもとえみ(フレンズ)、黒田卓也、Zeebra、サイプレス上野、Michael Kanekoといった多彩な日本人ミュージシャンともコラボ。今回、作品に携わったミュージシャンについてや楽曲を通じてさかいが考えていることなどを伺ってみた。
ー 3ヶ月連続配信はありましたが、オリジナルアルバムとしては約3年ぶり。待ち焦がれていましたよ!
ありがとうございます。曲作りはずっとしていたけど、今までは多少なりとも締め切りに追われながら…というか、締め切りに助けられながら作っていました。ただ今回は時間があったので、デモテープも沢山作れたんです。作り終わった後、疲れて寝込みましたからね(笑)。
ー え!?そういうイメージって今までなかったんだけど。
あまりないですね。でも今回は出し切ったという感じで。
ー アルバムを聴けば、それも納得出来る気がします。一聴して「ああ、さかいゆうがやってくれた!」って感動しましたから。とにかく格好良くて個人的にはゆうくんのアルバムで一番好きかも。
まじっすか!嬉しい。ありがとうございます!今までで一番好きと言ってくれる媒体さんも多いです。
ー 今回は、Ray Parker Jr.、John Scofield、James Gadson含め、ゲストミュージシャンも豪華ですよね。
色々な偶然の奇跡が重なりました。というのも、最初からゲストミュージシャンを決め打ちしていたわけではなく、アルバム制作をするにあたり、海外レコーディングが決まり、「それならこの人と一緒にレコーディングしたい」というアイデアがひとつひとつうまく形になっていったんです。
ー それはデビュー10周年という節目があったから?
いや、それは全然関係ないです。毎回アルバムではベストを尽くしていますが、今回は時間があったので自分の好きなことをやろうと思って。リード曲は「You're Something」ですが、本当にどれをリード曲にしても良いし、どれもシングル曲になりえる位、全てが「顔」になる曲だと思っています。
ー それはわかる気がします。M1の「Get it together」は個人的にメロディが理屈抜きで好き。というか、完全にツボでした。
あ、本当ですか?嬉しいな。参加してくれたJames Gadson(以下: Gadson)もRay Parker Jr.(以下:Ray Parker)もこのメロディを気に入ってくれて、レコーディング中「Very catchy’s!」って、ずっと口ずさんでいましたよ。だからこの曲を聴くと、その時の楽しさを思い出しますね。「ああ、あの時ご飯食べながらメロディを口ずさんでいたな。」って。
ー いいですね。先程、参加アーティストに関しては偶然の奇跡が重なったと言われていましたが、直接交渉だったとか。
そうです。スタッフに英文のメールを打ってもらい、僕からも一緒にプレイしたい旨を伝えて実現しました。昨年3月のBillboard Live TOKYOでのRay Parker来日公演の頃には一緒に演ることが決まりつつあったから直接会いに行きました。その時は挨拶だけでしたが。
ー なるほど。この曲は演奏の良さがシンプルかつダイレクトに伝わってきました。
それはかなり意識しましたね。だからあまり編集はせず、録ったままの音です。
ー 作詞とコーラスではMichael Kanekoさんが参加。Michael Kanekoさんとのお付き合いは長いんですか?
3、4年前からですね。この曲はロサンゼルスでレコーディングしたんですが、Michael Kanekoくんはカリフォルニア出身なのでバッチリかなと。元々飲み友達というか、家に遊びに来たりもしますよ。で、一緒に色々な音楽を聴いたりしています。
ー「煙のLADY」は土岐麻子さんが作詞とコーラスを担当。以前から、ゆうくんの声と土岐さんの声って音楽的調和が良い気がしているんですが。
ああ、確かにそれはあるかも。僕が土岐さんに楽曲提供したことはあるけど、僕の曲で彼女を招き入れるのは初めてです。彼女がコーラスした瞬間から<土岐麻子の世界>になるんですよね。でもそれはなかなかあることじゃなくて。土岐さんの周波数で空気が振動する感じが素晴らしいんですね。
ー Steve BaxterのトロンボーンとEddie Mのサックスもシビレました!
いいですよね!これはアルバム全体通して言えることですが、洋楽でも邦楽でもない、2019年度版のシティポップ。昔から僕の曲はトレンドではないと言われて来ましたが、今回はそれが特に現れた作品だと思っています。
ー ひとつひとつの音を聴くと、例えば80年代とかの時代感は汲み取れるんだけど、楽曲全体を通すと時代そのままではない。それがゆうくんの作る楽曲の面白さなんですよね。
それは仕方ないですよね、プロデューサーが僕なので(笑)。もし僕の上に別のプロデューサーがいたらコンセプトを決めて、そこに向かっていくんだろうけど、別に聴きやすいアルバムを作りたいわけじゃないですし。さかいゆうにしか出来ないさかいゆうの作品を作りたいだけだから、J-POPもあるし洋楽や歌謡曲もある。人を幸せにするために作られた作品という意味で言えば、僕の作品も「大衆音楽」ではあります。自分よがりの自分の為だけの作品を作っているわけではないのも事実だし、誰かに聴いてもらう為の音楽、そう考えたら「シティポップス」という言葉がぴったりかなと思って。それはサウンドという意味ではなくハートの部分で。街に住む人達を勇気づけるというか、その人達の人生を変えるまでには至らないけど、生活をカラフルにしてくれたり癒やしてくれたり。そういう意味でシティポップという言葉は最近嫌いじゃないんです。このアルバムも、街に住んで、仕事をしていたり学校に行っている人たちの傍らに置いてもらえれば嬉しい。だからフォークミュージックではないんですよ。
ー なるほど!
「自分のメッセージを聴いてくれ!」という音楽でもなければ、政治的なことを歌いたいわけでもない。目を閉じるとここがどこだか分からなくなるようなポップスが作れたら良いなって。しかも英詞だけど日本っぽい雰囲気もあるような。例えば「I’m A Sin Loving Man」も、さかいゆうがやるから日本っぽさがあるけど、白人も黒人もやらない雰囲気が出たと思っています。