高橋優 New Album「来し方行く末」ロング・インタビュー

ここ最近の高橋優は変わってきた。取材中でも何度か話に出た「社交的キャンペーン」のおかげだろうか、年齢的に感じ得るものが変わってきたせいだろうか？何かに挑戦し続ける姿勢は高橋本来の姿だと思うが、気負いが消えた気がする。11月16日リリースのアルバム『来し方行く末』では制作に苦労した話をしてくれた。昔ならきっとそういうことも隠していただろう。歌詞への思い、何かを感じた時の気持ちをとにかく素直な言葉として語ってくれた。


ー 少し前になりますが、【秋田CARAVAN MUSIC FES 2016】お疲れ様でした！

ありがとうございます。開催した甲斐はありましたけど…いやー、大変だった（笑）。ただ今年に入って一番感じていることかもしれません。「頑張った分だけ結果はきっと返ってくる」って。


ー おお！

ーフェスという形を取ることも悩んだし、色々な準備で大変だったけど蓋を開けてみると、悩んだことは無駄ではなかったと思えることが沢山。


ー 何が一番大変だった？

うーん…動員？（笑）


ー アハハ、まさに企画者のリアルな目線だね。

でもみんなが本当にすごく盛り上がってくれて最高でした。嬉しかったのが、ミュージシャン含め、秋田県外から来た人たちが「秋田にまた来たい」と言ってくれたことです。秋田って、住んでいると何にもなくて… 山しかないような気がしていたんだけど（笑）、空気が美味しいことや、秋田県外の人たちが見つけてもらう良さが沢山あって。その中でも「視野の中での空の面積が多い」と言ってもらったことは一番嬉しかったですね。


ー 空の面積か。

背の高い建物が全然ないから普通に歩いていても青の面積が大きいんですよ。それだけで良い空気を吸っている気がするし、良い景色を見させてもらっている気がするからいつまでもここに居たいと言ってくれた人がいて。食べ物も間違いなく美味いものばかりですし！


ー 水も美味しそう。

水、美味しいですよ。秋田は水道水でさえ美味しいですから。


ー あと前作『光の破片』のMUSIC VIDEOが「MTV VMAJ 2016　最優秀邦楽男性アーティストビデオ賞」受賞！おめでとうございます！

ありがとうございました！でも山口（保幸）監督が僕に対する第一印象は絶対に良くなかったと思う（笑）。


ー 何で？

あのビデオを作る時、時間の都合で一回目の打ち合せに山口保幸監督がいらっしゃれなかったんです。だから僕が「こういうMVにしたい」というイメージをただ一方的に話している動画を箭内（道彦）さんに撮ってもらい、それを山口監督に見てもらったんです。そこで僕は「万華鏡みたいな感じが良い」とか「この曲は爽やかなようであって実はそうでないんだ！」とか好き放題言ってるから（笑）。


ー なるほど（笑）。受賞されてから山口監督とお話は？

まだお話していないんです。山口監督は数々のMVを手がけられている方なので、箭内さん含め、良い出会いを皆さんから頂きました。


ー では改めてアルバムの話ですが、11月16日リリースのアルバム『来し方行く末』のアートワークの撮影場所は優くんが提案したと伺っています。

そうです。まず箭内さんと僕とスタッフ何名かでアルバムジャケットデザインの話をしている時に、箭内さんが「タイトルが今までとこれからという意味の『来し方行く末』だから、高橋優の今までとこれからみたいなものが画になっていると良いんじゃないか？」と言われて、まっすぐな道が続いている真ん中あたりに僕が立っている姿を撮るアイデアを出してくれたんです。それなら今までの道とこれからの道両方を表現出来るから良いんじゃないかって。


ー 良いですよね。

でも「そんな広大な土地は海外にしかない」って箭内さんが言い始めちゃったもんだから、「海外か…。」ってシブるスタッフも出始めて（笑）。


ー アハハ。

ただ海外でなくてもあると思って、ふと頭に浮かんだのが愛媛県と高知県の県境にあるカルスト地形。


ー 以前行ったことは？

ないです。多分地理の授業で出てきたんだと思うけど、何故か覚えていて。それで提案したらあっさり決まって（笑）。


ー 本当にまっすぐな道で。でも天気が…。

雨でもう大変でしたよ！撮影前日の夜に飛び立って、向こうに着いたのも11時頃だったかな。空港からカルスト地形のところまでも車で2時間くらいかかるんですが、撮影は夜明けから始めたかったので準備時間を考えると殆ど寝る時間もなくて。少し仮眠して起きたら土砂降り！土砂降りすぎて夜明けもなにも分からない状態（笑）。


ー キツいな（笑）。

最初に、車のヘッドライトをつけて道の上で撮ってみたんです。でもそれが「この画って、カルスト地形じゃなくても撮れるんじゃない？」という感じだったんですよ。これって、ただ道の上でヘッドライト照らして雨の中立ってるだけじゃん！って（笑）。

＜一同爆笑＞

その時はみんな不安だったと思うんだけど、小さな奇跡が起こって。


ー 小さな奇跡？

夜明けに少しだけ晴れたんです。


ー やったね！

空がこういう色（『来し方行く末』の期間生産限定盤ジャケット写真を指差しながら）になり始めた頃、それまで土砂降りだった雨が一旦やんで、しばらく撮影することが出来たんです。しかも撮影が終わった途端、また土砂降り。だから本当に少しの間だけこの幻想的な画を撮らせてもらえたんです。


ー アハハ。高橋マジックだね。さすが晴れ男！

そうそう。僕のウィキペディアにも「晴れ男」って書かれていますから！


ー ギリギリ「晴れ男」になったんだね（笑）。

そう、ギリギリ（笑）。でも霧が結構立ちこめていて。霧って水分を含んでいるからちょっとずつ体も湿っていくんです。ほら、よく見ると（アーティスト写真を指さしながら）僕の髪の毛、濡れてるでしょ？


ー 結構びしょびしょだよね（笑）。でも箭内さんのイメージの中ではどういう天気だったんだろう。晴れていても良かったのかな。

箭内さん的には雨が降った方が良いと思っていたみたい。「雨なら雨で絶対良い画が撮れる」って。僕はその言葉の意味が分からないですけどね。だって雨なら絶対駄目でしょう！！


ー アハハ！力が入ってるね。

でも結果的に雨も晴れも曇りもあって、色々な景色の中でこういう画が撮れたことは良かったです。


ー タイトルの『来し方行く末』ですが、アルバムを作る上で元々このタイトルがコンセプトになっていたんですか？普段あまり聞かない言葉だけど。

このタイトルになるまでも、すごく悩みましたがアルバム曲が出揃う前には決めていました。作品で言うと、“BEAUTIFUL”という曲はすでに出来ていたんです。今回自分のテーマは何だろう？と改めて考えた時に、 個人的にはこの曲がアルバムの軸になると楽しみにしていた部分はありました。でもまだアルバム曲が半分くらいしか出来ていない中でタイトルは決めなければいけなくなって。そこで今年の自分を振り返ってみたんです。そしたら今年は自分の人生の中でも、かなり今までとこれからを意識していたような気がして。


ー 何かそう考える出来事やきっかけがあったということなのかな？

昨年はデビュー5周年の年だったので、祝ってもらうことが多くて。嬉しくて幸せな一年間でした。勿論、祝ってもらうことや5年間応援してもらったことに感謝する気持ちというのは正しいというか健全な気持ちだと思うんですが、そこから派生して自分の手柄だと思ったり「この5年間、オレは歩んだぜー！」と得意気になる自分は大嫌いで。去年はそんなことも思わずただ「やったー！」って喜んでいた1年だったんです。幸せの絶頂というか浮かれていたというか（笑）。