高橋優 New Album「来し方行く末」ロング・インタビュー

November 14, 2016 20:00

ー この曲では、嫌いな人を嫌いなままでいたくないと歌っているけど、優くん自身、そういう時ってどうやって嫌いな人と接しているのかなと。

嫌いな人はいますけどね（笑）。


ー だよね（笑）。

苦手な人もいるし。僕は自分のことをとてつもなく出来ていない人間だと思っていて、それをこのアルバムで表現したかったんです。よく言えば人間臭いところ。…いや、良く言い過ぎたな…駄目なところ（笑）。駄目なところを出したかった。『明日はきっといい日になる』で、きっといい日になる！って歌い、『さくらのうた』で故郷を想うと歌い、『産まれた理由』で両親への想いを歌い、『光の破片』でみんな美しいよと歌う。そういう感じに見られているんじゃないかと思ったら、妙に肩身が狭くなったというか。それも嘘ではないけれど、そういう面と相反する自分がいるんですよね。比率で言えばもしかして相反する部分の方が大きいかもしれない。真面目そうに見えるけど「え、何？この人！」って思われる部分の方が実はうごめいていて、そういう部分も表現しないことには架空の自分みたいな…崩壊する前のバブルだけが大きくなっていく恐怖みたいな感覚になっていたんです。だから今回 “Cockroach”で自分をゴキブリに見立てたり、 “アイアンハート”で嫌いな人も数知れずと歌ったり、“Mr.Complex Man”で自分のことが嫌いと歌ったりしたいと思ったんです。でも自分のことが嫌いだと思ったことってありません？


ー しょっちゅう（笑）。

それも悲しいけど（笑）。でも先ほども話に出ましたが、去年から今年に変わる頃、冷静な自分が顔を見せた時に、自分のことが嫌いだと思うことが一番多くて。「何にもしていないのに何ヘラヘラ笑ってるの？」ってぶん殴りたくなった。それは今でもたまにあって。


ー 例えば？

器用に「お疲れさまです！」なんて営業スマイルが出来るようになった自分を“うわ、上手に逃げたね、今。”って冷笑している自分がいるんです。でもただ正直なだけになって嫌いな人の前で嫌な顔しかしなくなったら、それはそれで最悪な人間じゃないですか（笑）。


ー 確かにね（笑）。

素直な自分と、上手にちゃんと嘘をつける自分がいる。その狭間で自分を見つめた時にコンプレックスって生まれる気がするんです。100%自分に自信を持っている人間はコンプレックスなんて無いじゃないですか。


ー ええ。

でも100%自信を持っている人なんてなかなかいないし、コンプレックスなんていくらでもあるんですよね。でも逆に言えば僕が、世の中の女性が言う理想の彼氏みたいな男性に生まれていたら、多分歌を歌っていなかったと思うんです。歌っていても全然違うタイプの歌になるかもしれないし、もしかしたら踊っていたかも（笑）。


ー それはそれで見たいけど（笑）。

でもどこかで好きになってもらえなかったとか、拒否られて「生理的に受け付けません」と言われ慣れている自分がいて…（笑）。


ー いやいや（笑）。

でもそのおかげで、ナニクソ精神で「また嫌われたよ！」と歌えば「分かるぜ、ブラザー！」みたく共感する男の子も沢山いる。「どうせ綺麗な女の子が好きなんでしょ！」と言っている女の子の中には「あなただってかなり綺麗ですよ。」と言いたくなる人もいる。でも本人は本気でコンプレックスに感じている。そういう人が多い気がして。自分の嘆きとも取れるようなキーワードは、自分一人のものではない。だから仕事にいかなきゃならないのが面倒臭ぇ！って歌っているんですよ、僕は。


ー なるほど。でも“Cockroach”は自分をゴキブリに見立てると言っていたけど、ABメロからサビへの歌詞の展開がポジティブで、「こう来たか！」って思わずニンマリしちゃいました。

ありがとうございます！


ー この曲、本当に大好きになって。

嬉しい！ Cockroachが好きなんですね（笑）。


ー うん…あ、いや、ゴキブリが好きなわけじゃなく、曲がね（笑）。

曲がね（笑）。


ー でもこの曲を聴くと本気で「頑張ろう！」と思えるし、今の自分のテーマ曲が何だろうと考えた時、この曲が浮かんでくるんだよね。

あー、嬉しいな。初だ。この曲でそう言ってくれた人。アルバムをリリースする甲斐があるんですよね。1曲でもアルバムの中の曲を良いと言ってもらえると。渾身の12曲を出して「やっぱり“明日はきっといい日になる”が一番ですね！」と言われると悲しいじゃないですか。


ー アハハ。

「その曲は去年出したんだけど…。」と思ってちょっと切なくなっちゃう（笑）。いや、嬉しいんですよ、それでもそう言ってもらえるのは。でもやはり最新の、しかもアルバム曲を良いと言ってもらえるのは本当に嬉しいです。


ー そう言ってもらえてよかった（笑）。あと“拒む君の手を握る”は、ちょっと胸のあたりが重くなりました。錆び付いた記憶の扉をこじ開けられたみたいで（笑）。

それは歌詞のような経験があるということですか？


ー どちらの立場もある。拒んだことも、拒まれたことも（笑）。

拒む時って、どういう気持ちなんですか？本当に嫌なんですか？それとも拒んで次に繋げようとしているんですか？


ー 本当に嫌。

あ、本当に嫌なんだ…。


ー なになに？何かあった？（笑）

いや、そういう意味じゃないけど（笑）、嫌よ嫌よも好きのうちって言うじゃないですか。


ー まあね。

まだレコーディングしたばかりだから、この曲のポテンシャルを自分で分かっていなくて。ただ別の取材の女性陣はこの曲が萌えソングだと言ってくれたんです。嫌って言いながらも手を握られるのは嬉しいって。


ー なるほど！その人の経験や性格によって捉え方がかなり変わるということだ。

でも本当に嫌なのに手を握られたら、そりゃ嫌ですよね（笑）。


ー もう自分は彼氏に気持ちがない、もしくは他に好きな人が出来た時はやっぱりね…。

今、彼氏とおっしゃいましたが、まだ彼氏なの！別れてないの？！


ー う…尋問みたいになってる（笑）。私はこの曲を聴いた時、彼氏だと思ったんだけど。

なるほど、なるほど。


ー だって拒む君にキスをしようとしているわけでしょ？トータルしても、二人は恋人関係。でも彼女の気持ちがもう覚めてしまっているのかなと。

自分で作っておいて言うのもおこがましいけど、この曲って面白いなと思っていて。この世の中で一番満ち足りているものが恋愛ソングだと思っているんです。でも「好きだよ」「一緒にいようよ」「君のことをいつも思っているよ」「愛しているよ」みたいなことはもう言われ尽くされている気がして。この二人は付き合っているのか、好き同士なのか、嫌いあってるのか、諦めているのか、まだ希望があるのかというのを全部ぼやっとさせたかったんです。ただ行為として拒む君の手を握ろうとしている。この主人公の男性も、この夜だけをどうにかしたくて手を握ろうとしているのか、それとも本当に好きなのか。この歌の情報だけだと多分分からないんです。


ー だから萌えソングとして捉える人もいれば、私のように苦い気持ちになる人もいる！

そう！それが面白いところ。あと音のこだわりとしては最初にコツコツコツとリズムが入るでしょ。


ー ええ。

あれはスタッフがハイヒールを持ってきてくれて、それで実際録ったんですよ。レコーディングに参加してくれた元GO!GO!7188のターキーさんが一番リズム感が良いから、（ハイヒールを持つ仕草をしながら）コツコツコツって録ってもらって。


ー 歩いたんじゃなくて、手で持って録音したの？

そこは色々と実験を重ねたんですが、音としてちゃんと女性が歩いているように聴こえるのは、手でハイヒールを持ちながら音を出した方がリアルに録れるんですって。


ー へー、それも面白いな。

ね！その音像で言うと、女性は立ち止まらないんですよ。ずっとコツコツと鳴っているから。そこを主人公の男性が手を握ろうとする。その、愛し合っているのかどうなのか分からないラブソングが書けて嬉しかった。僕も30歳過ぎたから、大人のラブソングをね（笑）。

高橋優 全国ホール＆アリーナツアー 2016-2017「来し方行く末」開催決定!!

12/3（土）埼玉・狭山市市民会館【FC限定販売公演】
12/11（日）石川・本多の森ホール
12/17（土）福島・郡山市民文化センター・大ホール
12/18（日）新潟・新潟県民会館
12/20（火）長野・ホクト文化ホール・中ホール
12/21（水）埼玉・大宮ソニックシティ
12/25（日）沖縄・沖縄市民会館
1/7（土）宮城・仙台サンプラザホール
1/8（日）宮城・仙台サンプラザホール
1/14（土）福岡・福岡サンパレスホテル&ホール
1/15（日）鹿児島・鹿児島市民文化ホール第一
1/21（土）香川・レクザムホール
1/22（日）高知・高知県立県民文化ホール・オレンジホール
2/3（金）広島・広島文化学園HBGホール
2/4（土）山口・周南市文化会館
2/10（金）秋田・秋田県民会館
2/12（日）岩手・盛岡市民文化ホール
2/19（日）熊本・荒尾総合文化センター
2/20（月）大分・ホルトホール大分
2/26（日）岡山・岡山市民会館
3/11（土）愛知・名古屋センチュリーホール
3/12（日）愛知・名古屋センチュリーホール
3/18（土）北海道・わくわくホリデーホール
3/19（日）北海道・わくわくホリデーホール
4/1（土）神奈川・横浜アリーナ
4/2（日）神奈川・横浜アリーナ
4/16（日）大阪・大阪城ホール