高橋優 New Album「来し方行く末」ロング・インタビュー

November 14, 2016 20:00

ー 大人のね（笑）。曲ってすべてがノンフィクションではないけれど、怒る君の声も瓶に詰めたいという発想は若干、優くんの恋愛観というか変態性（笑）も出てるのかなと推測したんだけど。

恐ろしいですねぇ（笑）。そういう意味でも、いびつな部分を昔以上に出したかったんだと思います。でも、苦い気持ちになるとおっしゃった変態性のあるようなタイプの曲を“明日はきっといい日になる“の次に持ってくる曲順がまた良いでしょ。


ー 良い良い！しかもこういう曲がありつつ、“君の背景”のように、ずっとその人の手を離さないと思える曲もあって。ウエディングソングにも良さそうだね。

結婚まで行っちゃいました？でも歌詞中に別れのことを書いてる部分があるけど大丈夫かな（笑）。


ー そういう時を経て、今なお彼女の傍らにいるわけだから良いと思うけど（笑）。

そっか。付き合い始めて、慣れてきたあたりから浮気って始まるじゃないですか。


ー ええ。

その辺の、慣れてきたあたりの愛の歌はわりと歌いづらいけどテーマとしては面白くなると思って。いつか君と付き合えたら良いというよりもね。例えば僕の曲”8月6日”は、8月から付き合い始めたけど、次の年の3月くらいからもう雲行きが怪しくなって、最終的に一年記念日をお祝いするという曲。“空気”は「空気のように居て当たり前の 存在になったようだね僕ら」というところから物語が始まるけど、空気みたいに思える君を大切にしたいという気持ちをラブソングにしたかった。どちらかというとこの“君の背景”はその延長にある曲なのかなと思っているんです。この曲は自分の駄目なところを持っている彼が描かれているじゃないですか。


ー はい。

これは僕個人の視点かもしれないけれど、例え恋人同士じゃなかったとしても、男女で歩く時に車道側に男の子が立った方が良いみたいな価値観があって。


ー 嬉しいですよね、男性がそういう気遣いしてくれると。

そうですよね。僕もそうすべきだという価値観を持ってるくせに、実際はいつも忘れちゃって。あと気がつくと重い荷物を結構長い時間女の子に持たせたままになっていて「ゴメン、ゴメン！」ってなっちゃったり（笑）。


ー ひどい（笑）。

この曲の主人公もそういう鈍臭いところがあって。しかも曲の2コーラス目では自分じゃない方が良いだろうから別れようみたいなことを言っている、超ダメダメ男！


ー アハハ！

でも不思議なもので、そんな男でも放っておかずに寄り添ってくれる人がいる時期もあって、感謝の気持ちや二人の関係性のようなものを特別なことのように書けないかなと思ったところからスタートしたんです。


ー セルフカバーの“象”の中で「10年後」というワードが出てくるけど、今回のアルバムで特に10年前の自分だったら作れていなかったという曲は？

あー、何だろう！“BEAUTIFUL”かな。僕、2年間くらい社交的キャンペーンをやっていたじゃないですか。


ー 人見知りを脱するキャンペーンね。

そうそう。たとえ夜中2時に「優くん、おいでよ！」と飲み会に誘われても行くようにしていた時期を経て、友達や人間関係の素晴らしさを得たんです。同時に人間関係の煩わしさもあるんですが、ここ1、2年で他者をすごく意識するようになったんです。


ー どういう風に？

僕、今までは買い物に行く時、自分が何を欲しいかしか考えなかったんです。でも最近は、あの人が良いと言っていたものを見に行ってみようかなとか、あの人にこれをあげたら喜ぶかなとか、自分の中の根本から他者が出てくるようになってきて。そういう中で、本当に自分以外の人が喜ぶ言葉って何だろう？と考えて、この “BEAUTIFUL”は書いたんです。安易に励ましたり褒めたりすることって残酷なのに、そういうことを結構していたんですよ、自分は。「髪、切った？似合うじゃん。」って言って「切ってないです。」と言われたり（笑）。全然人のこと見ていないことに気付いたんですよね。自分は今まで何を見てきたんだろうと思った時、相手を励ましたり褒めたり、何かを伝えることというのは、とてつもなく工夫と労力がいると思ったんです。


ー 何かを伝えるって、確かに難しい！

そうですよね。それを10代から自然に出来ている人たちのことを僕は心から尊敬しているし、僕はすごく自分の殻の中に閉じこもって生きてきたと感じているので、30歳を過ぎて本当の意味で相手に笑ってもらうということや、自分の体の中から相手に癒しを与える行為に興味を持ち始めていて。今からかよ！って感じではあるけど（笑）、そういう意味でこの“BEAUTIFUL”は、本当に頑張っている人やプライドが高い人、仕事一筋の人に贈りたいです。でも強い人たちを褒めるって難しいんですよね。


ー 確かにそうかもしれない。個人ごとで申し訳ないけど、自分は仕事が出来るとも強いとも思わないけどワーカホリックなのは事実だから、この曲を聴いた時に「あぁ、自分にもこんな風に言ってくれる人っているのかな？」ってすごく考えちゃいました。

（ふざけて諭すように）この曲を聴いてください。


ー はい。この曲に癒されます（泣き真似）。

アハハ！でもワーカホリックの人は大変だと思います。世に言う幸せとは違う幸せを手にしちゃってるから。例えばやりがいとか。僕からしたら上手に生きている人＝弱さを見せるのが上手な人なんですよね。 特に女性であれば、弱さを上手に見せて男性に甘えられる人、自分の人生を他人に委ねられる人の方が恋人が出来やすかったり結婚がしやすかったりする。でもそういうことを考えられるようになったのも、社交的キャンペーンのおかげなんですけど。だからこの曲は色々なことを頑張っている人に贈りたい曲だし、10年前の自分では書けなかった曲だと思います。


ー 今年の12月からはアルバムを携えたツアー【高橋優 全国ホール＆アリーナツアー 2016-2017「来し方行く末」】が開催されますね。

多分、ガラッと変わる気がするんです。この2年間、『今、そこにある明滅と群生』までのアルバムを引っさげたライヴを行い続けたわけじゃないですか。新しいシングル曲もあるので、今までライヴの定番曲として披露してきた曲も踏まえてセットリストを考えるとがとても楽しみです！特に今回のアルバムだけで言えば、作詞に込めた労力が今までで一番大きいので、あとは丁寧に歌うだけ。想いはもう歌詞の中に込めたので、歌う行為で力を入れすぎない方が今回は良いと考えているんです。だからフラットな気持ちで、声を枯らさないよう、大切に歌う。（取材時）ここ2ヶ月くらいずっとメンタルな、曲作りという精神世界の中で苦しんでいたので、少しずつフィジカルな方面へ目を向けていきたいです。ただそう言いつつも、最近フィジカルとメンタルってあまり分けてはいけない気がしていて…。


ー というと？

このアルバムを作るのに本当に大変だったという想いは、決して誇れることではないんです。勿論作品としては良いものが出来たと思っているけど、こんなことを続けていたら本当にいつの日か自分が駄目になってしまう気がしていて。


ー ああ…。

もっとフィジカルとメンタルが同じ位置にあるような。例えばツアーをしながら曲を書くようなスタイルというか、もっとフラットに、音楽が自分と友達かのように仲良く曲作りとライヴを楽しめるような人間になりたいというのが今後の目標ですね。 特に今年は気持ちの浮き沈みが激しくてフラットでいられなかったから。ライヴも失敗したら死ぬほど落ち込むし、曲も出来なかったら死ぬほど落ち込むし。でも出来たら金メダルを穫ったくらいに一人で喜んでる（笑）。ある意味もっとそういうこと全てを上手にこなして、フラットな気持ちをキープしなきゃと思っています。長く音楽を続けたいから。そういう部分も大切に考えながらツアーも行っていきたいので、是非楽しみにしていて欲しいです。


ー ありがとうございました。


取材・文／秋山昌未


■ 高橋優 公式HP
http://www.takahashiyu.com/

高橋優 全国ホール＆アリーナツアー 2016-2017「来し方行く末」開催決定!!

12/3（土）埼玉・狭山市市民会館【FC限定販売公演】
12/11（日）石川・本多の森ホール
12/17（土）福島・郡山市民文化センター・大ホール
12/18（日）新潟・新潟県民会館
12/20（火）長野・ホクト文化ホール・中ホール
12/21（水）埼玉・大宮ソニックシティ
12/25（日）沖縄・沖縄市民会館
1/7（土）宮城・仙台サンプラザホール
1/8（日）宮城・仙台サンプラザホール
1/14（土）福岡・福岡サンパレスホテル&ホール
1/15（日）鹿児島・鹿児島市民文化ホール第一
1/21（土）香川・レクザムホール
1/22（日）高知・高知県立県民文化ホール・オレンジホール
2/3（金）広島・広島文化学園HBGホール
2/4（土）山口・周南市文化会館
2/10（金）秋田・秋田県民会館
2/12（日）岩手・盛岡市民文化ホール
2/19（日）熊本・荒尾総合文化センター
2/20（月）大分・ホルトホール大分
2/26（日）岡山・岡山市民会館
3/11（土）愛知・名古屋センチュリーホール
3/12（日）愛知・名古屋センチュリーホール
3/18（土）北海道・わくわくホリデーホール
3/19（日）北海道・わくわくホリデーホール
4/1（土）神奈川・横浜アリーナ
4/2（日）神奈川・横浜アリーナ
4/16（日）大阪・大阪城ホール