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松室政哉、ニューシングル『Theme』インタビュー

松室政哉、ニューシングル『Theme』インタビュー

September 14, 2016 00:00

松室政哉

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「松室政哉、パチンコ機「CR仄暗い水の底から」に楽曲提供!」
オフィシャルよりこのニュースが届いた時、正直かなり驚いた。しかも松室による全曲(9曲)書き下ろし&プロデュースの同タイトルサウンドトラックは、我々が知る松室政哉ワールドとはかなり逸脱しているものも多い。しかし、 これでもか!と突きつけるビート、メロディ、手法は秀逸なセンスに溢れており、彼の才能の振り幅に更に驚きを覚える。昨年は、BENIのアルバム曲“横顔”を作曲・編曲・サウンドプロデュース。活動の幅を広げた松室が9月14日(水)にシングル『Theme』をリリース。タイトル曲は女子スキージャンプの髙梨沙羅選手が出演するクラレ企業CM「髙梨沙羅 ときめき」篇タイアップソングとして耳にした人も多いはず。そんな松室に『CR仄暗い水の底から』サウンドトラック制作エピソードや、『Theme』への想いの他、松室が学生時代によく聴いていた 秦 基博の話などを交えながら今年の【Augusta Camp 2016 〜produced by 秦 基博〜】についても、語ってもらった。



ー まず9月14日(水)発売のニューシングル『Theme』のことを伺う前に、『CR仄暗い水の底から』の話を。最初は「松室くんの楽曲がパチンコ機?」って驚きましたよ(笑)。

そうですよね(笑)。


ー『仄暗い水の底から』は元々鈴木光司さんのホラー短編集ですよね。

そうです。その中の一編「浮遊する水」を中田秀夫監督が2002年に映画化したものが今回のパチンコ機のストーリーとして起用されています。


ー パチンコ機の楽曲を作るのは、ドラマや映画のテーマ曲を作るのとはまた違う気もするのですが。

僕も今までパチンコはやったことなかったので、どういう風に曲が流れるのか正直最初はイメージ出来なかったんです。でも、映画『仄暗い水の底から』が元々好きだったので、そういう前段があったから出来たかもしれません。今作は全9曲なんですが、最初の段階ではどの曲がどこで流れるか決定するのではなく、先方から頂いた曲の雰囲気やテンポなどの大まかな要望を取り入れつつ制作しました。だから曲ありきで進めていった形です。でもかなり自由に作らせて頂いたので、普通にアルバムを作っているのと同じだったんです。今回は全編歌ものなので、あれがすべてインストだったらもうちょっと大変だったかも(笑)。


ー インストではなく歌ものという要望は先方から?

そうなんです。アーティストやアイドル関連のパチンコ台は別として、歌ものが使われることって、そうはないと思うんです。今回のパチンコのストーリーとして使われているあの映画は、ホラーの要素だけでなく母と子の感動要素もあるので、バラードも大切になってくるんです。


ー とはいえ、実は本当にホラーが大の苦手で…(笑)。

そうなんですか(笑)。感動ですよ、あのストーリーは。まあ勿論怖いは怖いけど。


ー やっぱり(笑)。でもパチンコ機だから特別だったり気負ったりするのではなく、アルバムを作るのと同じ感覚で作れたというのは良かったですよね。

本当にそうでした。去年3月頃に前半、9月頃に後半の制作をしたんです。途中少し期間は空きましたが、約一年間くらいかけて作り上げました。でも、最終レコーディングから時間が経って改めて聴き返すと、9曲とも流れは良いし、アルバムとしてもしっかり出来ていると感じました。

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ー このサウンドトラック(以下:サントラ)はiTunesで先行発売後、現在ライヴ会場限定で発売。お客さんからの反応は来ました?

来ました。驚いている人が多かったです(笑)。


ー 私も、驚きました(笑)。ビートの強いEDMのような楽曲も結構あって。

ニューシングルの“Theme”もそうだけど、今までの”オレンジ”や”ラブソング”みたいなテイストの中で、今回のサントラ的な曲を作るイメージがなかったと思うんです。でも僕はああいう打ち込みも好きなので、その面を見てもらえたのは良かったです。ホラーというテーマがあったので振り切れた部分があったのも事実ですが。


ー 松室政哉としての作品ではなかなか表現し得ないサウンドですもんね。

ええ。でも振り切れたことで、あそこまではいかなくとも(笑)、松室政哉作品でもああいうテイストの曲を入れていくことも出来てくると思うし。そういう意味では良い経験が出来ました。


ー 今作は全曲書き下ろし&プロデュースですよね。

はい。でも自分の作品を作る時もセルフプロデュースだし、他のミュージシャンのイメージを伝えながら作る行程も同じなので、気持ち的にはそんなに変わることはなかったかな。自分の作品と違う点はただ一点。


ー それは?

今回もいつもお願いしているバンドメンバーだったんですが、この曲がどういうイメージかをちゃんと伝えないと、多分びっくりするじゃないですか? いきなりああいう打ち込みバンバンな感じとか(笑)。


ー 確かに(笑)。

だからその点は結構意識しました。


ー この作品では松室くんの他に、 HYLEさんとメロディーキッチンのフチタアイコさんがヴォーカルを務めていますね。

アイコとは対照的な声や表現を持つ女性ヴォーカルがもう一人欲しいと思ったので、HYLEさんにお願いしました。今回はバラードからビートの効いた曲まで色々なので、自分も含め、楽曲のイメージに合う人にヴォーカルを担当してもらったんです。


ー HYLEさんが歌う“Take My Hand”ではボイスチェンジャーの効果や、途中で声が細かく震える感じがもう怖くて怖くて!

あそこ怖いですよね(笑)。ああいう効果は、いつも僕のエンジニアを担当してくれている、いまぜきくにひろさんにだいぶ助けられています。今作では特に意見を交換しながら、いまぜきさんが色々と試してくれたんです。その上で「これいいね!」とか「この部分はもうちょっと違うアプローチの方が良いかも。」とジャッジをしていきました。そういう効果などは今回のサントラのポイントになっていると思います。あと、制作に携わった全員がホラーならではの恐怖やストーリーとしての感動を共有出来ていたんだなと感じています。


ー アルバム最後の曲、“君のいない明日”ではフチタさんの穏やかな歌声とメロディから、やっと恐怖から解放された安らぎみたいなものを感じましたが、ホラーって終わったと思ったら最後に実はまだ…みたいのがあるでしょ。

そうそう(笑)。バラードも何曲かあるんですが、そもそもはホラーだから(笑)。でもそれが面白いんです。ただのバラードではないというか、そこにテーマがあるからこそ感じる陰。それはこういうコンセプトのある作品じゃないと出来なかったなと思っています。

Information

Release

松室政哉
「Theme」

2016年9月14日発売

-収録曲-

1. Theme(クラレ企業CM「髙梨沙羅 ときめき」篇タイアップソング)
2. キャンバス
3. 途切れたメロディ(「CR仄暗い水の底から」搭載楽曲)

Theme

CD

XNAU-00019 / ¥1,200-(税込)