【レビュー】上白石萌音『スピカ』

上白石萌音が歌う「スピカ」が、4月24日より配信スタートした。この曲は現在テレビ東京・他で放送中のアニメ『バーテンダー 神のグラス』のエンディングテーマで、大橋トリオによる提供楽曲。歌詞は大橋作品には欠かせないmicca。プロデュースも大橋トリオが務めており、春の夜に青白く輝く乙女座の恒星の名前がタイトルになっている。

ところで、『バーテンダー 神のグラス』のオープニングは川崎鷹也の「Stardust Memory」。そしてエンディングがこの「スピカ」。テーマ曲という角度から見ると、星で繋がっているあたりは気になるところだ。

楽曲の話に戻ると、大橋トリオの紡ぐ繊細で美しいメロディと、透明感さえ感じる上白石の歌声が重なり合い、そっと琴線に振れる。鍵盤とドラムは優しく牧歌的なムード、しかしJ-POPの要素から逸脱しない絶妙なバランスを保っている。だがCメロで独特の展開を見せる。例えばバースとサビが『バーテンダー 神のグラス』の中に出てくる人たちの日常だとすれば、Cメロは佐々倉溜が作るカクテルに広がる世界。そしてそのカクテルを飲んだ人の日常や感情に戻る。大橋氏の意図とは違うかもしれないが、筆者はそう解釈した。ジャズやフォーク、エレクトロニカなど様々なジャンルを凌駕する大橋トリオならではのサウンドだろう。そして歌唱力（彼女の持つ声の魅力はまた別）だけでなく、役者としての表現力を持ち合わせた上白石だからこそ、作品を美しく彩ることが出来るのだろう。