ー そうなんですか。歌詞に出てくる「豪快すぎるオーナーの長女」はイメージ的に真粧美さんを思い浮かべましたが(笑)。
真粧美さん的な雰囲気ですよね(笑)。勝さんは焼肉屋の主人じゃないんだけど、そんなイメージを無双してみたというか。「警視-K」というドラマで勝さんと真粧美さんが共演されていたんですが、そういう色々な要素が入り混じっています。サウンドも、夏だしノリノリな方が楽しいと思ったんです。アルバムとしては表題曲にもなるわけだし、テレビなどで演奏することも多いから、演奏する側としても楽しい曲じゃないとね。
ー それってモチベーションとして大切なのかもしれませんね。
ええ。
ー この曲のMVもクールですよね。木村和史監督とは10作目。
今までも色々なMVがありましたが、なんと言ってもバンドはプレイしている姿が一番生き生きとしているので、それに勝るものはないと思って今回は演奏しているシーンのみにしました。
ー 横山さんからMVのアイデアを出すことも多いんですか?
今回に関しては演奏シーンで構成することと、メンバー全員が登場することを希望として伝えました。ほら、僕だけ出ると他のメンバーのファンからクレームがくるでしょ(笑)。あれも僕のせいじゃなくて、メンバーのスケジュールが合わなくて出れないだけだったりするんですよ。
ー そうなんですね(笑)。中でもホーンのシーンはクールですよね。
あの3人のシーンは格好良いですね。それとドラムの廣石(恵一)とベースの洞口(信也)とヴォーカルの(スモーキー)テツニの振り付けがシルエットになっているシーンも良い感じだし。ちょっと今回は90年代テイストになったかなと思っています。ただ90年代そのままではなく、きちんと今の空気感も入るように考えました。90年代をそのままなぞるのなら当時の作品を聴けば良くなっちゃうから、トレースする部分とトッピングする要素を入れました。今は何周かしてそういうのが気持ち良いのかなと、自然とそうなりましたね。こういう曲を作ろうと考えたとうより、出来ちゃったという感覚。
ー 横山さんは詞と曲を同時に作るんでしたっけ?
“タイガー&ドラゴン”の時はそうでしたね。でもこの“Going To A Go Go”はまずインストゥルメンタルのリズムを作ったんです。自分でドラムを叩いてベースを弾いてデモテープにしたけど、その段階ではまだメロディも歌詞もなくて、伴奏に興奮して後からメロディと歌詞が出来ました。そこからスカッとメンバーの演奏に差し替わった瞬間にますます興奮して、歌詞を総入れ替えしたりメロディも増やしたりしました。
ー 格好良いはずですよね!作り方がすでにライヴみたいですもん。
ありがとうございます!
ー そのタイトル曲や配信シングルが入ったアルバム『 Going To A Go Go』ですが、オリジナル・アルバムのリリースが3年ぶり。
その前がセルフカバーアルバムとベストアルバムでしたから、オリジナル・アルバムを出したいという鬱憤が溜まっていたので(笑)やっと出せました!ただ昨年や一昨年に作った自分の中のデッドストックはもう古臭いと思ったので、新たなものを中心に構成しました。ただ“MIDNIGHT BLACK CADILLAC”はデッドストックです。この曲は20年前、1stアルバムの『PUNCH!PUNCH!PUNCH!』でボツになったテイクで、ドラム、ベース、ギター、ヴォーカルは当時のままなんです。
ー え、そうだったんですか!声も全然分からなかったです。
いやいや、今はだいぶ声もざらついてきましたよ(笑)。そこに今のメンバーのホーンセクションとキーボードを入れたんです。ヴォーカルも録り直そうと思ったんですが、何か音霊や言霊が出せなくて。でも声や演奏をそのまま使うことで当時の空気感も出せたし、新たに今の音を足すことで20年かかりましたけど、やっと完成に至ったというわけです。まあ“山鳩ワルツ”は50年かかっていますが(笑)。
ー 確かに(笑)。 でも“MIDNIGHT BLACK CADILLAC”は、独特のやんちゃさがCKBらしいです。
今ならコンプライアンス的に問題あるかもしれませんが、当時ですしね(笑)。
ー ライヴでも盛り上がりそうですよね。
横浜のFRIDAYというライヴハウスでCKB結成当時の6人編成で定期ライヴを行っているんですが、そこではこの曲もずっと演っているんです。だからやっと音源として届けることが出来ました。
ー 今回のアルバムテーマは「支離滅裂」ということですが。
本当に嬉しい時や興奮している時って人間支離滅裂になるじゃないですか。例えばスポーツで好きなチームが勝った時とか、両手を挙げてウワーっと叫んで。
ー なりますね!
躁な状態というか。岡本太郎で言うところの「芸術は爆発だ!」、あれですよ。だから決してネガティブな意味ではなくCKBのクリエイティブが爆発しているという感じです。
ー ジャンルも多岐にわたっていますよね。
やはり色々な音楽が好きでね。学生時代はベストテン番組が大好きで、格好良いロックンロールバンドがあったと思えばいきなりド演歌になって、それこそ支離滅裂(笑)。カウントダウンTVでもたまにあるけれど、そういう混沌としているのが好きなんです。今の時代はわりとクールなものがウケているけれど、こういう混沌としたものも良いんじゃない?ってね。
ー 本当に素晴らしかったです!さまざまなジャンルがこれだけ混在しているのに、どれもCKBらしい曲になっていることはカッコいいの一言につきます。個人的には『GALAXY』が一番好きなアルバムだったんですが、更新しました。
ああ、あのアルバムも支離滅裂ですからね。あの時は24トラックを使って録ったんですが色々大変でした。アイデアが次から次へ浮かんじゃって、浮かんではやり直して、そうすると今度は別の部分をやり直したくなっちゃって一回完成したのにまたやり直しの繰り返し。でも今回のアルバムもあの時と同じでやり直しの連続でした。結局欲が出てきちゃうんですよね。でもやりすぎてやっぱり元のテイクに戻したりしてやり直しのやり直しで、もうひっちゃかめっちゃか(笑)。
ー ご自身は35周年を迎え、バンドとしても20周年を迎えた、いわば大ベテランでありながら、そのエネルギーは一体どこからくるのか知りたいです。
どこから来るんでしょうかね(笑)。音楽に飽きたことが無いからなのか、毎回毎回今までやってきたことを蓄積しながら、その都度パッションが出てきちゃう。
ー アルバム制作やライヴも含め、これだけ音楽とずっと向き合っていると、プライベートで音楽を聴こうという気持ちになるものですか?
ラジオで予期せぬ音楽と出会うのが好きなんです。自分で選んだ曲も良いですが、ラジオを聴いていると「こんな音楽作っている人がいるんだ!」ってショックを受ける時があってね。そのショックが良く出る場合と悪く出る場合があって、悪く出ると「もう音楽辞めた!」っていう気持ちになることもありますけど(笑)、気になった曲はあとから番組のホームページでタイムテーブルをチェックしてCDを買ったりもします。最近ではズクナシという女の子のバンドが良かったですね。Amy Winehouseの第一印象と一緒で、古典的なサウンドなんだけど印象が「今」なんですね。
ー チェックしてみます!CKBさんのアルバムと言えば、必ずインタールードが入っていますよね。実はあれが個人的に好きなんです。
ありがとうございます。90年代のHIPHOPって結構インタールードが入りますよね。
ー ええ。
要するにアナログでA面からB面にひっくり返す、あのハーフタイムに相当するものなんです。CDはそのハーフタイムがないので疲れちゃうからどこかで仕切板というか、by the way的な要素を入れるのが良いかなということで、HIPHOPからのヒントでインタールードを入れるようことになったんです。
ー 昔、しりとりやっているのもありましたよね(笑)。
ありました、ありました(笑)。あれは大不評だったんですけどね、毎回聴かなきゃいけないって。でも後世に語り継がれるものを意識するよりも、今この瞬間輝くものだけをやる方が思い出になったりするんです。古臭いと思うし、ダセーって思うこともあるけどそれが良い。それでノスタルジックに浸れるし。だからスタンダードを狙うようなケチ臭いことしないで、今あるお金全部使っちゃえみたいな方が威勢が良いものが出てくるんじゃないかな。