ー 先程シンタさんはご自身のことを「チマチマしている」なんて言われていましたが、それが丁寧で綿密に曲を作る部分に繋がるんでしょうね。
大橋:そうですね。でも確かにチマチマ…かもしれない(笑)。僕も綿密には作りますけど、チマチマは作っていないかも(笑)。
常田:(笑)。
ー ではご自身の変わらない点は?
大橋:自分が作ろうとする作品の中で、癖みたいなものは変わらないかもしれないです。例えば好きなコード進行やメロディの雰囲気、そういうもののベーシックになる部分はあまり変わっていないかな。それが自分の中で苦しいところでもあるんですけどね。しっかりその部分を意識しないと、結局同じような曲ばかりになってしまうので。
ー 確かに歌詞にしろ曲にしろ、これだけ作品を生み出していると悩んでしまう時もありそうですね。
大橋:100曲以上書いていますからね。そうすると当然似たような曲も出てきがちなんですが、「このアプローチはあの曲と一緒だね」とか「あの曲でこの言葉は使っているよ」ってチェックしながら、そこはどうにかしてなるべく遠ざけようとします。
ー そのアーティストらしい音と、同じ曲ばかりというのは全然意味合いが変わりますからね。
大橋:やはり自分たちの中から出てくるものだから、どうしてもね。ただそういう時にやっぱり自分は、もしくは自分たちはこういうものが好きなんだなと実感します。
常田:終わらせ方がよくかぶるよね。
大橋:ああ、そうだね。
常田:曲中よりも手の内があまりないし。そこは多分他のアーティストの方もテーマにはなっていると思いますが。
ー でもスキマスイッチさんの場合はライヴで全く違うエンディングアレンジも聴かせてくれるので、そういう部分も楽しみのひとつです!
常田:頑張ります!(笑)
ー ライヴ繋がりというわけではありませんが、“パーリー!パーリー!”はまさにライヴのことを歌った曲ですね。
大橋:ライヴをテーマにした曲にしたいと思って、ふたりで「ライヴの時ってどうだっけ?」と話し合って、僕らがライヴの中でするコール&レスポンスの雰囲気とかお客さんの雰囲気とかを意識しながら作りました。
ー ライヴで楽しめることは勿論だけど、 まだスキマスイッチさんのライヴに行ったことのない人がその楽しさを想像出来るような曲だと感じました。
常田:この曲は「ライヴの後半で盛り上がれる曲をもっと増やしても良いよね」というアイデアから始まっていますが、本作の中でもスピード完成した曲なんです。特に歌詞に関してはお互いバババッとアイデアを出し合いながら、どんどん言葉が積み上げられていく感覚でした。
ー 行程そのものがライヴのようですね!
常田:そうかもしれません。それと折角ライヴをテーマにした曲なので、ノリは大切にしました。出来上がった時は「やっとライヴで盛り上がれる曲が増えたね」と二人で話したし。
ー ピアノとホーンの掛け合いが気持ち良いです。
常田:ありがとうございます。意外とピアノソロを今迄やっていなかったんですよね。
ー そういえばそうかも…。
常田:だからああいう形で取り入れるのも面白いと思って、入れてみました。
ー “ミスランドリー”のエバーグリーンなメロディはやっぱり良いですね。
常田:先ほどの卓弥の話に繋がるけど、 毎回カントリー調の曲は取り入れているけど、普通の曲調では今迄と同じになっちゃうかなと思ったんです。今回卓弥がずっと言っていたのは「違和感」。いびつなものを入れたいと話していて、一番最初に仮のアレンジを持っていった時も「これだと今までとあまり変わらない感じになっちゃうんじゃないかな」という話になって。もっといびつな雰囲気で、このメロディに対してはしないであろうアプローチを考えたんです。
ー そのいびつというのは、卓弥さんの声の処理というか質感とも関係しているということでしょうか?
大橋:そうです。歌い方もいつもと違う感じを意識して、処理も変えてみました。そうすることで、この曲ってどういうことなんだろう?と疑問符を投げかけるような効果を生んだと思います。シンプルなことを歌っているけど実は何かあるんじゃないかと思うような。
ー 私もそう捉えました。「僕の汚れたTシャツ」という歌詞は本当に汚れたTシャツではないよね?と。
常田:そうやって人によって色々な発想で歌詞を読み解いてもらうのが、この曲では面白いんじゃないかな。
ー 採用にはならなかったそうですが、泡の音はシンタさんが実際の音を使おうとしたとか?
常田:そうです。実際、お風呂場でお湯をかき回してみたり、泡立ててみたりしながら色々な音を持っていったんだけど、全部生々しすぎて没になりました。でもこれはしょうがなかった!あんまり泡に聴こえていなかったから。ブクブクじゃなく、チャプチャプしちゃう。難しいですね(笑)。 あんまり泡が弾ける音を生では聴かないじゃないですか。
ー ああ、そう言われると確かに。
常田:だからエンジニアさんがライブラリーから持ってきた音を、いくつか聴いて選びました。音の置き所も演奏するかのように「そこ!あと…はい、ここ!」って結構時間をかけて落とし込んだんですよ。僕らは自分たちが大切にしているリアリティが伝わると良いなと思っているから、“スカーレット”の時も名鉄(名古屋鉄道)の電車の音を撮りに名古屋まで行ったりしたけど。あ…“奏(かなで)”も直前にSE入れたよね。ピアノと電車の音を…。
大橋:ああ!〜overture〜を作ったんだよね。
常田:アルバム(『夏雲ノイズ』)を聴くと出てきます。
大橋:でもトラックを送ると聴こえなくて。
常田:確かマイナストラックじゃなかったかな。
大橋:そうだ、そうだ。“えんぴつケシゴム〜overture〜”から繋げて聴くと聴こえるんですけどね。