ー そういう話の中から、インスピレーションが生まれたということ?
そうなんです。勿論世代は全然違いますが、たとえ年齢が違おうが、例えば性別が違おうが、それでも同じことを感じる部分って絶対にあるじゃないですか。
ー ええ。
そういうのを無意識に認識する作業だったかな。意識的ではなくね。でも物を作る時のインプット作業ってそれくらいのことが結構多いと思うんです。勿論強烈な出来事が起こってそれを曲にする場合もあるだろうけど。例えば新型電子レンジの話をしていたとしても、その会話の中でふと恋の歌が浮かぶかもしれない。そういう感覚なんですよね。
ー それはちょっと分かる気がするな。
森川さんは多岐に渡る知識をお持ちの人だから、話をするのがすごく楽しくて。自分の目で見てきた音楽のこともあるから、そういう話を聞いているだけで、あるいはそれに対して僕が感じたことを話すだけ、聞いてもらうだけで曲へのインスピレーションに繋がるんです。多分それは何かエピソードをもらうというよりかは、クリエイティブなところを活性化させる作業みたいな、そういうことなのかもしれない。
ー なるほど!
その後、テンションが上がっている状態の時に自分一人でバーっと書いて、また森川さんに見てもらう作業でした。
ー この曲を初めて聴いた時から、映画のワンシーンを切り取ったような曲だという印象があったんだけど、そういう部分は意識したのかな?
逆に僕は無意識にそういう視点が多くなりがちなので、出来るだけ抑えようとしたくらいでした。それでも出ちゃうんですけどね(笑)。勿論僕にとって映画のワンシーンを切り取ったという視点はすごく大好きなんですが、何ていうのかな…もっと自分の心の部分、主人公の心の中を歌っている箇所があった方が良いと思って。
ー つまり心象風景をもっと描いた方が良いと?
そうそう。でも最初は、まず思ったことをだーっと書いてみるんです。そこで叩き台を作って、後から削ったり足したり。
ー 今回c/wに収録された“ラブソング。”をインディーズ盤で聴いた時、最初に一途さを感じたんだけど、この“毎秒、君に恋してる”も、やはり一途さを感じました。
多分、どこを切り取って一途かということだと思うんです。
ー 例えば“ラブソング。”であれば「君が会いたいって言うなら 僕はすぐにでも駆けつけるから」という部分に一途さを感じたんだけど…。
でも絶対そうなると思うんですよね。勿論、会いたい気持ちはあるけど、それより眠いとか面倒くさいとか、もしかしたらこの曲の主人公も時が経つにつれてそうなるかもしれないし、過去はそうだったかもしれない(笑)。でも好きになった瞬間、きっとそう思う気がして。それこそ映画『 リトル・ミス・サンシャイン』の話じゃないけど、すごくシリアスなテーマをコメディという手法を使って、しかも極端に描くわけじゃないですか。
ー はいはい。
それによって本質の共感出来る部分が浮き彫りになるというか。別にあれを観て「私はあんなハチャメチャな経験していないわ。」なんて思わないじゃないですか(笑)。
ー そうだね(笑)。
それと一緒で、根端の部分をどう伝えるかは確かに考えますね。 “ラブソング。”は、相手はワガママだし自分は振り回されているんじゃないかと思いながらも、この人と一緒にいたいと思っている主人公の歌でなので、この曲を聴いて男の人ってこういうことを思うんだって感じてくれれば嬉しいです。
ー “毎秒、君に恋してる”で感じた一途さは、冒頭の<はじまりは最後の恋の歌 100年先も>という部分。
この曲は人を好きになって、想いをまだ伝えられずにモヤモヤしている瞬間を切り取ったんですが、誰かのことを好きになったその瞬間って、全世界の誰しもが一途じゃないですか。二股とかしちゃう人もいるけど、それだってもしかしたら一人一人に対しては一途なのかもしれないし。
ー うーん、なるほど。
だから冒頭の歌詞みたいなことって、きっと心の中では思っていることだと思うんです。口に出して言わないだけで。
ー 松室くんも言わない?(笑)
いいませんよ、僕も(笑)。でも好きになった時ってみんなこうでしょう。その後、付き合う中で悩むことや別れを考えることも出てくるかもしれないけど、本当にその人を好きになった瞬間は、言葉にすればこういうことだと思うんです。ただ普段生活している中で言葉にしたいとは思わないし、直接こんなこと言わないじゃないですか(笑)。