【コラム】オフィス オーガスタ特集 Vol.4 後編

February 17, 2016 21:00

ー あります！！

でもそれではいけないんです。僕らはお客さんに届ける立場だから、ファンでなければいけないけれど、スタッフでなければいけない。だから合宿の時は努めて冷静に、「すごく良いと思うんだけど、でもそうじゃないぞ。」と思った時だけ言うようにしていました。これは松室が後から言っていたことなんですが、僕のそう言った立ち振る舞いを見て、「こんなことを半田さんに訊いちゃいけないんだ。」「ここは自分で考えなければいけない。」という線引きを自分なりに考えたらしいんです。こっちは色々言いたくてムズムズしてましたが（笑）、そうやって自分で考えている姿を見ていると頼もしく思えましたし、すごく印象的でした。そうやって一生懸命考えることで、彼も自分の楽曲を客観視することが出来たと思います。


ー その後12月4日、 青山・月見ル君想フでのワンマンライヴ【Matsumuro Seiya LIVE 2015 -Trailer-】は盛り上がりましたね！

あの日は良かったですよね。きっと彼の音楽自体が奇をてらっていない素直なものだからだと思うんです。それを聴いていたらお客さんの気持ちも素直になるでしょうし、何より松室本人がステージ上で真っすぐじゃないですか。


ー ええ、確かに。しかも本当に楽しそうでしたし。

それがきっと伝わるんだろうと思います。


ー そして今年2月24日にシングル『ラブソング。』をリリース。あの合宿で作っていた曲なんですよね。そう考えるとちょっと感慨深いものが。

そうですよね。このシングルは今、彼が出来ることを全部出していると思います。鍵盤の松浦（はすみ）は大阪時代からの仲間ですが、SuchmosのTAIKING（戸塚泰貴）やベースの（植松）慎之介、ドラムの（相川）雄太さんは、【Augusta Camp 2014】で初めて一緒にプレイしたメンバーなんです。以来、彼らにはレコーディングでもライブでも本当にお世話になっていて。そういう仲間たちと、このタイミングで一緒に演奏した音源がリリース出来るというのはすごく意味のあることだと思っているんです。


ー リリースが楽しみですね。

バンドメンバーも松室も僕もそうですが、今、一歩ずつ一歩ずつ前に進もうとしている状況なんです。その良い意味での頑張っている感や若々しさが、きっと音に出ていると思うので、聴いてくださった方々にもそういう部分を感じてもらえたら嬉しいです。以前のレコーディング合宿のレポートでもお話させていただきましたが、僕にとって松室は、初めて自分で見つけて、1から一緒に歩んでいるアーティストです。スキマスイッチの場合は僕の方が歳下な上に経験もない。だから正直、思っていても言えないことや、やりたくても知識や技術的に出来ないこともあり、自分の未熟さで色々と歯がゆい想いもしてきました。さかいゆうの場合も、自分があまり精通していないジャンルだったので、口を出せないところもありましたし。でもそういう経験を経て、まだまだではありますが、僕の中にも様々な知識や経験、技術が備わってきた。それを発揮出来る場がここなんだと思うんです。


ー なるほど。

僕がスピッツを好きだと言うのと同じく、松室はサザンオールスターズがすごく好きで。普通に並べてみたら全然違う音楽じゃないですか。


ー ええ。

でもそれが松室の楽曲に昇華された時にリンクするんです。


ー リンクですか？

「この曲はどういう感じにしていこうか？」と話し合った時、向かっている方向がほぼ一緒なんです。ブレを探す方が難しいくらい。


ー それってすごいですね。

きっと音楽的に相性が良いんだと思います。一緒にやっていく上で、その部分はとても大切ですから。そういう意味でも僕が「こうしたい」と思うことを、きっと彼も「なるほど」と思ってくれるだろうし、彼がやりたいと思うことを僕も「面白い」と思える気がしているんです。そういう二人が組んでいたら、きっと良い作品が出来るんじゃないかと思っています。だから今後も楽しみにしていて欲しいです。


ー ありがとうございました。


取材・文・写真／秋山昌未

半田悠さんプロフィール



原盤制作ディレクター 兼 作家マネジメント 兼 タイアップ&キャスティングプロモーション
2002年入社。スキマスイッチやさかいゆう、新人、松室政哉の担当制作ディレクターを務める他、杏子、COIL、元ちとせなどの制作にも携わる。


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