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業界初!気鋭のアーティスト7組と作曲AI「FIMMIGRM™」によるコライトワークショップイベントレポート

April 28, 2023 11:00

agehasprings

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業界初!気鋭のアーティスト7組と作曲AI「FIMMIGRM™」によるコライトワークショップイベントレポート

3月4日、株式会社レコチョクにて作曲AI『FIMMIGRM™(フィミグラム)』を活用したワークショップ『Eggs Presents FIMMIGRM - AI Music Lab. -』が開催された。

□ イベントの様子はこちらから
『Eggs Presents FIMMIGRM - AI Music Lab. -』Digest Movie
https://youtu.be/gzXqfiV1NL4

FIMMIGRM™は蔦谷好位置、田中ユウスケ、百田留衣、飛内将大、横山裕章など、いまや日本を代表するヒットメーカーが多数在籍し、近年ではライブプロデュースやレーベル設立、AI開発など、音楽業界の未来を見据えるクリエイティブカンパニー・agehaspringsの代表を務める音楽プロデューサーであり、株式会社TMIK代表の玉井健二がプロデュースした作曲AI。卓越したヒットソングのトラックを分析・学習させた「AIトラックジェネレーター」を介してAIが自動で作曲し、ハイクオリティなオリジナル曲をメロディの類似なく作成することができる。

イベントの冒頭では株式会社エッグス 代表取締役社長の柴崎栄太郎氏、株式会社TMIK CTO / PARTY 執行役員 Tech leadの梶原洋平氏、株式会社TMIK COOの齊藤悠貴氏、リアルサウンドテック 編集長の中村拓海氏が登壇し、ニッポン放送の吉田尚記アナウンサーがMCとして進行。各登壇者の自己紹介を挟み、柴崎氏が「インディーズアーティストの創作を支援するEggsにとっても画期的なサービス」とFIMMIGRM™を紹介したあと、梶原氏が同サービスの操作方法を解説。

□ 操作方法

1.「Pop/Bright」「Pop/Dark」「Singer」「Emotional/Bright」「Emotional/Dark」「Ballad」という譜割りやメロディの上下幅などが違う6つの“Mood”の中から自分好みのMoodを選択。

2.“Key”でコードを設定し、“Genre”で「Techno」「Ambient」「Beats」「Acoustic」「Electronica」「Dance」「Simple」からジャンルを選択。

3.最後にBPMをシークバーで設定し生成ボタンを押せば、あっという間に設定どおりの楽曲が3曲生成される。

生成されたこの3曲は、聴いたうえで良いと思ったものを素材としてダウンロードするだけでなく、何度でも「再生成」することが可能。一度生成した楽曲は著作権管理の観点から、二度と同じものが出てこない。そのため、気に入ったものは必ず「お気に入り」に登録しておくことがおすすめ。

梶原氏は「agehaspringsの作家も、とんでもない量のメロディストックを抱えていて、急に楽曲が必要になった時は、そこから引き出してくることもある」と明かしたほか、過去に自身がメジャーレーベルからデビューした際に「タイアップ案件が急に入ってきて『3日後までに50曲作って』と言われたときにすごくしんどかった経験もある」と、現在につながるアーティスト時代の苦悩を語った。

もちろん、そんな梶原氏の当時の悩みはFIMMIGRM™を使えば解決可能。生成後にダウンロードできる素材はWAV形式(メロあり・メロなし)とMIDI形式の3つだが、生成時に“ジャンル”で「Simple」を選択しておけば、複雑ではないシンプルなメロをいくつも自動作曲することができるからだ。これをもとに膨らませていけば、ゼロから大量のデモを作る必要はなくなる。吉田氏は梶原氏のこの説明に「シンプルにいえば、音楽のガチャのようなものですね!しかも他の人と被らない=コモンがないタイプの」とわかりやすい例を添えてリアクションした。

そんなさまざまな機能を使って制限時間3時間で15〜60秒の楽曲を制作する、というワークショップがスタート。参加したアーティストは米澤森人、DADA GAUGUIN、灰かぶり、Night to Lie、Suhm、kijin、Kangaroockの7組。それぞれラッパー、シンガー、バンドマンなど活動形態も多様で、持ち込み機材もギターやサンプラー、キーボードのほか、エフェクターやアンプシミュレーターなど多岐にわたった。

実際の制作風景も、小さいデスクに各自の機材が最小限に展開されるだけで、ほぼほぼラップトップとDAWで作業が進んでいく。歌などのレコーディングが必要なアーティストのみ席を離れて録音する場面もあったが、一部参加者はラップをその場で録って完結。FIMMIGRM™を使った作曲はいかに敷居が低いかを象徴するかのようなワンシーンだった。

予定されていた3時間が終了し、アーティストによる楽曲発表の時間へ。

1番手の灰かぶりは「AIってすごく難しくて身近に感じてなかった。実際に使ってみると、音楽制作を手助けするツールとして身近に感じた」とコメント。メロディを選んだ基準については「いろんなジャンルをとりあえずダウンロードしてみて、そこから自分の好みに合った音やコード感のものを選んだ」と語った。続けて「バンド形態のため、普段は弾き語りから制作してDAWで肉付けすることが多いが、今回はそのような作り方と違う」と、自身の活動形態を踏まえて話す。慣れない工程だったとは思うが、だからこそ面白さも感じたようだ。

灰かぶりは実際のDAW画面を投影しながら「Simpleで作らせた単純なコードをまずはいじらずに使おうと思ったが、これだけだと足りないと思ったのでリバースさせたりして、ここからアイディアを広げていくことにした」と解説。Bメロ的なパートはAIが作った「Pop/Dark」などのものを切り貼りし、サビ前の急展開については「Simple」で作ったものを2つ重ねてコードを一つにしたそうだ。

2番手のKangaroockは、採用したFIMMIGRM™の楽曲について「頭のメロディが気に入ったので部分的に使おうと思った」とコメント。生成したメロディを歌メロに使おうとしたが、規則性がないためアレンジして使い回すことを選択したという。コード進行はオリジナルで作っていったものの、そこまで手間を感じなかったようで、「メロディが最初から作られているので、イチから作らなくていいのが手軽だった。普段でも使ってみようと思った」と、導入に前向きな姿勢をみせた。

3番手の米澤森人は「Singer」の「Simple」で生成したメロディを選択。理由については「シティっぽい方向に行く人が多いかなとおもったので、武蔵野っぽい感じを出してみようと思った」と個性的なコメント。「コード進行がなかなか帰り道っぽいものが生成できなかったので、自分で作ってみることにした」と自分でコードを付けていった点はKangaroockと同じだ。制作を終えた感想として「最初はAIが生成した楽曲には感情がないから、人工的なものが出てくるんじゃないかという不安があったが、自分でコードを付けていくことで自分の感情に引き込めると気づいた」と、AIによって作られた楽曲の活かし方を早くも見つけた様子だった。

4番手のDADA GAUGUINは「Emotional/Bright」の「Simple」を2つ生成&使用。その音源を選んだ理由については「友達から『東京に引っ越して寂しくなって電車で号泣した』という話を聞いたのでそれをもとに作った」とコメント。基本的にはコードとメロディをA〜Bメロに使用し、そのうえで「制作途中でAとBができて、そこに引き出される形でサビはゼロから作った」と語るなど、AIの楽曲がサビを呼んだ形で制作したという。また、感想としては「自分の手ぐせが抜けた。いつもは2日くらいでここまで仕上げているものが3時間でできた。コード感がある程度あって自分がやるよりも曲っぽいものにすぐになったなと思った」と、作曲するうえでの大幅時短になったことを明かした。

5番手のSuhmは、「Pops」や「Techno」の「Simple」を選択。「テーマが『TOKYO』だったので、それならYMOでしょ。ならBPMは128だなと思って作り始めた」と音楽偏差値の高さを見せつけ、続いて「作っていく中でUKガラージっぽいものにしようかと思ったけど、メロっぽいものをリフにしたり、リフっぽいものをメロにしたり、必ずしも出てくるものをそのまま使う訳ではなかった」と、自分のなかで用途を変えて使うこともAIが生成した楽曲の活かし方であることを、音楽をもって証明してくれた。

6番手のkijinはサンプリングの元として「Pop/Dark」の「Simple」を選択。「最初にあるデータからコードだけを抜いてサンプラーに入れて、コードを2個ずつパッドに入れて音程も操作して音感もローファイっぽい感じに変えて、前半と後半でコードの順番を変えたり抑揚をつける形にした」と、HIPHOPならではの活かし方を選んだようだ。作ってみた感想としては「元々打ち込みとサンプリングを使うが、いつもクセの強いサンプルを使うことが多い。生成したサンプルの中にはいい意味で変な物が入っているので、そういう意味では使いやすいと思った」と話すなど、“著作権に引っかからない自分からは出てこないサンプリングのネタ”という活かし方があることを教えてくれた。

ラストを飾ったNight to Lieは「Emotional/Dark」の「Simple」を選択。「とりあえずコード進行をほぼほぼ使ってみて、自分好みの雰囲気にアレンジしていった」と語るなど、こちらはコードを活かす形での活用を見出したようだ。FIMMIGRM™で楽曲を生成したことについては「無限に出せるという気楽さと、思った以上にクオリティの高い物が生成されるのだと感じた」と話したうえで、「最初は手助けになってくれれば良いなと思っていたが、予想以上に自分のためになった」と、想像以上のポテンシャルに良い意味で裏切られたようだ。

彼らの発表を受け、最後に登壇者からコメントが寄せられた。

中村は「普段から音楽作家や作曲のワークショップにお邪魔することもあるが、これだけ多様なジャンルの人が一つのテーマで、しかも省スペースかつ3時間という短時間で作るというのは良い意味でなかなかないし、制作した楽曲も個性豊かですごく面白かった。自分になかったものと自分の中に元々あるものを組み合わせて、自分のちょっと延長線上にある新しいものを作る、というのは、AIと自分の共同制作として今後も使えると思う。他の発表者のものを見て『こういう使い方もあったか』と気づいたものもあったはずなので、ここにいる方も、この発表を見て曲作りをする方も、AIと自分の共作でしか生み出せないヒット曲を作り出して欲しい」とコメント。

柴崎氏は「今回はみなさんに学びがあったのなら嬉しいが、それ以上に我々がフィードバックをうけて勉強させていただいたと思います。AIで楽曲を作る未来が来たとしても、それを作り手のインスピレーションが超えていく、切磋琢磨していくというのが音楽カルチャーのすごいところだなと感じました。音楽家の地位を向上させるというFIMMIGRM™の見立ては正しいのだと改めて実感したし、我々もみなさんをサポートできるように今後も頑張っていきたいです」と熱く語った。

梶原氏は「見ていると結構早めに仕上げている方も多かった。よく『AIは音楽家の仕事を奪う』なんて言われるんですが、音楽の進化って基本的にツールの進化に紐づいているので、ピアノができて楽譜ができて、レコードができてサンプラーができて、MIDIがあってシンセサイザーができてという歴史がある。ツールが制約を生んで、制約のなかで生まれた音楽が新たな時代を生むわけです。世の中の音楽が好きな人たちが、ピアノやギターを弾けなくてもよりかっこいいものを作れると楽しい世界になるし、弾ける人たちがもっとかっこいい音楽を作れる世界になると良いなと思う」と、興奮気味に話してくれた。

また、吉田氏は「最近のAIのトレンドとして一番効率の良い使い方は“副操縦士的に使う”ということ。そういった意味で今回は楽曲制作をする側ーー機長としてのレベルの高さも感じた。チョップや逆再生など、確かにそういう使い方もあるのか」と、驚きを隠せない様子だった。

FIMMIGRM™は今後もさまざまなアップデートをしながら、作曲家の地位をより向上させるサービスとしてアップデートを続けていく予定だ。今回のワークショップイベント開催をきっかけに、現在EggsではFIMMIGRM™の半年間無料クーポンプレゼントキャンペーンを5月31日まで期間限定で実施している。この機会にぜひクーポンをゲットしてみては。特設ページでは気鋭のアーティスト7組による完成楽曲が公開されているので合わせてぜひチェックを。

□ 特設ページリンク
https://eggs.mu/music/project/fimmigrm