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THE BEATLES「A HARD DAY'S NIGHT」が世界初最高画質の4K Ultra HDブルーレイでリリース決定!

November 16, 2020 06:00

The Beatles

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THE BEATLES「A HARD DAY'S NIGHT」が世界初最高画質の4K Ultra HDブルーレイでリリース決定!

ザ・ビートルズの原点であり、その魅力が爆発した初主演映画『ハード・デイズ・ナイト』が、2021年 “ゲット・バック・イヤー”に最高品質で蘇る!57年前の作品でありながら、全く色あせない傑作が、より鮮明に、よりリアルに、最新仕様“4KUltra HDブルーレイ”でのパッケージ・リリースが2021年1月30日に決定した。

最高画質の4K Ultra ブルーレイには、作品の魅力を余すことなく解説した「ハード・デイズ・ナイト読本」(監修:藤本国彦/ザ・ビートルズ研究家)とレア写真と貴重なメモラビリアを掲載したミニ写真集の2冊が同梱される。その他通常盤ブルーレイ仕様、DVD仕様の全3形態でラインナップされる。

映画『ハード・デイズ・ナイト』の日本公開は1964年8月。邦題は、『ビートルズがやって来るヤァ!ヤァ!ヤァ!』。上映館内では絶叫が飛び交い、スクリーンの4人に突進して、スクリーンが破られたというエピソードも残されているほどの熱狂ぶりでした。撮影当時メンバー全員は20代前半という若さで、その爆発するような躍動感と珠玉のビートルズ・ナンバーは全く色褪せることなく、何度繰り返し見ても、新たな感動を覚える不朽の名作は2021年1月30日にリリースされる。
 

ビートルズ初主演映画作品『ハード・デイズ・ナイト』とは?

ビートルズ研究家:藤本国彦

“音楽映画”と一括りに言っても、古典的名作『サウンド・オブ・ミュージック』(1965)や近年の『ボヘミアン・ラプソディ』(2018年)など、ライヴ・ドキュメンタリーや伝記、ミュージカル、アニメをはじめ、幅は広く、内容も多彩だ。

ビートルズ登場以前のロックンロール全盛期の音楽映画に限ってみても、当時のヒット曲を主題歌や挿入歌に使った映画は数多い。中でも、ビル・ヘイリーと彼のコメッツによる主題歌「ロック・アラウンド・ザ・クロック」が流れる『暴力教室』(55年/アメリカ)や、ジョン・レノンとポール・マッカ―トニーがリヴァプールで観て衝撃を受けたという『女はそれを我慢できない』(56年/アメリカ)などが有名だ。そうした時代の流れに乗って音楽映画の一時代を築いたのは、エルヴィス・プレスリーだった。とりわけ初の主演作となった『やさしく愛して』(56年)から『さまよう青春』(57年)、『監獄ロック』(57年)までの3作が、同時代のティーンエイジャーに与えた衝撃は計り知れない。イギリスでの音楽映画では、“イギリスのプレスリー”と言われたクリフ・リチャード主演の『若さでぶつかれ!』(63年)がプレスリーの諸作と同一線上にある映画と言えるが、いずれも、映画の中で演技するロック・スター的存在でしかなかった。

当時の音楽映画に新しい息吹を送り込んだのもビートルズだった。その初っ端となったのが、64年に制作・公開された初の主演映画『ハード・デイズ・ナイト』(当時の邦題は『ビートルズがやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ!』)である。当時のビートルズは、前年の63年に発売された4枚のシングル「プリーズ・プリーズ・ミー」「フロム・ミー・トゥ・ユー」「シー・ラヴズ・ユー」「抱きしめたい」がすべてチャート1位を記録し、イギリスでの“アイドル人気”は頂点に達していた。

そして、彼らは売れると確信した大手キャピトルがビートルズと契約。アメリカでのいわばメジャー第1弾シングルには「抱きしめたい」が選ばれた。その裏には、マネージャー、ブライアン・エプスタインの粘り強い交渉があった。ビートルズの人気が不動のものとなったことを確信したエプスタインは、63年10月29日、アメリカの映画会社ユナイテッド・アーティスツとの間にビートルズの初の主演映画の出演契約を結ぶ。さらにキャピトルによる「抱きしめたい」の強力な宣伝活動の確約を取り付けるために11月6日に渡米。“アメリカで最も有名なテレビ番組”といわれた『エド・サリヴァン・ショー』の司会者エド・サリヴァンと会い、64年2月にビートルズを同番組への出演を決めたのだ。

64年2月7日、上昇気流に乗った“ファブ・フォー”(イカした4人組) は、ニューヨークのジョン・F・ケネディ空港に降り立つ。2月9日の『エド・サリヴァン・ショー』では、スタジオの観客数728人に対しチケットの申し込みは6万通を超え、この“歴史的瞬間”をアメリカ全土の2324万世帯、7300万人が観たという。しかも72%という全米史上最高の視聴率を記録し、ビートルズが出演していた間、ニューヨークの犯罪発生件数は過去50年間で最低だったというエピソードまで残されている。

映画『ハード・デイズ・ナイト』は、アメリカでビートルズ旋風が吹き荒れた直後(3月2日から4月24日)に、彼らの同名のサード・アルバムのレコーディングと並行して撮影が行なわれた。まさに、これから世界へと人気が広がるその最初の時期に制作された映画だったわけだ。制作に関しては、50年代半ばにイギリスに移住したアメリカ人のリチャード・レスターがアメリカ人のプロデューサー、ウォルター・シェンソンの依頼で監督を務め、脚本はリヴァプール出身のアラン・オーウェンが手掛けた。リンゴ・スターはこの作品を契機に俳優活動へと興味の幅を広げ、ジョージ・ハリスンは撮影時に出会ったパティ・ボイドと66年1月に結婚するなど、2人にとって特に思い出深い作品となった。

とはいえ、もちろん彼らが人前で演技をするのは初めてのことだった。だが、「役者じゃないので、演技についてはよくわからなかった」(ポール)からこそ、日常そのままの4人のありのままの1日が生き生きと描かれた作品に仕上がったのだ。生身で自然体の4人の躍動感が全編通して伝わってくるのが、何より素晴らしい。ビートルズの日常をセミ・ドキュメンタリー風に仕上げた初の主演映画が、それ以前の音楽映画と一線を画すのはそこだ。また、売れていようがいまいが、従来の“音楽アイドル映画”には出ないという確固たる思いが彼らにはあったという。

それにしても、まだアルバムを2枚しか発売していないイギリスの新人の主演映画が制作されるというのだから、それが決まっただけでもすごいことだ。だが、ビートルズの底知れぬ魅力は、音楽だけでなく、映画制作でも存分に発揮された。幸い、監督のリチャード・レスターは、彼らの魅力を肌で理解していた。レスターはこんなふうに言っている。

「映画はその時代を映す鏡なんだ。僕の前には、映すのにもってこいの素晴らしいイメージがあった。彼らのエネルギーと独創性だ」。

イギリスならではの風刺・諧謔・ユーモアをまぶした内容は、リヴァプール出身のアラン・オーウェンによる脚本が冴えていたからだが、特にジョンが随所で見せたというアドリブによる当意即妙な返しも効いている。

何より、インターネットで気軽に動画を楽しめるような時代ではなく、情報すら伝わるのが遅い64年当時、「動く生身の4人」を観られた衝撃がどれほど大きかったか。たとえばそれは、スクリーンに飛び込もうとするファンが続出したというエピソードからも伝わってくる。『ハード・デイズ・ナイト』は、そうしたい衝動に駆られるほどの躍動感や瑞々しさがたっぷり詰まった映画だ。4人のかっこよさやかわいさに痺れてしまったら、もうそこからは抜け出せなくなる。この初の主演映画を観て、人生がビートルズ中心に回り始めた人々が世界中にどれだけたくさんいただろう。

あれから57年。奇しくも新作映画『ザ・ビートルズ:ゲット・バック』公開年に『ハード・デイズ・ナイト』も新装発売されることになった。新作映画公開を機に、若いビートルズ・ファンがさらに増えれば、それ以上の喜びはない。60年代に衝撃を受けてビートルズにのめり込んだファンと同じ体験を、ぜひ味わっていただければ、と思う。

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