高橋優 15th ANNIVERSARY SPECIAL LIVE TOUR 2025-2026「自由たる覚悟、然として奏ず」追加公演ツアーファイナルライブレポート!
August 9, 2026 18:00
高橋優
「今日、何をしても良いよ!と言われたらあなたなら何をしますか?」
ライブ中のMCで、更にライブ終了後、スクリーンに映し出された手書きの文字が観客へそう問いかける。そして高橋優は「ぼくは真っ先に曲を書いて唄います。」と言う。7月31日(金)、東京・日本武道館にて開催された、“高橋優 15th ANNIVERSARY SPECIAL LIVE TOUR 2025-2026「自由たる覚悟、然として奏ず」の追加公演となるツアーファイナルが、大団円で幕を閉じた。
昨年7月21日にメジャーデビュー15周年を迎えた高橋優。その記念ベストアルバム『自由悟然』を携えた本ツアーは、高橋の誕生日である12月26日に、故郷秋田県・あきた芸術劇場ミルハス 大ホールを皮切りにスタート。全国28か所30公演を巡り、今年7月21日にはメジャーデビュー16周年を迎えた。そんな長旅の集大成として、ここ日本武道館の地に辿り着いた。
筆者は、2026年1月9日(金)の東京公演も観させてもらった。その際も確か、SEの「幸せなら手をたたこう」で会場を盛り上げたが、ファイナルともなると仕上がりが違う。ステージのスクリーンに映し出される高橋の15年。懐かしい映像をバックに、バンドメンバー<池窪浩一(Gt)、小島剛広(B)、平畑徹也(Key)、DUTTCH(Dr)、須磨和声(Vn)>、そして高橋が登場。「ルポルタージュ」のギターカッティングに会場が沸く。ステージ前方に並んだフォグマシンが一斉に白煙を噴き上げると、オープニングから会場を大きな熱狂で包み込んだ。
“武道館でこの歌唄う〜 僕の全て♪” エレキからアコギに持ち替え「福笑い」でそう唄った高橋は、客席が明るく照らされると、まるでひとりひとりの顔を確認し、この時間を噛み締めるように会場を見回した。
「今日、自由にしていいよって言われたら何をしますか、みなさん」そうオーディエンスに問いかけた高橋は、この16年を振り返り、「曲を書いて唄う」というシンプルな答えを自身の中に持っていると語った。東日本大震災やコロナ禍など、唄うことさえ容易ではないと言われた時を経ても、高橋の唄う自由を選ぶ覚悟は揺らぐことなく、ベストアルバム『自由悟然』、そしてツアー「自由たる覚悟、然として奏ず」にその想いを刻み、今このステージに立っている。
7月28日に起きた熊本の地震を受け、アニバーサリーを祝ってよいのか考えたという高橋。しかし、こう語った。「こんな時だからこそ、歌を聴きたいと思ってくれている人がいたとしたなら、僕はその自由を絶対に奪ってはいけないと思いました」その言葉を、会場は静かに受け止めていた。
高橋のデビュー曲「素晴らしき日常」。そこに描かれるのは、希望と苦悩が背中合わせに存在する日常だ。胸を切り裂くような切ないヴァイオリンと、感情を吐露するような高橋の歌声が、揺らめく心の光と影を会場に響かせた。
「虹」が高校野球の応援ソング(ABC夏の高校野球応援ソング/「熱闘甲子園」テーマソング)だったのは、今から9年も前のことなのに、あの青い空と汗は未だ瑞々しく感じる。
メンバー紹介では、ほぼオフマイクでツアーの意気込みをメンバーそれぞれが叫ぶ。平畑は1986年に行われたBOØWYの初武道館公演での、氷室京介氏の「ライブハウス武道館へようこそ」という名言を叫び、ツアー各地でローカルCMを歌ってきた池窪は、東京ではローカルCMの代わりに、高橋の「TOKYO DREAM」を歌い、高橋を驚かせ、会場は大熱狂!
「それ僕の曲ですから」とツッコミを入れる高橋の言葉には大爆笑!高橋はツアーで訪れた土地の魅力を堪能するのが恒例。今回の東京では、レンタル着物で人力車に乗り、はとバス、さらには東京名物ともいえる公道カートまで体験し、街を満喫。さらに後日、メンバー全員で公道カートに乗ったというまさかの展開も明かされ、写真を交えたこのコーナーは、会場に驚きと笑いを届ける時間となった。
“人からどう見られるか”と“自分自身の本音”の間で揺れる人間の姿を、ユーモアと少しの怖さを交えて描いた「いいひと」から、会場にオーディエンスの歌声が響く「HIGH FIVE」の流れはなんとも秀逸だ。
「今日このステージに立たせていただくまでの道のりの中で、改めて自分が観てきたこと、経験してきたこと、感じたこと、僕の中にあるどんなことも全部楽曲にして皆さんに届けていこうという覚悟を決めたひとつのきっかけになった曲」
そう紹介したのは、自身がいじめを受けた体験を綴った「CANDY」。ここでの“覚悟”という言葉は、鉛のように深く重く喉元を過ぎていった。自分の存在を消そうとするかのようにそっと歌うAメロ、内側に抱えていた感情が溢れ出すようなサビ、変わらず響く強いバスドラ。そのコントラストが、この曲に込められた痛みと覚悟をより鮮明に浮かび上がらせていた。
「ロードムービー」では、ピアノの音色と共に、ステージに置かれたミラーボールが星空のように武道館へ美しい光を放つ。「CANDY」を歌い終えた高橋の瞳からは、一瞬、すべての感情を内側へ閉じ込めるような静けさが感じられ、胸を締め付けられたが「ロードムービー」では、その瞳に光が、口元に笑みが戻っており、それは高橋の道のりが再び進み始めたようにも感じられ、筆者は思わず安堵した。
「武道館という素晴らしいところで(ライブを)演らせてもらうと、やっぱり色々な人の顔が見えるんですね」この日は友人や家族、親戚も駆けつけていたようで、ギターを置いた高橋は少し照れくさそうに語り始めた。この16年の出会いを「キラキラした僕の希望」と振り返る一方で、耐え難い別れもあったという。その人たちを思い浮かべているのか、声を詰まらせながら「自分はこの世界に遅刻して生まれてきたような気持ちがあるんですよ」と続けた。
すでにルールや常識がある社会に生まれ、その中で生きながら少しずつ世界を理解していく。分からないことを優しく教えてくれる人、同じように「分からない」と寄り添ってくれる人──そんな存在に支えられてきた。しかし、その「この人がいれば大丈夫」と思えた人たちとの別れは、今も癒えていないという。
だからこそ高橋は、「歌を唄うことを選んでいるから、悲しさをそのまま唄っていこうと思いました」と静かに語り、「分かんないですよね、どうしたいか……」とぽつり。その言葉は、1万人の観客へ向けたMCというより、一人ひとりにそっと語りかけるように響いていた。「悲しいことがある人とも分かり合える瞬間があるのではないか、そういうことを思い書いた曲」そう語り届けられたのは、「勿忘草」と「黎明」。先ほどまで語られていた喪失の痛みを、そのまま音楽へと昇華していくような時間だった。
「勿忘草」でのヴァイオリンは、まるで大切な人へ想いを届ける一本の糸のように伸び、静かな余韻を残していく。そして「黎明」。夜明け前を意味するそのタイトルどおり、悲しみを抱えたままでも、その先にある光を信じようとする意志が感じられた。バンドも過度に感情を煽ることはなく、高橋の言葉と歌声にそっと寄り添う演奏を紡ぐ。その音像は、目の前からいなくなった人への想いを抱えながら、今も悲しみを抱える誰かへ寄り添うようにも感じられた。
曲が終わり、空気を変えるようなバンドメンバーのソロ演奏にオーディエンスは歓声を上げる。
「ここから一緒にぶち上がってくれますかー!楽しもうぜ、武道館!」
ライブも終盤。「太陽と花」のイントロに更に歓声は大きくなり、ステージに立ちのぼる炎。この日、1階席の下手側にいた筆者のところにもその熱は感じた。
可愛らしい歌声からハードロックへ変貌する「リアルタイムシンガーソングライター」はやはり面白い!小島、高橋、池窪が重厚なリフに合わせ息の合ったヘッドワークを見せ「こどものうた」で、会場のボルテージも最高潮に!
パーン!と大きな音と共に、「明日はきっといい日になる」で銀テープが発射。タンバリンを持ち、ステージの端から端まで手を振り、笑顔を見せる高橋。楽しげに広がるオーディエンスのクラップと歌声。
「明日じゃないな、今日がいい日になってますね。本当にありがとうございます!」大きな拍手に包まれる中、「ライブをやっている時間が、僕にとっては大げさじゃなく、本当に人生のピークです」と語る高橋。その言葉に拍手と歓声は鳴り止まない。
今にも涙があふれそうな表情を見せながら、「拍手がやまなかったら水も飲める(笑)」と冗談交じりに背を向け、水をひと口。ライブ以外の時間は曲作りに費やし、ツアー中も変わらず制作を続けていたという。
「人間として出来てないから、色々な人から連絡が来たりLINEを返さなかったりしながらも曲を書いてました」と苦笑いを浮かべるが、それもすべてこのライブというかけがえのない時間に繋がっているからだ。「この素晴らしい時間を一緒に共有できる皆さんとの人間関係を、僕はこれからも育んでいく人生を歩いていくんだと。そういうふうに決めて、覚悟して、書いた曲があるので、今日最後にその曲を皆さんに聴いていただきたいと思います」感謝の言葉とともに、本編は「エンドロール」で締めくくられた。
「武道館何回か演ってきたけど、すごく人として立ててるっていうか(笑)」アンコールでバンドメンバーとともに再登場した高橋は、この日はシンプルに歌を届けたいという思いでステージに立っていることを明かす。そして、「それもあってか、いただくアンコールも人として向かい合えているような気がして幸せです。ありがとうございます」と、感謝の思いを口にした。そして高橋が主催する野外音楽フェス「秋田CARAVAN MUSIC FES 2026」を、9月26日(土)・27日(日)、秋田県にかほ市・象潟グラウンドにて開催することを改めてお知らせした。
そして、「例えば今日1万人ぐらいいるなら、1万色の色があっていい。あなたのその中の今何か思ったこと、感じているその正直な気持ち。それ聞こえてますか?ちゃんと耳澄ましてますか?そんな想いで書いた曲です」そう言うと、日本テレビ『ぶらり途中下車の旅』テーマソング「鐘の音が聴こえるか」を初披露。アコギのストロークと、ブルースハープがグルーヴを紡ぐ。今までの高橋の音楽の軌跡を感じさせる歌詞と、会場に広がるクラップ。その16年の歩みを刻み込むように、筆者はただただ聴き入った。
それにしてもこの日の「泣ぐ子はいねが」は、ネイティブ the 秋田弁!何を言っているか分からないほどの秋田弁(笑)だが、それも含めて最高に楽しい!ライブで披露されるのはかなり久しぶりではないだろうか。
「唄いましょう!」高橋は「現下の喝采」の途中、イヤモニを外し、人差し指を掲げそう言うと、オーディエンスの歌声が武道館に響き渡った。自分の想いをすべてオーディエンスへ届けるかのような精一杯の高橋の歌声。歓声、拍手、スクリーンに映る泣き出しそうな高橋の顔、それらが多幸感いっぱいに入り混じり、アンコールは終了した。
だが、拍手は再びアンコールを求めるクラップへと変わり、いつまでも鳴り止まない。そしてまさかのWアンコール!
「終わったってー。スタッフ、バタバタしてる(笑)」
Wアンコールで姿を現した高橋は、アコギを抱え「間違っても文句いわないでよ(笑)」と茶目っ気たっぷりにひと言。そのまま「ピーナッツ」を歌い始めると、高橋の笑顔に応えるようにオーディエンスも歌声を重ねる。その、あまりにも自然なやりとりに筆者は日本武道館という会場の広さや距離を忘れそうになるが、「人として向かい合えている」そうアンコールで言った高橋の言葉が蘇った。
こうして、“高橋優 15th ANNIVERSARY SPECIAL LIVE TOUR 2025-2026「自由たる覚悟、然として奏ず」追加公演は幕を閉じた。そこにあったのは、15年、そして16年という時間への感謝だけではない。これからも歌い続けるという覚悟、そして高橋優とオーディエンスが、“人として向かい合う”かけがえのない時間だった。
Photo:新保勇樹
Text:秋山雅美(@ps_masayan)
□ セットリスト
1. ルポルタージュ
2. 現実という名の怪物と戦う者たち
3. 福笑い
4. 未刊の行進
5. 素晴らしき日常
6. 同じ空の下
7. 虹
8. いいひと
9. HIGH FIVE
10. CANDY
11. ロードムービー
12. 勿忘草
13. 黎明
14. 太陽と花
15. 高野豆腐〜どこか遠くへ〜
16. リアルタイムシンガーソングライター
17. こどものうた
18. 明日はきっといい日になる
19. エンドロール
<ENCORE>
EN1. 鐘の音が聴こえるか
EN2. 泣ぐ⼦はいねが
EN3. 現下の喝采
ダブルEN. ピーナッツ
■ 秋田 CARAVAN MUSIC FES 2026特設サイト
https://acmf.jp/2026/
■ 高橋優 Official HP
https://www.takahashiyu.com/