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松室政哉、コラボシリーズ集大成LIVEを開催!「誰に何を言われようと、自分の信じた音楽をやる」

February 21, 2025 17:00

松室政哉

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松室政哉、コラボシリーズ集大成LIVEを開催!「誰に何を言われようと、自分の信じた音楽をやる」

2025年2月15日(土)、シンガーソングライターの松室政哉が、東京・KMAパラダイスホールにて『Matsumuro Seiya Live 2025 "LABORATORY"』を行なった。この公演は、昨年9月に松室がリリースしたコラボレーションアルバム『LABORATORY』を掲げて行われたもので、ゲストアーティストとして井上苑子、上野皓平(The Songbards)、岸本ゆめの、真行寺貴秋(BRADIO)、堂島孝平、浜端ヨウヘイ、矢井田 瞳、ヤジマレイ(ReiRay)が出演。アルバム収録曲はもちろん、この日のために用意されたコラボ曲、さらにはリリース前の新曲まで飛び出す豪華で特別な一夜となった。

まずはこの日のバンドメンバーである伊吹文裕(Dr)、目黒郁也(Ba)、外園一馬(Gt)、工藤寛丈(Key)がステージに登場。軽快なドラムに合わせてオーディエンスがクラップを始めると、サングラス姿の松室政哉と浜端ヨウヘイが姿を現し、2人のコラボ曲「Rewrite」がスタートした。浜端が〈やっと会えたね〉と伸びやかに歌い出せば、松室は客席へ向かって手を挙げる。旧友との再会を描いたこの曲は、ライヴのオープニングになんともぴったり。2人はハーモニーを重ね、間奏ではボックスステップを踏みながら、ハッピーな空間を作り上げる。演奏後、浜端がライヴの開幕を宣言すると、2人は舞台袖へ。バンドメンバーが「LABORATORY」と題したポップかつ洒脱なインスト曲をプレイし、ステージのスクリーンにはこの日出演するアーティストの名前が映し出されていく。それは映画好きな松室らしい演出が光るシーンだった。

ここからは松室をホストに、ゲストアーティストが入れ替わりで登場。2人目のゲストとしてステージに呼び込まれたのは、井上苑子だ。2人はコラボ曲の「ホットミルク feat.井上苑子」を披露。心温まるキュートなサウンドがフロアを甘く満たしていく。過去に共演経験のある2人だが、井上から「歌っているときにこっちを見てくれない」と指摘されたことがあったそうで、「今日は頑張って見た」と松室が笑いながら語る。2人は客席を交えながら談笑したあと、井上の「一縷」が届けられる。彼女自身、この曲をライヴで歌うのは人生で初めてというレアな選曲だったのだが、切なくも美しい卒業ソングで観客を深く魅了していた。

続いて登場したのは、The Songbardsの上野皓平。「今日がとにかく楽しみだった」と話す上野は、リハーサルをすべて観るだけでなく、自分の出番直前までフロアでライヴを観ていたとのこと。2人はコラボ曲である「春のうちに with The Songbards」を披露。儚くも幻想的で、清涼感のあるバンドサウンドが広がっていく中、松室と上野の美しいハーモニーが織り重なる。そのまま続けて、The Songbardsの「Inner Lights」をコラボレーション。UKロックを土台にした瑞々しいアンサンブルと、改めて抜群の相性を見せる2人の歌声がとても心地よく、フロアを優しく包み込んでいた。

次のコラボゲストは岸本ゆめの。MCでは、今回のコラボレーションが縁となり、このたび松室が岸本に楽曲提供することになったと明かすと、客席からは大きな拍手が送られる。しかも、まだレコーディングもしていないというその新曲(作詞は岸本、作曲/編曲を松室が担当)を、ここで初披露するというサプライズでオーディエンスを喜ばせていた。曲を終えると、岸本がステージセンターに移動。下手側には松室が、上手側には舞台袖から姿を現した堂島孝平がスタンバイ。3人はキメポーズを見せつけ、「ラ・タ・タ ~すべてはフィーリング~ feat.堂島孝平&岸本ゆめの」になだれ込む。クールなダンスナンバーが熱量たっぷりの演奏で繰り広げられる中、サビでは振付を踊りながら歌う岸本に合わせ、松室もダンスを披露すれば、堂島のラップも飛び出し、フロアも大盛り上がりだった。岸本が舞台袖に戻り、ステージに残った松室と堂島は過去の共演を振り返りつつ、堂島の「葛飾ラプソディー」を披露。松室が鍵盤ハーモニカでイントロのフレーズを奏でると、郷愁をくすぐるほのぼのとしたメロディとサウンドに合わせて、オーディエンスは手拍子をしたり、手を左右に振ったりと、温かな空気が場内に広がっていった。

ライヴの途中では、スケジュールの都合で参加が難しかったMORISAKI WINのコメント動画が映し出されたあと、彼とのコラボ曲「Breathing feat.MORISAKI WIN」を松室が届ける。音源から抽出したMORISAKIのボーカルと掛け合いながら、壮大なスケールを持ったスロウナンバーを柔らかくも力強く紡ぐと、松室はコメントに感謝しつつ、改めて共にステージに立てる日が来ることを願っていた。

ここからライヴは怒涛の終盤戦へ。その火付け役となったのは、BRADIOの真行寺貴秋だ。「好きに踊ってくれればいい曲です!」と繰り出されたのは、BRADIOの「Back To The Funk」。グルーヴィーなファンクナンバーでフロアが一気に華やぐ。サビでは2人でステップを踏み、真行寺が「松室政哉最高!」と歌詞を変えて叫べば、松室もフロアにマイクを向け、オーディエンスも楽しそうに飛び跳ねる。そのまま間髪あけずに、コラボ曲の「LOVEなシーン with BRADIO」へ。真行寺が先導してコール&レスポンスを繰り広げると、ラストでは2人の熱いフェイクも飛び出し、とてつもない多幸感がフロアに立ち込めていた。

コラボブロックのラストを飾ったのは、矢井田 瞳と、彼女とのコラボ曲に参加したヤジマレイ(ReiRay)。興奮が収まらずに少し息切れしている松室を気遣う矢井田と、笑顔を浮かべてフロアを盛り上げるヤジマ、そして「みなさんまだ力残ってますか!?」と叫ぶ松室は、矢井田の「My Sweet Darlin'」をコラボレーション。パワフルに突き進んでいくバンドサウンドに乗って、松室と矢井田が歌声をフロアへまっすぐに放つと、ヤジマも楽しそうにギターを奏でる。そのままコラボ曲の「Life is Beautiful feat.矢井田 瞳」を披露。爽快感のあるバンドサウンドでシンガロングを巻き起こし、アウトロではヤジマと外園がギターソロの掛け合いを繰り広げると、松室と矢井田も伸びやかな歌声を重ね合わせていた。全ゲスト登場後に「大先輩から音楽仲間からいろんな人が集まってくれて、ひとえに続けてきてよかったなと改めて感じています」と、感謝を伝える松室と豪華ゲスト陣に大きな拍手が送られていた。

見事なまでに全ゲストアーティストがそれぞれの個性と持ち味を放っていたのだが、この日のMCで、堂島孝平が松室のことを「優秀なキャッチャーみたいな感じ」と話していた。「シンガーソングライターとしてやっている自分の音楽性はあるけれど、いろんな音楽の作り方を持っているから、どんな球を投げても絶対にボールにしない。新しいストライクゾーンを作ってくれるような人だと思う」と称していたのだが、事実、彼がゲストと作り出してきたコラボ曲は、すべて異なる表情を持ったものであり、なかには普段の松室がおそらく発表しないであろう異色な楽曲もあった。それらは間違いなく彼にとって音楽的な実験でありながらも、他者との融合を楽しみ、改めて膨れ上がっていく彼の音楽愛を強く感じさせるものでもあった。

「誰に何を言われようと、自分の信じた音楽をやることがみなさんに一番楽しんでもらえるのかなと、改めて強く信じることができました。自分がいいと思う音楽を、僕だけではなく、今日出てくれたみんなも届けていくと思いますので、これからもみなさんの人生に音楽で寄り添っていくことができればと思います」(松室)

そう告げると、『LABORATORY』のオープニングナンバーでもある「星屑箱」を、本編の最後に披露。同曲は松室単独で制作されており、伴奏は鍵盤とストリングスのみで構成されていたが、ライヴアレンジが施されていて、バンドメンバーが彼の思いを強烈に増幅させていく。そんな熱のこもった演奏を受けた松室は、エモーショナルなフェイクを響き渡らせていた。

アンコールに応えて届けられたのは、「フレンチブルドッグ」。フォーキーかつハートウォーミングなこの曲は、かねてより松室がライヴで披露し、音源化が熱望されていたミディアムナンバーだ。そして、「最後にもう一曲だけやらせてください! みなさんに幸あれ!」と、4月2日に配信される「人生はロマネスクさ」をリリースに先駆けて披露し、スペシャルな一夜を締め括った。

松室政哉は、4月から全国27ヶ所を廻るツアー「Matsumuro Seiya Acoustic Live "cafe de MURO"」を開催。特別な一夜で受けた刺激を胸に、全国各地へ自身の音楽を届けるべく、その足を踏み出していく。

Text:山口哲生
Photo:清水ケンシロウ



■ 松室政哉 HP
http://matsumuroseiya.com/

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