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JUJU、世界最大級のスナック「スナックJUJU 東京ドーム店」で名歌謡曲を熱唱!

April 20, 2024 12:00

JUJU

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JUJU、世界最大級のスナック「スナックJUJU 東京ドーム店」で名歌謡曲を熱唱!

2004年8月、「光の中へ」でデビューして以来、数多くのヒットを放ってきたJUJU。デビュー20周年となるアニバーサリーイヤーの幕開けに、JUJUととてもよく似たスナックのママが、東京ドームで盛大な一夜限りの宴「ジュジュ苑スーパーライブ スナックJUJU 東京ドーム店 ~ママがJUJU20周年を盛大にお祝い!! 一夜限りの大人の歌謡祭~」(以下、「スナックJUJU 東京ドーム店」)を催した。

「スナックJUJU」とは、ママが来客の悩みの相談などに乗りながら、その美声で昭和歌謡などの名曲をカヴァーし、ときには客とも一緒に歌って大いに盛り上がる夜の宴。今回の水道橋店が66店舗目となり、過去最大規模となる東京ドームでの一夜限りのスナック開店となった。アリーナには、円卓が並べられ、そのプラチナチケットを幸運にも入手した客をはじめ、完売したチケットを手にする誰もが、飲食も楽しみながらママの歌声に酔いしれることもできるという趣向だ。

リラックスしたムードが漂う中、5万人の視線が注がれ、主役であるママの登場を待ちわびていた。すると、そこへボーイの神尾晋一郎が「ママからは神ちゃんと呼ばれています。スナックJUJUへ、ようこそ。これからの時間にゆっくり酔いしれて」とアナウンス。その声に導かれるように、特大のシャンデリアが煌めき、バイオレットのカーテンが幕を開けると、床を蹴るピンヒールの音が会場内に響き渡った。さあ、いよいよ宴の始まりだ。大きな歓声と拍手に迎えられたママは、夜の蝶よろしく銀色のまばゆい衣装を翻しながら、梓みちよのヒット曲で、スナックJUJUの開店ソングともいえる「二人でお酒を」を艶っぽく歌い始めた。軽快さと涙もろさが入り混じる「メモリーグラス」(堀江淳)や、ホーンセクションのゴージャスな音色に心躍る「じれったい」(安全地帯)では、目くるめくライトに強く抱かれるように、情熱的な思いを高らかに歌い上げた。

「お忙しい中、こんなにもたくさんの方が水道橋店まで足をお運びいただきありがとうございます。当店のママでございます」と、ここでママ自らがお客様へ挨拶し、「私一人では何もできませんので、流しのみんなを招集しました」と、バンドメンバーをさりげなく紹介した。ママは親愛の情を込めて“流し”と呼んだが、この日招集されたバンドはなんとも豪華なものだった。ギターでバンドマスターを務める石成正人は、平井堅が日本人として初めてニューヨークのMTV StudioでUnplugged LIVEを披露した際にギターを奏でていた人物で、10年以上もJUJUのライブを支える中心的存在だ。ほかにも、バンドセクションやピアノのほか、ストリングス、ホーンセクションも加え、実に14名がステージの上で生の演奏を奏で、それに呼応するかのようにママの歌声がより魅力を増すさまは、まことに贅沢な音楽体験と言えよう。

ちなみに、最初のMCで「私は、JUJUさんとは全く別人です」と念を押すなど、徹底している。こうした“お約束”を楽しめるのもまた、大人の空間であるスナックならではの面白みかもしれない。

「スナックではいろんなことが起こります。皆さんと一緒に旅に出たいと思います」とママが告げると、風の音が東京ドームに吹きわたり、瞬く間に異国へと誘われていった。地中海を見晴らしながら狂おしい愛を抱きしめるように歌う「桃色吐息」(髙橋真梨子)の世界の後には、緊張感を携えたストリングスが印象的なイントロを奏でた「異邦人」(久保田早紀<現・久米小百合>)。一気にエキゾチックな異世界へ、哀愁と諦めにも似た切ない思いを繊細に歌い届けた。

そうした余韻に浸っていると、再びボーイの神尾が「お店が広すぎるので早いうちに…」とママを促した。これは、観客とのデュエット・コーナーで一緒に歌う曲とパートナーを決める抽選会をやろうという合図だ。デュエット・コーナーは、2008年からスタートしたカヴァーライブ「ジュジュ苑」から始まった人気コーナー。スナックJUJUでは、2016年の国立代々木競技場(第1号店)を開いてから、毎回欠かさずにこのコーナーを設けてきた。こうした遊び心溢れる交流もまた、スナックJUJUが愛されるゆえんだろう。

続く、恋の歌セクションでは、いよいよスーパーゲストの登場だ。トップバッターは、自他ともに認める“ラヴソングの王様”、鈴木雅之である。入り乱れるレーザー光線にも負けない、煌びやかな存在感で来店すると、場内からは大歓声が沸き起こった。自身がラッツ&スター時代に大ヒットさせた「め組のひと」では、5万人が揃って「めッ!」のポーズを決め、大いに盛り上がった。実は、鈴木は先述の第1号店に来店した大切な常連でもある。「よかったら一緒に歌って」と誘われるままに、「ロンリー・チャップリン」(鈴木聖美 withラッツ&スター)では2人の艶やかな声を重ね、美しく響かせ合った。

中盤で、「大人の恋には悩みがつきもの」とつぶやいたママ。「私はピアノ」(サザンオールスターズ)や「恋におちて -Fall in Love-」(小林明子)を、バーカウンターのスツールに腰掛けながらしっとりと歌った。大人のままならない恋に、心揺れながらも焦がれてしまう女性の心情を見事に歌いきり、来場者もその歌声に聞き惚れていた。

すると、ここでママとのデュエット権を獲得したchiakiさんが来店し、ママと「ラヴ・イズ・オーヴァー」(欧陽菲菲)を堂々と歌い上げた。ママから大きなハグとスペシャルなお土産を手渡されると、会場からは温かな拍手が湧き起こった。

ウォームな光景にほっこりしたのもつかの間、「ジュジュ苑」恒例の「今月のユーミン」へ。2022年に、JUJUは松任谷正隆・松任谷由実の両氏がプロデュースしたアルバム「ユーミンをめぐる物語」をリリースし、同年10月10日(JUJUの日)開催の、「不思議の国のジュジュ苑 -ユーミンをめぐる物語- JUJUの日スペシャル」にはユーミン自身も出演し、話題となった。「夕暮れ時にはこの歌かな...」と、ママが小さくつぶやくと、荘厳なパイプオルガンの音が響き渡り、荒井由実時代の最後のシングル曲「翳りゆく部屋」を、静けさを携えながら歌い始めた。スモークが立ち込める中、真っ白な光に浮かび上がるママの姿は、どこか神々しくすら見え、叙情的かつ凛としたヴォイスで、言葉の一つ一つを丹念に紡ぐように歌ったその声は、心の奥にまで染み渡るようだった。

後半戦を告げる、2組目のスーパーゲストは、NOKKOだった。ジェンダーレスなかっこよさと、少女のようなチャーミングさが同居する、この稀有なボーカリストをJUJUは敬愛してやまない。「フレンズ」(REBECCA)の青くピュアな世界から、マジカルなリズムと妖艶さに心惹かれる「RASPBERRY DREAM」(REBECCA)で魅せた圧倒的な歌力に、5万人の心はわしづかみにされたに違いない。「何かあったときに、この曲を聴いて励まされた」と、ママが紹介したのは、壮大なバラード「Maybe Tomorrow」(REBECCA)だ。アーシーで力強いビートに導かれながら、互いを慈しみ合うように2人が歌声を重ねていく光景は、感動的なものだった。

美しい交流に心洗われた後は、ママが来客たちをもてなす時間だ。衣装をたなびかせながらトロッコでドームを練り歩き、客のお悩みに答えるというサービスタイムである。ウイットに富んだママのアドバイスに耳を傾けていると、いつしかサブステージに到着。そこでは、小編成のバンドによるアコースティックなサウンドで、「なごり雪」(かぐや姫)や「いとしのエリー」(サザンオールスターズ)を、あたかも陽だまりのような温かさで歌い届けた。こうしたそれぞれの人生のシーンに、そっと寄り添い、彩を添える歌を届けてきたからこそ、20年の長きにわたって多くの音楽ファンから愛されてきたのだろう。

ここからは、いよいよラストスパートだ。トロッコに再び乗り込みながら、セクシーな吐息交じりに歌った「伊勢佐木町ブルース」(青江三奈)や、「どうにもとまらない」(山本リンダ)では、ダンスで美脚を惜しげもなく披露しながら激しく情熱的な歌声で来客を魅了した。

熱狂が頂点に達したとき、会場はにわかに闇に包まれる。その次の瞬間、ピンスポットに浮かびあがったのは、ピアノの前に座る小田和正の姿で、その来店にドーム中がどよめいた。「言葉にできない」の弾き語りが始まると、いつしかその傍らにはママが佇んでいた。歌詞の一節である、“あなたに会えて ほんとうによかった”のフレーズを歌ったママの心も、その言葉通りだったことだろう。音楽が止むと、小田に向かって「はじめまして。スナックJUJUへ、ようこそ。スナックはあまり来ませんか?」とママが声をかけた。すると、少しぶっきらぼうに「行かないです」と即答し、小さな声で「(ママの服装がセクシーで)目のやり場に困る…」とつぶやいた小田。そんなところに、彼の人柄がにじみ出ていてなんとも心温まるシーンだった。ただ、再び音が鳴ってしまえばがらりと変わる。小田は、「皆さんも参加してくれたらうれしいです」と声をかけ、「Yes-No」で合唱。あの不朽のギターイントロが轟き「ラブ・ストーリーは突然に」へとなだれ込むと、観客のボルテージは急上昇した。甘美なラブソングをデュエットしながら、最後には仲良く腕を組んだ小田とママ。それもまた、スナック感が満載で楽しい一幕だった。

本編ラストは、「あゝ無情」(アン・ルイス)から始まる昭和のヒット歌謡メドレーだ。ダンサーたちを従えて、身をひるがえしながら踊り、熱唱するママに誘われて、来客も身振り手振りを交えながらヒットソングを楽しく歌い合う…。その多幸感に溢れた光景は、どこか幻影のようでもあり、だからこそいっそう儚く美しく輝いて見えた。

「そろそろ閉店です。一生忘れません」の言葉を残して、「スナックJUJU」東京ドーム店を閉じたママ。しかし、その熱はいつまでも冷めることはなかった。すると、「ママの代わりに、あの人が来てくれました」というアナウンスが流れ…。ど派手なレーザー光線を背に、ゴールドのミニドレスを身に纏ったJUJUが降臨したではないか! スリリングな新曲「一線」を、オーディエンスに贈ったのだった。「さっき、ママとすれ違いました。ママを忘れてJUJUと遊びましょう」と呼びかけ、JUJUのヒットソングを盛り込んだメドレーへとなだれ込んだ。リズミカルでダンサブルな「What You Want」や、胸が締め付けられるように切ない「明日がくるなら」、背徳感と悲哀を漂わせる「この夜を止めてよ」など、さまざまなグラデーションを備えた楽曲を、JUJUはその世界観を映し出しながら歌い分けることができる秀出のシンガーだと改めて驚かされた。

「この曲はぜひ、みなさんと一緒に」とリクエストしたのは、「やさしさで溢れるように」であった。人生を彩る歌を歌い届けてきたJUJUというアーティストの、人への深い思いやりや、愛、願いが、この曲には詰まっているだろう。彼女の想いを受け止めるように、5万人の観客が声を合わせて合唱した大団円は、まるで奇跡のようだった。

ママやJUJUの表情豊かな歌声や艶やかなダンス、楽しいトーク、そしてスーパーゲストとのデュエットなど、「スナックJUJU」は魅力がぎゅっと詰め込まれている。同時に、匠たちが奏でる豊潤なサウンドや、躍動するダンサーの演舞、曲の世界観に合わせて壮大なスケールで表情を変えていく照明やセットも圧巻だ。

この一夜限りの奇跡のような時間を、鮮やかな映像とクリアな音で体感できる幸運をぜひとも逃さないで欲しいものだ。

文:橘川有子
写真: Michiko Kiseki(KISEKI inck)、Chie Kato(CAPS)、Kayoko Yamamoto

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