POPSCENE - ポップシーン
POPSCENE - ポップシーン

山本彩「Sayaka Yamamoto Hall Tour 2024 -RGB-」NHKホール公演をレポート!

March 25, 2024 10:30

山本彩

0
シェア LINE
山本彩「Sayaka Yamamoto Hall Tour 2024 -RGB-」NHKホール公演をレポート!

山本彩のホールツアー「Sayaka Yamamoto Hall Tour 2024 -RGB- supported by メメントモリ」が、3月23日の東京・NHKホール公演でファイナルを迎えた。山本がNHKホールのステージに立つのは2020年の「山本彩 LIVE TOUR 2020 -α-」以来、4年ぶり。同ツアーは序盤のNHKホール以降の公演がコロナ禍の影響ですべて中止となってしまったため、声出しが可能になった万全の状態で挑む今回のライブには並々ならぬ強い思いがあったことは想像に難くない。客席を埋め尽くした多くのファンもまた、この日に向けた大きな期待を目に見えるほどの熱気として開演前の会場に充満させていた。

「何かをしようとすることもしんどかった」
「好きだったことも楽しめなかった」
「なんでやってんねやろ。もういいか、とか」
「とにかくこの気持ちから解放されたい」

そんな自身の中に潜んでいた負の感情を吐露するオープニングVTRを経て、ライブは1曲目「劣等感」で幕を開けた。コロナ禍の最中に活動休止した2021年から2022年の自身の状態をあらためてなぞるような冒頭の流れは、その場所からしっかりと脱したこと、そしてネガティブなことさえも音楽として表現できるようになった強さをあらためてオーディエンスに提示するものだった。力強くアコギをかき鳴らしながら自身の“劣等感”を高らかに響かせる山本の歌声は、一抹の不安も感じさせない決意に満ち溢れ、NHKホールの空間を支配していく。その勢いのまま「東京行くぞ!」の煽りに歓声が激しく鳴り響く中、「TRUE BLUE」「Are you ready?」とパワフルなロックナンバーを連発し、テンションを無尽蔵に高めていく。

「NHKホールは“αツアー”ぶりなんで、また帰ってこられてライブができることがすごく嬉しいですし、本日はソールドアウトということで。ありがとうございます。今日はここを世界で一番熱い場所にしましょう!」

小名川高弘(Key,G)、草刈浩司(G)、奥野翔太(B)、SATOKO(Dr)、Ayasa(Vn)、asami(Cho)という山本彩のライブを支えるバンド“チームSY”の面々が生み出す圧巻の演奏をバックに、「棘」では赤いレーザーが飛び交う照明演出と山本の歌声がクールな世界観をより深みをもって伝えていく。Ayasaによるバイオリンの調べからスタートした「unreachable」ではハンドマイクを使って切ない感情を表現力豊かに届けていった。

4人のダンサーとともに卓越したダンススキルをアピールするインストパートに導かれるように、次のゾーンでは“踊る山本彩”がステージを彩っていく。この2月からスタートした3カ月連続配信リリースの第1弾楽曲となるダンスチューン「Nocturnal」では、自身が手がけた、シンデレラをモチーフとするような歌詞をしなやかな歌とダンスで表現し尽くす。続くミディアムメロウな「feel the night」ではイスを使ったパフォーマンスでそこに込められたストーリーを繊細に披露していく。その後は、キャッチーなサビで観客がハンズアップした手が優しく揺れるピースフルな光景を生み出した「彼女になりたい」や、途中から客席に降りて歌うサプライズに大合唱が巻き起こった「Weeeekend☆」と、客席との距離を一気に縮める楽曲が続く。そして「ぼくはおもちゃ」ではライブ開催前にSNS上で公開されていた振り付けをその場にいる全員が一緒に楽しみ、最高の一体感を作り上げていった。

ゲームをする山本が画面の中に吸い込まれていく映像に導かれて歌われたのは、人気RPG「メメントモリ」に登場する少女・ロザリーのために作られた「ラメント」。ストリングスのカルテットと共に披露されたその幻想的で壮大な世界観は、山本の表現力の豊かさをあらためて伝えてくれるものだった。さらに、「メメントモリ」との2度目のコラボとして書き下ろされたというできたてホヤホヤの新曲「残影」が初披露されるサプライズも。バンドマスターである小名川が手がけたというアレンジが、山本の新たな可能性を感じさせるふくよかで情感に満ちた歌声を引き出していたのが印象的だった。

バンドメンバーとの和気あいあいとしたやり取りを交えたMCに続き、ストリングスカルテットと山本の弾くアコギのみで歌われたのは「愛なんていらない」。シンプルで美しい音像の中で響く繊細で柔らかな歌声に観客たちは息を呑んで聴き入る。続く「夢の声」ではカルテットの演奏だけで歌われた後、2コーラス目からはチームSYが加わり、広がりのある世界が表現されていった。

「まだまだ行けますかー!」という一言をきっかけにライブは後半戦に突入。観客のジャンプでフロアが大きく揺れた「Bring it on」、「逆風蹴散らして」という強いフレーズが聴き手の心を揺さぶるファイトソング「against」、爽快なサウンドに合わせてタオルが大きな風を巻き起こした「Let’s go Crazy」を連投。そして、「ラストは公式の乾杯をしましょうか。愛を込めて」という一言に続き、本編ラストソングとなる「ドラマチックに乾杯」へ。ステージ上のミラーボールが拡散する無数の光の粒が降り注ぐ中、メランコリックな心情を笑い飛ばして生きる決意を高らかに歌い、多幸感に満ちたエンディングを迎えた。

アンコールでは、4月4日から放送されるTVアニメ「魔王の俺が奴隷エルフを嫁にしたんだが、どう愛でればいい?」のエンディングテーマであり、3カ月連続配信リリース第2弾として3月27日に発表される新曲「ブルースター」を一足先に届ける。オーラスは「レインボーローズ」を、ファンへの感謝と愛情を込めてプレイ。両手を広げ、客席に向けて放たれた「君に笑っていて欲しいから 僕は歌おう」というフレーズを、その場にいるすべてのファンたちが大切に受け取る。最後に満面の笑みを浮かべた山本の「最高の時間をありがとうございました!」という叫びを合図に、この日のライブ、そしてツアーは大団円を迎えたのだった。

ネガティブな感情さえもさらけ出しながら、一方では前向きな感情で聴き手の心に寄り添い力強く鼓舞する。アグレッシブなギターサウンドの中でロックな表情を見せたかと思えば、ダンサブルなナンバーではクールなダンスを披露。ストリングスカルテットを率いたシーンでは聴き手の心に染みわたる極上の歌心を響かせ、柔らかな笑顔を見せるポップな表現も持つ。ロックをルーツとしながらもジャンルレスに活動を続けてきた山本彩の魅力は、タイトルに掲げられた光の三原色“RGB”のように、自身の持ついくつもの色が重なり合いながら生まれていく無限の表現力にこそある――様々なチャレンジを盛り込んだというこの日のライブからは、そんなことを強く感じた。

「まどめ」主題歌となる「ブルースター」に続き、4月7日から放送されるTVアニメ「シンカリオン チェンジ ザ ワールド」のエンディング主題歌を担当することも決定。さらに5月からは広州、上海、台北を巡る「Sayaka Yamamoto Asia Tour 2024 -彩-」もスタートする。これからも“シンカ”し続けていく山本彩が見せる次なる色が楽しみだ。 

written by もりひでゆき
photo by Manabu Numata



■ 山本彩 Official Web Site
http://yamamotosayaka.jp/

Related Images