POPSCENE - ポップシーン
POPSCENE - ポップシーン

WEAVER、地元神戸で約19年の活動に終止符「出会ってくれて本当にありがとう」

March 2, 2023 20:00

WEAVER

0
シェア LINE
WEAVER、地元神戸で約19年の活動に終止符「出会ってくれて本当にありがとう」

WEAVERのラストライブ『WEAVER LAST LIVE「Piano Trio 〜2004→2023〜」』兵庫公演が、2月26日に兵庫・神戸国際会館こくさいホールで開催された。

2004年に高校の同級生同士で結成され、2009年にメジャーデビューを果たしたWEAVERは、昨今のコロナ禍の影響で自らと向き合う時間が増えた中、それぞれが新たな道に進むべきという結論に至り、解散を決意。当日は彼らの地元神戸に全国からファンが訪れ、開場時には同時代の音楽シーンで切磋琢磨した盟友たちの楽曲がはなむけの場を彩っていた。

暗転の後、紗幕越しに躍動感たっぷりのビートを奏でた奥野翔太(B, Cho)と河邉徹(Dr, Cho)。そして、杉本雄治(Vo, Piano)のグランドピアノの音色に導かれるように幕が上がり始まったのは、「66番目の汽車に乗って」。心底楽しそうなメンバーの表情を見れば、ラストライブが決して悲観的なものではないことは明白だ。「トキドキセカイ」では会場の隅々から手が上がる絶景を早々に作り出し、抜群のポップセンスで聴かせた「33番線」、杉本の「神戸にお集まりのBoys & Girls!」との呼び掛けにオーディエンスが飛び跳ねた「Boys & Girls」と、どれもが最後の演奏なんて信じたくない充実のパフォーマンスで魅せていく。

沸き立つ大歓声に「すごいね神戸! いい声が聴こえるわ。もうそれだけでこの日を迎えられてよかった」と感激しきりの杉本は、CSテレ朝チャンネル1で生中継を見ている視聴者を時折ねぎらいつつ、「今まででベストなライブを一緒に作っていきましょう!」と宣言。それを具現化するような切なきダンスナンバー「Another World」、美しくもはかないメロディが胸が締めつける「夢じゃないこの世界」、温かな気持ちが見る者に去来する「レイス」と畳み掛けていく。

そして、「海のある街」では、「神戸から上京して13年経つわけですけど、10代の頃は居心地が悪いなぁと思っていたんです。それから、たくさんライブをして、たくさんの人に出会って……知らないうちに、この街には大切のものが詰まっていたんだなと気付けた。今日またここでこの曲を歌えることを幸せに思います」と杉本。これまでの人生を音楽に重ね、感慨深げに歌う光景にグッと引き込まれていく。

MCでは、「神戸国際会館こくさいホールはデビュー10周年のときにもやらせてもらったんですけど、どうしても最後にここでやりたいとお願いして」と奥野が言えば、「今日は会場の空気に言葉にならない気持ちがたくさん浮かんでいる気がして……そんな一人一人の心の力で最高のライブに、何年経ってもこの日のことを思い出すようなライブになると思ってます」と確信する河邉。そして杉本が、「人は生きていく中で、出会いと別れを繰り返していく。でも、僕たちの中には一緒に過ごした時間だったり、曲との思い出がある。ずっとずっとその記憶を大切にしていてほしい。そんな願いを込めて」と歌い上げたのは「タペストリー」。そのドラマチックなサウンドスケープに耳を奪われたかと思えば、「こっちを向いてよ」の壮大なスケールに圧倒される。WEAVERのアーカイヴスの偉大さをかみ締めるゾーンだ。

それがより顕著に感じられたのが圧巻のスペシャルメドレーで、歴代のライブ映像と共に「You」をはじめ12曲を一気に披露。杉本が「懐かしいね」とつぶやくのも納得の若かりし姿も時にスクリーンに映し出され、メンバーがお互いの髪型の変遷をいじり合うさまもほほ笑ましい限りで、WEAVERの歴史を音楽と映像の両サイドで振り返る、見応え満載のハイライトとなった。

ライブも後半戦に差し掛かり、「僕たちの音楽人生を変えてくれた大切な曲」と杉本が告げたのは、「僕らの永遠〜何度生まれ変わっても、手を繋ぎたいだけの愛だから〜」。初期の代表曲としてWEAVERを支え続けたみずみずしいポップソングが、大きなホールいっぱいに響きわたっていく。その後も「くちづけDiamond」「管制塔」と高揚感に満ちたアッパーチューンが続き、「ライブっていいね。みんなの声が聞けて幸せです」と、バンドを代表し幾度となく喜びを伝える杉本。「Free will」では、イントロのコール&レスポンスの時点で、落涙不可避のエモーションが巻き起こる。コロナ禍の断絶を超えて、今再び声という絆で深くつながり合う感動が、WEAVERの最後の日にもたらしたもの。寂しくて、でもうれしくて……この瞬間に立ち会った全ての人が思いを確かにしたのは、WEAVERと出会えて幸福だったという紛れもない事実だ。

「Don't look back」では奥野のベースソロでも見せ場を作り、「Shall we dance」では「最高だな神戸! マジで今までで一番のライブになるんちゃう?」と杉本も驚くほどの盛り上がりで、ライブはいよいよクライマックスへ。

「今日このライブで、僕たちはそれぞれの道を進んでいきます。でも、きっとまたどこかでこの音楽が、あなたの背中を押したり、未来に導いたり、そういう力になると信じています」

そんな杉本の願いを込めた「On Your Side」は、バンドが解散しても音楽はあなたの中で生き続けると約束する、エバーグリーンな一曲。本編を終え、深々と頭を下げステージを後にした3人だったが、終わるはずのない「WEAVER!」コールに応えいち早く客前へと舞い戻った杉本が、昨年4月の解散の発表から「できるだけたくさんの曲をやりたい」と思い続けていたと語る。その意志を形にしたアンコールのアコースティックメドレーでは、杉本が「僕のすべて」を歌い始めると、奥野と河邉が合流しピアノを連弾するという何ともアットホームなひとときも。計10曲にわたり優しき旋律で魅了し、3人が改めて気持ちを言葉にしていく。

「今日1曲目にやった「66番目の汽車に乗って」は、僕たちが高校生の頃に初めてレコーディングした曲でした。ここから歩いて行けるスタジオで練習して、ライブハウスでライブをして……気の合う友達とバンドができたことも幸運でしたし、さらに僕たちを見つけてくれた人がいて、メジャーデビューできました。そこでみんなと出会うことができて、一緒にいろんな景色を見て……それは僕らにとって、一生色あせない思い出です。高校生の頃に走り出した汽車は、今日この街が終着駅となってしまいますが、僕らが過ごした時間や消えることのない音楽が、みんなにとって星空のレールのように、いつまでも心を照らすものであればいいなと思っています」(河邉)

「改めていい曲だな、いいバンドだなと感じながら今日も演奏していたんですけど、気付いたらこんなにたくさんの人に愛される人生を歩めるようになりました。みんなに聴いてほしいから練習したし、挑戦したし、その繰り返しで僕たちの歴史は作られてきた。今日この場所にこんな気持ちで立てているのは、僕たちの音楽を受け取ってくれるみんながいることを信じてきたからで。僕はWEAVERは自分たちのものじゃなくて、みんなでWEAVERだと思っていて。生まれ変わっても同じ青春時代を過ごしたいと思うような、かけがえのない19年でした。みんなと過ごせて本当に幸せでした」(奥野)

「今日一日、朝からこの街の景色を見ながら、浮かんでくるのはWEAVERのことばっかりで。この19年、今思うと苦しい時期も多かったなと。でも、そんなときに励ましてくれる仲間だったり、ライブでは笑顔で迎えてくれるみんながいて、それだけが僕らの救いでした。それぐらいWEAVERに全てを懸けて今日までやってきました。だからこそ、解散を発表してから約1年、後悔のないように駆け抜けて、やれることはやり切ったんじゃないかと思えています。どの記憶を切り取ってもWEAVERの音楽がたくさん詰まっていて……音楽は消えないから、WEAVERとしてみんなと過ごした時間は一生の宝物です」(杉本)

それぞれが思いの丈を懸命に放った後の「HIKARI」に息をのみ、最後に「出会ってくれて本当にありがとう」と杉本がいざなった「Shine」。ここで、満場の客席に突如ともったスマホのライトが3人を包み込み、予期せぬサプライズに思わず杉本も声を詰まらせる……。マイクを通さずに「ありがとうございました!」と叫び舞台を降りたものの、エンディングのSEが流れても途切れることのない拍手を受け、三たび現れたWEAVER。

「ダブルアンコールありがとうございます! ズルいわもう……絶対泣かへんと言ってたのに。マジでさ、世界で一番きれいな場所はここやったわ! 今まで一緒に過ごしてきた時間を、みんなの記憶の中にしまっておいてください。絶対になくさないでください。僕たちもこの最高の景色を、ずっと心に置いておきます。最後に聴いてください!」(杉本)

バンドの原点でありデビュー曲「白朝夢」が締めくくった、WEAVERの輝ける19年。約3時間にわたるライブの中で何度も何度も感謝を述べた3人の背中を、いつまでも鳴りやまない大きな拍手が送り出した。

なお、3月28日(火)20:00~CSテレ朝チャンネル1では、この日のラストライブの模様や結成から18年間に及ぶ歴史を、メンバー3人がこれまでのライブ映像、活動年表などと共に振り返る貴重な独占インタビュー等を収録した特番をオンエア。また、ラストライブの完全映像やドキュメンタリー他を収録したBlu-ray『WEAVER LAST LIVE「Piano Trio 〜2004→2023〜」』が、3月31日(金)にリリースされる。

取材・文:奥“ボウイ”昌史
撮影:渡邉一生

Related Images

Information