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長澤知之【IN MY ROOM】有料配信ライヴ ライヴレポート

長澤知之【IN MY ROOM】有料配信ライヴ ライヴレポート

June 10, 2020 17:00

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昨年2枚のミニアルバムを発表し、異なる形態での全国ツアーの開催に加え、【FUJI ROCK FESTIVAL2019】への初参加も話題となった長澤知之。今年になり世界中が新型コロナウィルスの影響を受け、当然日本でも様々なアーティストがライヴの延期や中止を余儀なくされた。そんな中、<オーディエンスを自分の部屋に招待する>をコンセプトに2014年開催の【IN MY ROOM】が、6月5日(金)に自身初の試みとなる有料配信ライヴ【IN MY ROOM】として帰ってきた。実はこのライヴレポートを書くにあたり、当初は現場へ行く予定だったが東京の患者数が変動する中、限られた空間でソーシャルディスタンスを保つ現場を想像すれば、そこにいる人間は一人でも少ない方が良いと考え、筆者も配信を観ながら書くことを決め、パソコンのモニタで長澤の登場を待っていた。

ステージにはソファ、フロアスタンド、ちゃぶ台、数本のギター。それらを照らすイルミネーションライト。 歌詞が書かれた紙が散らかっているのも見慣れた長澤の部屋(IN MY ROOM)だ。それに満月のようなステージ中央の円形プロジェクタースクリーンを見れば、ここが彼のホームのひとつだということが分かる。配信でも変わらぬ風景に安心感を覚えた。

「ただいま〜。皆さん、いらっしゃるでしょうか?長澤知之です。」いつも通り挨拶をするも、配信ならではのタイムラグや無観客配信ライヴという初めての状況に少し戸惑いが見えた。しかしオーディエンスからのチャットが長澤を安心した表情に変える。右手を上げながら「僕の部屋へようこそ。今日はのんびり楽しんでいってください。」と笑顔で傍らにあるアコギに手を伸ばすと「片思い」でライヴはスタート。違うアングルを捉えるカメラワークは配信でしか味わえない醍醐味だ。筆者自身、弦を押さえる長澤の指をこんなに間近で観るのは初めてかもしれない。何本か立てられたマイクは、長澤の指がギターのボディにあたる音まで捉えている。うん、配信も悪くない。筆者は早速、配信ならではの面白さにワクワクしていた。「こういう形ですが、一緒に盛り上がっていけたらと思います。盛り上がろう!」

20200605INMYROOM0356.jpgTシャツで汗を拭いながらチャットに目をやり、「最近あんまりやらなかった曲を。」と右袖をたくし上げ、ギターを掻き鳴らす指は「植木鉢」を弾き出した。(余談だが長澤がそのタイトルを口にした時、嬉しさから「おお!」と声を上げ、仕事仲間を驚かせてしまった。)

「ありがとう……ありがとうございます。ありがとう…良かったよかった。」LIVE配信では、チャットのコメントを読みながらそれに対してのお礼や返事で話題を広げることが多いが、完全にコメントをくれた人と一対一になっている長澤に、かえって彼らしさを覚え微笑ましかった。
緊急事態宣言が発令された自粛期間中にやれることを増やしていったという長澤は、再び通常のライヴが出来ることを祈りつつ曲作りもしており、4月に突如SNSとYouTubeで発表した新曲「密なハコ」を披露。当たり前なことが当たり前に出来なくなっている現状を歌うこの曲。スクリーンには窓のある風景、観覧車、朝焼けが映し出された。それは息を潜ませる静寂に似ている。早く、早く当たり前と思えたことが戻ってきて欲しい。メロディに乗る思いや願い。「きっと君と会う場所は 密なハコだけど」その歌詞は、この配信ライヴを観ている人に、明日への希望として刻ま込まれたことだろう。


昨年10月にリリースされたアルバム『SLASH』のTOWER RECORDSオリジナル特典の未発表曲「老いパンク」に続き、同アルバム収録の「シュガー」へ。まるで聴き手を癒やすようにゆっくりと歌うサビは…あえて私情むき出しの発言を許してもらうとすれば、この先、100万回聴いても感動するだろう。

「今日すごく楽しみにしておりました。それであんまり寝れてないっす。寝てないんですけどアドレナリンが出てて楽しいです。」そう言いながら改めてお礼を言うと、ALのナンバー「ハンアンコタ」で温かい空気を作り、歌い終わるとチャットを観ながら「ありがとう。めげないでいこうぜ。」とつぶやく。
ここでリクエストを募ると「マカロニグラタン」「狼青年」「P.S.S.O.S.」など次々聴きたい曲がタイムラインに流れる。そんな中、何か面白いコメントがあったのか長澤は突然笑いだすと「じゃあOK。了解。」と言い、歌詞ファイルをパラパラとめくる。どうやらこの日演る予定ではなかった曲を選ぼうとするも歌詞がなかなか見つからず、ソファに置いてあった携帯に手を伸ばし、「ちょっと家に来てもらおう。……潤さん(マネージャー)“風を待つカーテン”の歌詞が欲しいです。」と急遽マネージャーへ電話。歌詞を待っている間、6月3日にデジタルリリースされたばかりの「青いギター」の話に触れた。

「密なハコ」同様、自粛期間中に制作した楽曲でMVのアニメーションは長澤自身が担当。この日は披露されなかったが、演奏やアレンジを重ね、きっと何かしらの形でまた演奏する姿を観ることが出来るだろう。ライヴハウスを“密なハコ”にするには時間がかかるかもしれない。長澤は「叶うのならば皆さんのいる街だったりライブハウスで、同じ空間で演れたらそりゃ最高ですけども、さっき(チャットにも)書かれてた、普段来れない方が観れるでしょうから、それはそれで良いことだと思っています。」と、配信ライヴの良さについても語った。
結局「風を待つカーテン」の歌詞はすぐには用意出来ず、先にセットリストとして予定していた「蜘蛛の糸」を演ることに。通常より圧倒的に人の少ないライヴハウスに響き渡る長澤の声。ふとパソコンに触れるとギターの音や声に合わせ振動しているのに気づいた。まるでライヴハウスで鞄やノートに伝わる振動のようで妙に嬉しかった。長澤はエンディングで少し口元を緩ませながら、あぐらのまま体を揺らしギターを弾いている。

「ピンポーン」曲が終わると同時にチャイムが鳴ると「おじゃましまーす。ちょっと〜、急に呼ぶからびっくりしたよ(笑)。」とマネージャーが歌詞を持って登場。(マスクと手袋着用!)改めてリクエスト曲「風を待つカーテン」へ。やはり名曲だ。
壁や殻のない、真の姿で自身のプライドを歌う「ソウルセラー」は聴くたびいつも背筋が伸びる。卑屈な自分を払拭してくれるように。

「水分補給してね……あぁ水分補給!」コメントに促されペットボトルのお茶をゴクリと一口飲むと「皆さん乾杯しましょうか。せっかくなので。」と乾杯をし、再び喉を潤した。本当はこの流れで「俺はグビ」を歌う予定だったらしいが「違う曲が歌いたくなったので。」と言いながらソファーへ移動。

20200605INMYROOM0405.jpg「三日月の誓い」が久々にセットリストへ組み込まれたことに喜び声を上げた人は少なくないだろう。大きな三日月は切ない歌詞と温かいメロディを歌う長澤をそっと照らし、優しい時間は「Close to me」へ続いた。ハンディカムのゆらぎは現場の生っぽさを強調し、大切な時間の共有を感じさせる。

ライヴも後半。「健康で、元気を持って生きていたならまた必ず会えますから。」強い意思を感じる表情でそう言うと、エレキの音色は「ゴルゴタの丘 」、そして「回送」へと繋ぎ、本編は終了。

スタッフによるアンコールの拍手が照れくさいのか、おどけた調子で再び登場した長澤。「自主アンコールです。すみません(笑)。」と笑う。しかし「最後皆さんにこの曲を捧げたいなと思います。ありがとうございました。また遊びましょう。長澤知之でした!」その挨拶にスタッフから大きく拍手が起こると、今度は素直な笑顔を見せ「あんまり素敵じゃない世界」を歌った。スクリーンには虹が映し出され、長澤は頬を紅潮させアコギのストロークを轟かせる。ここで「リズムをとり、笑顔でクラップするオーディエンスが見えた!」と言ったところで、決して「この筆者は頭がおかしくなった」とは言われないだろう。なぜならこの曲で幕を閉じた【IN MY ROOM】の無観客配信ライヴはそう感じさせてくれるものだったのだから。

Text:秋山雅美(@ps_masayan
Photo:ATSUKI IWASA


□ セットリスト

1.片思い
2.左巻きのゼンマイ
3.カスミソウ
4.植木鉢
5.捨て猫とカラス
6.密なハコ
7.老いパンク
8.シュガー
9.ハンアンコタ
10.蜘蛛の糸
11.風を待つカーテン
12.ソウルセラー
13.明日のラストナイト
14.三日月の誓い
15 Close to me
16.ゴルゴタの丘
17.回送

Encore
En1.あんまり素敵じゃない世界

※この配信はアーカイブとして6月12日(金)23:59まで視聴可能。


■ 長澤知之 オフィシャルサイト
http://www.office-augusta.com/nagasawa/

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