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長澤知之「Nagasawa Tomoyuki Band Tour 2019 'SLASH'」ライヴレポート

長澤知之「Nagasawa Tomoyuki Band Tour 2019 'SLASH'」ライヴレポート

December 19, 2019 17:30

長澤知之

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今年3月にコンセプト・アルバム『ソウルセラー』をリリースし、アルバムツアーや恒例のAugusta Campに加え、FUJI ROCK FESTIVAL'19にも出演するなど、かなり精力的な活動を見せた長澤知之。 10月2日には『ソウルセラー』の対となるコンセプトアルバム『SLASH』をリリースし、12月2日(月)大阪・umeda TRADを皮切りに、アルバムを引っさげたツアー【Nagasawa Tomoyuki Band Tour 2019 ‘SLASH’】で名古屋、福岡、仙台、東京の5都市を巡った。このアクティブな一年の締めくくりと言えようツアーファイナルの12/16(月)、東京・WWW Xでは超満員のオーディエンスを熱狂させた。

バンドメンバーの松江潤(G)、須藤俊明(Ba)、秋山隆彦(Dr)、山本健太(Key)に続き、長澤も登場。妙に可愛らしいSEは狙いだろう。 不意をつく意外性はフロアだけでなく関係者エリアさえも驚かせ、笑わせた。

「長澤知之です。よろしく!」軽く挨拶すると「世界は変わる」でライヴスタート。心地よいミディアムテンポ。松江と向かい合いプレイする長澤の笑顔。ペンを走らせながらも冒頭から楽しくて仕方ない自分がいるのに気づいた。イントロから歓声が上がったのは「誰より愛を込めて」。松江のギターソロから長澤、山本、秋山のソロへとバトンを繋ぎ、アンカーとなるオーディエンスの歌声がフロアいっぱいに響き渡る。

「素晴らしい。ありがとう!」長澤は心底楽しそうに笑った。
ジャン!と、アコギの音を整えると、ボディランゲージを交えながら軽快なタッチで「シュガー」を歌う。個人的にこの曲は、きっと一生傍らに置いておきたい曲だと感じている。特に好きなのはサビ。生で初めて聴くメロディ、大好きな歌詞、オルガンの音、長澤の歌声、どれをとっても感動しかなかった。2番のAメロがスカのリズムに変わるのも同じく好きだ。長澤は時折寝転んでプレイした。視界からその姿が消えるたび前方で大きな歓声が湧いた。続く「ソウルセラー」のサビで灯るバックライトが長澤の力強い表情を照らすと、意思を持った歌声が、より一層際立った。エレキギターのスクラッチからそれぞれの音が浮遊……「STOP THE MUSIC」だ。

nagasawa2019121906_0353.jpgロックミュージシャンとしての長澤の才能が光るこの曲に、フロアはゆっくり身を委ねる。うごめくスモーク、長澤のヴォーカルにたっぷりかかったエコー、楽曲の印象を泥臭くし過ぎないシンセの質感。心地よいダウナーな雰囲気は「死神コール」で更に熱を増す。

ここでメンバー紹介をすると「Back to the Past」では暖かく繊細なメロディで、先程と全く違う側面を見せた。

「今日はライヴに来てくれてマジでありがとう!ありがとうございます!」挨拶とともに今年二枚のアルバムをリリースしたことに触れた。口調は少し緊張しているようにも思えるが「笑う」の三拍子はオーディエンスの足をリズミカルに動かした。

長澤はギターをチューニングしながら何となくメロディを口ずさんでいる。いや、もしかしたら何となくではなく「時雨」へ入るための、ある種の精神統一のようなものかもしれない。清々しいまでに真っ直ぐさを持ったこの曲のせいだろうか。雨粒が落ちるようなピアノの美しい音と、長澤のエキセントリックなシャウトは妙に相性が良い。そのまま長澤のアコギは「金木犀」へ。金木犀を思わせるライトが、長澤とメンバーをオレンジ色に染める。風に乗って運ばれた、刹那な香りのように浮遊するシンセとエレキギターのリフに、オーディエンスはしばし耳を傾けた。

抜けるようなドラムが心地よい「90's Sky」では、もう無意識に身体がリズムを取っていた。まさに筆者が愛する90年代の軽妙さを彷彿とさせるこの曲では、やはりオーディエンスも腕を高々と上げながら楽しげにリズムを取る。そこから皮肉とユニークが混ざりあった「KYOTON」、「いつでもどうぞ」へ。サイコパスな登場人物は何度聴いても怖い!だがそれとは別に、やはり「KYOTON」のツーバスはカッコいい!

nagasawa2019121908_0190.jpg“言葉は要らない 頷いてほしい”。ミディアムなテンポに乗る「Close to me」の歌詞。戦い続けた長澤の声を愛おしく聴くオーディエンスの背中は、音楽を通じて長澤との時間を大切に噛み締めているようだった。この「Close to me」は鴻上尚史氏が作・演出を務める「地球防衛軍 苦情処理係」の劇中歌として使われており、この日もそのことに触れ、長澤はステージから「鴻上さん、ありがとうございます!」とお礼を述べた。


「最後の曲になりますが、皆さん良かったら最後なんで、日頃のストレスを歌ってください。」そう言うと本編最後の「茜ヶ空」で男女分かれてのコーラスを提案。男性には「もっといけんだろう!」と容赦なく煽り(笑)、女性には優しく笑顔で頷く。オーディエンスは恥ずかしそうに、しかし精一杯歌い、長澤はそんな彼らにスタンドマイクを向けながら、笑顔を傾けた。

「ありがとう、イエーイ!」

アンコール、ツアータオルを首からさげてひとり登場した長澤。歓声が湧いたのはシニカルな歌詞の「お休みハッピーX'mas」。セットリストにもこの曲は書かれていなかったので筆者も思わず「おお!」と声を上げてしまった。「ハッピーX'mas!」と歌うのも「くたばれハッピーX'mas!」と歌うのも両方長澤らしい。
「クリスマスで僕が一番好き曲は、マライヤ・キャリーのクリスマスソング……っていう報告でした(笑)。」曲が終わり、チューニングをしながらおどけた口調と表情でそう言うと、あちこちから「歌って!」の声が飛んだ。言われるがまま「恋人たちのクリスマス」を少し歌うが、更に歌うことを促すオーディエンス達に「パワハラやで(笑)。」と一言。フロアは大爆笑に。
続く「戦士は夢の中」を歌い終わると、再びバンドメンバーを呼び入れ「蜘蛛の糸」へ。

nagasawa2019121903_0491.jpgパワフルな本編を終えたとは思えないほど伸びやかな歌声は特にAメロで強調された。

「最後の曲だから携帯でもなんでも撮っていいよ。」サプライズな提案にオーディエンスは慌ててポケットやバッグから各自スマートフォンやデジカメを取り出した。

「最後ちょっとUFO呼ぶんで。UFO呼びたいやつ!」全員があげた手を見て「変人だらけやないかい(笑)。いいねぇ。」と満面の笑み。UFOを呼ぶための呪文は、両手を空へ掲げながら歌う「ムー」の冒頭部分。しかし、オーディエンスは手もあげたいが撮影もしたい。ワタワタしているフロアを見て「できねーじゃん(笑)。」と再び楽しそうに笑う長澤。それでも気を取り直し両手を広げて“我々はUFOが現れるのを待っている…”と全員で歌い出す。うーん、音源のそれもかなり奇っ怪だったが、更にその上をいっていて面白い。月刊『ムー』とコラボしたこの曲は当初長澤ファンをざわつかせたが、結局のところツアーを締めくくるにふさわしい曲となり、【Nagasawa Tomoyuki Band Tour 2019 ‘SLASH’】のファイナルは、スタッフが会場からの移動を促すまでWアンコールを求めるクラップが鳴り止まなかった。

Photo:木村篤史
Text:秋山雅美(@ps_masayan



□ セットリスト

M01. 世界は変わる
M02. GOODBYE,HELLO
M03. バベル
M04. 誰より愛を込めて
M05. シュガー
M06. ソウルセラー
M07. STOP THE MUSIC
M08. 死神コール
M09. Back to the Past
M10. 笑う
M11. 時雨
M12. 金木犀
M13. 明日のラストナイト
M14. 90's Sky
M15. KYOTON
M16. いつでもどうぞ
M17. Close to me
M18. 茜ヶ空

ENC1. お休みハッピーX'mas
ENC2. 戦士は夢の中
ENC3. 蜘蛛の糸
ENC4. ムー


■ 長澤知之 オフィシャルサイト
http://www.office-augusta.com/nagasawa/

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Release

バンドサウンド・ミニアルバム
「SLASH」

2019年10月2日発売

-収録曲-

M1. ムー ※先行配信第3弾好評配信中‼︎
M2. Back to the Past
M3. 90’s Sky
M4. KYOTON ※先行配信第1弾好評配信中‼︎
M5. いつでもどうぞ
M6. 世界は変わる ※先行配信第2弾好評配信中‼︎
M7. シュガー
M8. 戦士は夢の中

10月2日(水)発売 長澤知之NEWミニアルバム「SLASH」購入者オリジナル特典決定!
・TOWER RECORDS(オンライン含む):未発表新録曲「老いパンク」CD
・AMAZON:未発表新録曲「夏休み」CD
※CD特典は無くなり次第終了になります。

SLASH

CD

POCS-1830 / ¥2,530(税込)

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