高橋優、少し極端に言うと「あの指パッチンする曲ね。」って言われるだけでも良いんです。「spotlight」インタビュー
June 16, 2023 17:00
高橋優
昨年10月に8th Album『ReLOVE & RePEACE』をリリースした、高橋優。アルバムを引っ提げたツアー【LIVE TOUR 2022-2023「ReLOVE & RePEACE ~ReUNION~】を前編・後編にわけ、今年6月11日に高橋の地元秋田でファイナルを迎え、残すは6月30日 (金) 沖縄・アイム・ユニバース てだこホールでの特別編のみ。そんな長いツアーを回っている高橋が、6月13日(火)に「spotlight」をリリース。この曲はNHK 夜ドラ『褒めるひと褒められるひと』の主題歌で、高橋優節全開でありつつ、まるで褒められたような気分になれるハートウォーミングな一曲。今回はツアーの話や、高橋のバンドメンバーで長きに渡っての音楽仲間、平畑徹也氏のアルバム『AMNJK』に参加された「天邪アウトロー」のエピソードと平畑の魅力、そして「spotlight」への想い、『褒めるひと褒められるひと』から脱線した雑談など、様々な話を伺った。
ー (取材時)沖縄での特別編も含めて、ツアーも残りわずかですが体調は大丈夫ですか?
ツアーがある方が日常としてはメンタル的に楽なんですよ。
ー そうなんですか!
ええ。キャンペーンの場合は臨機応変さも求められるし、テレビで歌うのも衣装さんやヘアメイクさんがいてトークもあって。勿論そういう環境を与えてもらえてるのは嬉しいしそれはそれで楽しいけど、やはりライブはずっとやっているから自分の中ではライフワークみたいな感覚なんですよね。
ー なるほど。今回のLIVE TOUR 2022-2023「ReLOVE & RePEACE ~ReUNION~」は前編、後編に加えて特別編もあり声出しもOKになりましたが、これまでの公演を振り返っていかがですか?
1月に開催した前編の千葉・市川公演から声出しOKになったんですが、かなりエモかったです!自分の中にも気持ちの移り変わりみたいなものがあるというか……。
ー 移り変わり?
ライブ自体はある一定の楽しさや完成度に達している気がするんです。勿論、手応えもありますし。それは年々ツアーを重ねていくごとの経験値によって上がっていったと言えるでしょうが、ただそうなってくるともっと良い声を出したい、ピッチもしっかりさせたいって、奥へ奥へ手を伸ばしたくなるんですよね。それに関してはスタッフやバンドメンバーも踏み込めない世界というか……。いや、これは決して暗い意味じゃなくて。
ー クオリティが上がってきたからこその、自問自答。
そうそう。楽屋で一人で、“もっとこう歌えたのかな”という自問自答は毎回あるんです。だって、高橋優ライブの先輩はいないから、自分で突き詰めていくしかないんですよね。でもそれが出来るようになれば、もっと楽しんでもらえる気がするので毎回研究の余地ありというか。でもライブってそこが面白いんですけどね。
ー 私は今ツアー前編の東京公演を拝見したんですが、感動して興奮して、次の日になっても興奮冷めやらぬ状態でした。
あ、嬉しい!
ー ライブ自体は勿論のこと、久しぶりに聴くオーディエンスの声にも刺激を受けて、ライブでの言葉や声からインスパイアされたプレイリストまで作っちゃったくらい(笑)。
いや、でもその感性がすごいですよね。お仕事柄、音楽に毎日触れているわけじゃないですか。うんざりする日とかないんですか?今日は音楽聴くのをやめようみたいな日。
ー あぁ……頭痛持ちなので酷い時はフィジカル的に辛いから聴きたくないけど(笑)、そうでなければ音楽聴くのをやめたいと思ったことはないかな。
藤井聡太さんって将棋が好きすぎて、朝から夜まで12時間くらい将棋を指して将棋のことを考えてる時間が自分にとっての趣味であり仕事であるみたいことを最近ニュースで観たんですが、好きじゃないとやれない世界ってありますよね。
ー ありますね。でもそれは優くんも同じでは?
そうですね……あ、でもね、最近はカメラをまた始めたり、ちょっとチャラチャラしていたいところはありますよ(笑)。
ー チャラチャラ(笑)。
チャラチャラっていうか、もう少し不真面目でいたい。出来るだけどうでも良いことに時間を割ける人生にシフトしていたいんですけどね(笑)。まぁそのテーマの見つけ方は人それぞれですが、秋山さんみたいにただでさえ音楽の仕事してる人がプレイリストを作って音楽を聴くってのは将棋を指す人が四六時中将棋しているようなものであり、ミュージシャンで言えば四六時中ギターを握っているみたいなことに近いわけじゃないですか。
ー 結局、音楽が好きなんだろうね。勿論苦手な音楽は聴かないけど(笑)。
そこですよね。僕らみたいな仕事をしてる人たちって諸刃の剣だと思うんです。好きなもの嫌いになっちゃったら、もう最悪じゃないですか。
ー 確かにそれは正直ありますね(笑)。音楽自体は嫌いにならないけど、好きなアーティストが嫌いになるとか。
嫌だ〜。何があったの?結婚しちゃったとか?
ー アハハ!いやいや、そんなに純情じゃないから(笑)。そうじゃなくて、お会いしたらイメージと違っていたりとか。まぁそれはこちらが勝手に抱いていたイメージなんですけどね。
あぁ、そういうことか。語弊を恐れず言うと、報道で取り沙汰されるレベルの最悪なことをやってる人がいるとして、それでもみんなが感動出来るような曲を書ける人であれば、その曲には感謝しようよと思う部分があるんですよね。でもだからこそ僕は会いたくないんです、憧れの人に。
ー 分かります!!
その人がどういう人間であれ、僕はその人の曲を楽しみにしたいから。今回のツアーでも歌っている「あいのうた」(アルバム『ReLOVE & RePEACE』収録)は、世界を救える人が不倫をしていたら世界を救うのを止めさせて叩くのが世間でしょうっていうことを僕なりに書きたかったんです。つまり履き違えてまで正義を語ることを僕はしたくないというか、純粋悪みたいな人でも感動する映画を作れちゃうんだったら1,800円払っても2,000円払ってもその映画を観に行くだろうなと思うんです。ただ今って誰が正しい、誰が悪いではなく、世の中が微妙なラインにいる気もするから難しいですけどね。勿論性格が良いに越したことはないし、僕は自分が性格悪いって分かってるから………
ー 正直だとは思うけど、性格は悪くないんじゃないかな?
いやきっと、僕のスタッフは片耳でも僕の曲を聴きたくないと思っているかも。現場を離れた途端(イヤホンを投げつけるジェスチャーで)うわぁ!って(笑)。
<スタッフ、爆笑しながらも首を横に振る>
……あ、僕のこと嫌いになってないんですか?
ー それはないですよ(笑)。ご自身が感じたことを一石も二石も投じる歌詞でぶつけてくれるところも、そういう正直さも好きですよ。あと社会的なことを歌っているわけではありませんが、平畑徹也さんのアルバム『AMNJK』で参加された「天邪アウトロー」(作曲:平畑徹也/作詞:高橋優)も良かったです!「前奏」からの流れやメロディとリズム。それと過激な歌詞を歌う優くんのエモさ、これは嫌いになるどころか惚れますよ!
あぁ、嬉しい!あの曲、2テイクくらいしか歌っていないんですよ。もうノリ(笑)。
ー いや、それが格好良い!
それってきっと、はっちゃん(平畑)が引き出してくれているんだと思いますよ。だってもう十年以上の付き合いですからね。
ー デビュー前からですもんね。
そうそう。2008年だったかな。浅田信一さんに紹介されて。今回のツアーは、かんちゃん(神佐澄人)が、はっちゃんと交代で鍵盤を担当してくれているんですが、僕、かんちゃんの演奏も大好きなんですよ!ただ、はっちゃんとはエモい部分で繋がっているというか。言葉ではなく演奏でお互いバランスが取れてると思うことがすごくあって。「天邪アウトロー」の作曲は、はっちゃんなのでデモの段階では僕のメロディーラインを全部、はっちゃんが「ララランランラン♬」って歌っているんですよ。はっちゃんらしいなぁって思いながら僕、歌詞を書き上げてもしばらく送らなくて(笑)。で、はっちゃんから「優くん、俺のラララはもう聴き飽きたから、はよ歌詞送ってな。」って言われたけど、はっちゃんのラララをもう少し聴いていたいなって思っちゃったんですよね(笑)。
ー アハハ!あえて“はっちゃん”と呼ばせてもらいますが、歌詞を含めてそういうエピソードがもう、優くんの“はっちゃん愛”で溢れてる!
そう!はっちゃんへの愛がすごいんです、僕は!(笑)はっちゃんって型にはまらないというか、よく破格の才能って言っているんです。バンドメンバーたちと話していた時に、はっちゃんが自分のことを天邪鬼って言おうとしたんだけど「俺は天邪…アウトローやからな。」って言ったんですよ。でもそれこそが、はっちゃんを表現していると思ったし、それ以降バンドメンバーも合言葉のように言っていたので、それをそのままタイトルにしました。
ー でも本当に仲が良いですよね。そういえば先日も稲葉浩志さんの作品展に二人で観にいってたでしょ。
行きました!最高でしたね。そうそう、今朝はっちゃんから電話かかってきましたよ。「優くん、B’zのチケット取れそうやでー。スケジュール空いてる?」って。朝から何事かと思いましたよ(笑)。
ー このままいくと、はっちゃんの話で終わってしまいそうなので(笑)そろそろ新曲の話に。6月13日(火)に「spotlight」をリリース。この曲はNHK 夜ドラ『褒めるひと褒められるひと』の主題歌ですが、まず原作を読まれたそうですね。私も読みました。
面白いですよね!
ー ええ。ちょっとしたやりとりにほっこりしたり励まされたり。
そうなんですよね。だから原作段階では曲のイメージというより、いち読者として普通に面白い漫画だなって楽しんじゃいました(笑)。その後、“褒められたような気持ちになれる楽曲”というリクエストを、ドラマ製作スタッフからいただいた時は難しいなと思ったんですが、実際に会えた人から引き出してもらうことが一番だと考えて、そのスタッフの方たちに「何て褒められたいですか?」と聞いて、そのあたりからイメージの糸口をみつけました。
ー 「いてもいなくてもいい通行人A.B.C のLIFE」というのは、自分自身に対してそう感じている人も少なからずいるんじゃないかなって思いました。私も含めてですが。
僕も自分のことをそう思ってますもん。
ー でもスポットライトを浴びる側ですよね。
そうなんですが、でも多分、僕のライブに来てくれている人は似た感覚になってる気がするんですよね。高橋優を特別視するというよりは、みんながいる中に僕もいて「お、こいつ歌ってるぞ」という感じで見てくれているというか。
ー その感覚は分かる気がしますね。というか、自分は特別ではないとよく言っていますもんね。
まぁ歌う人はもっとカリスマ性があるべきなんでしょうが(笑)、僕は本当に普通だと思っていて。なのにこんな僕でさえスポットライトを浴びることが出来る。僕の曲を聴いてくれたりプレイリストの中に高橋優をピックアップしてくれる人がいる。そうやって僕にスポットライトを当てようとしてくれる人がいる。人間だからたまには、“こんなクソみたいな世の中!”って嘆く時もあるけど、自分のことを特別に思ってくれる人たちを差し置いてクソだなんて言っちゃ駄目だなと思ったんです。その人たちを悲しませることだけはしたくないし。そう考えたら、みんな何かしらの形でそうやってピックアップしてくれる人がいるんじゃないかと思って、曲作りに結びつきました。