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まだ「何だこいつ」って言われ続けていたい - 高橋優の10年とその先に在るもの。高橋優『PERSONALITY』インタビュー

まだ「何だこいつ」って言われ続けていたい - 高橋優の10年とその先に在るもの。高橋優『PERSONALITY』インタビュー

October 25, 2020 12:00

高橋優

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2010年『素晴らしき日常』でメジャーデビューした高橋優。昨年から開催されていた【高橋優 -LIVE TOUR 2019-2020「free style stroke」】の公演が新型コロナウイルスの影響で途中中止となった。しかし今年デビュー10周年の高橋は、10月21日(水)約2年ぶりのアルバム『PERSONALITY』をリリース。7月から3ヶ月連続で配信リリースした「one stroke」、「room」、「自由が丘」の他、NHK 発達障害キャンペーンイメージソング「アスファルトのワニ」や、とにかくタイトルが目につく「東京うんこ哀歌」など、蔦谷好位置をはじめとする9人のアレンジャーを迎え、新たな一面をみせてくれた。10周年の高橋優が今回描きたかったストーリーとは?


ー デビュー10周年おめでとうございます!

ありがとうございます!


ー この10年、常に自問自答し、チャレンジし、笑顔があったり苦悩があったりと色々な顔を見せてくれましたよね。この10年はいかがでしたか?

自分の中でもそうだけど、世の中的にも価値観とか色々な変化が多い10年だったんじゃないかなと思うんです。例えば災害の規模が今までより大きかったり新型コロナウイルスが発生したり。僕は今思ったことを今歌う「リアルタイム・シンガーソングライター」としてデビューしましたが、今見るべきものが以前よりかなり複雑になったというか。


ー 残念ながら途中で中止を余儀なくされた「free style stroke」ツアーの東京公演を観させて頂くことが出来たんですが、アルバムを引っさげた通常のツアーとも空気感が違って面白かったです。

ありがとうございます。実験的なことを沢山出来たツアーでしたね。


ー そのツアーでも歌った「one stroke」は、三ヶ月連続配信リリースの第一弾曲。ツアーに行けなかった場所をフィーチャーするミュージックビデオ(以下:MV)に感動しました。

あれはプロデューサーの箭内(道彦)さんのアイデアなんです。箭内さんが「高橋が空飛んで、行けなかった地域に行くMVっていうのはどうだろう?」って提案してくれて、最初はどこまで現実的に映像となるのか想像つかなかったけど、ああいう形になりました。


ー 空を飛ぶ撮影は大変だった?

めっちゃ大変でしたね!本番中はそうでもないけど、終わってから筋肉痛が(笑)。


ー ああ(笑)。だって飛んでるように体を反らしたりするんだもんね。

そうそうそう。もっと鍛えておけば良かったなと思って。走ったりはするけど、鍛えてる場所が違いますからね。


ー この曲のサウンドプロデュースは蔦谷好位置さん。蔦谷さんとは初めてでしたよね。

ええ、お仕事では。でもプライベートでは僕たち飲み友達なんです。もう5年くらい前からお食事の席にご一緒させて頂いていて。蔦谷さんも「優くんと一緒に何かやりたいと思っている」ってずっと言ってくださるし、僕も僕でたまに「こんな曲書きました!」って、作ったばかりの曲を一緒に聴いたり。だから今回「one stroke」で初めてお仕事させて頂きましたが、余計な緊張をすることなくすごくフランクに打ち合わせも出来たし、ラフにコミュニケーションを取ることも出来ました。


ー ご飯行く時はどういう話をしているの?

初めてご飯行った時、プライベートスタジオに呼んでもらったんですよ。小さくて良いから、僕もいつかはプライベートスタジオを作りたいなと思っているので、色々話を聞いたりしました。それと他に何人か別のミュージシャンもいたから「あの時のライヴはどうだった?」とか、やっぱり音楽の話が多いかな。でも結局みんなお酒が入ってるから、そんなに真面目な感じではないですけどね(笑)。


ー なるほど(笑)。蔦谷さんって制作に対してものすごいエネルギーやアイデアを持っている方だと思うんですが、やはり優くんの現場でもそういう感じでしたか?

そうですね。そのエネルギーに関しては、普段自分が勝っちゃうことが多くて。スイッチが入ると、制作に対して周りを置いていっちゃうというか…。そういうのって結構淋しかったりするんですよね。一緒に良いものを作ろうって、最後の最後までああだこうだ言い合える人がいてくれれば良いなと思うんですが、蔦谷さんはじめ、今回のアルバムはそういう情熱に溢れている人たちばかりだから、その淋しさを感じなくて良かったというか楽しかったです。


ー「one stroke」のメロディラインは高橋優らしいんだけど、サウンドがとにかく新鮮で耳に残りました。

ありがとうございます。この曲は、僕が衝動的にやってしまうことを書こうと思ったのが、発想の起点なんです。


ー 衝動的にやってしまうこと?

子供の頃、一緒に遊んでいた友達が親の車で帰る時に走って追いかけてたりしたんですよ。追いつけるわけないのに(笑)。それに、例えば一緒にご飯を食べに行って駅まで送る時、相手が見えなくなるまで手を振りたい衝動があるんですけど、「別にそんなことしないで早く帰ればいいじゃん」って言う人もいるじゃないですか。


ー ええ。

体力の無駄って言われても、そういう一連の流れをやらずにはいられない衝動があるんですよね。結局ライヴもそうだと思っていて。ライヴって衣食住と違って、生きるために絶対必要なものではないけれど、でもその衝動に正直であることが自分らしさだったり、生きている実感を得られる瞬間だったりするから、それを曲にしたかったんです。相手が見えなくなる最後の最後まで手を振り続けることや、聞こえないかもしれないけど「さよなら!またね!またね!」って、忘れたくない気持ちみたいなものを歌おうと思ったんです。


ー そういう起点だったんですね。

ええ。で、曲の根底は変えずにツアーで歌う間に歌詞を変えていったんです。ライヴしながら、旅をしながら歌詞を変えていくというコンセプトだったので、ライヴの景色をどんどん入れました。衝動に対して冷めている人もいるとは思うけど、そういう部分に大切なものが隠れているんじゃないかなと思って。


ー そういうエピソードとか、無駄って言う人もいるだろうけど自分はこうありたいと思う心は優くんらしい気がしました。

勿論、新型コロナウイルスなんてこれっぽっちも想定せず書いた曲だけど、「君と僕との距離は今どれくらいだろう」とか「歩み手を伸ばせば触れられそうだ かざしてくれるかい?」とか「またね またね と繰り返したね きっと 聞こえなくても届いていたんだね」という歌詞を見ると、結果的にライヴを恋しいと思う自分の気持ちが歌になった気もします。今はまだなかなかライヴが思うようには出来ないけれど、それでも今後この曲をライヴで歌った時、どういう気持になるのか楽しみだったりもしています。


ー 続く8月に配信リリースされたのは「room」。この曲、ビートが格好良くてめちゃくちゃ好きなんです!

ありがとうございます!