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まだ「何だこいつ」って言われ続けていたい - 高橋優の10年とその先に在るもの。高橋優『PERSONALITY』インタビュー

まだ「何だこいつ」って言われ続けていたい - 高橋優の10年とその先に在るもの。高橋優『PERSONALITY』インタビュー

October 25, 2020 12:00

高橋優

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ー なるほど。そういう掘り下げ方は優くんらしさも感じるけど、社会に対しての怒りや情報の速さ、関心があるようで実はない人々などを描いた「八卦良」も、やはり優くんらしいと感じました。

インターネットだけでなく、テレビが生まれた頃から始まっていたことかもしれないけど、何でもネタ化しているじゃないですか。自分の身に起こって初めて「まさか自分にもこんなことが起きるとは!」ってみんなビックリする。これは決して批判ではないけれど、報道番組や情報番組でも「ご冥福をお祈り致します。…(明るい声で)さて次はパンダの話題です。」っていうことあるじゃないですか。


ー ええ。

そういうことに気持ちがついていくのが必死だった筈なのに、いつしかみんな慣れていって…。ネットもスクロールすれば観られるし、テレビはチャンネル変えれば話題も変わる。ゲームなら死んだらリセットすればまたやり直せる。そういう切り替えの速さに対してずっと疑問があって。勿論ひとつのことに対してずっと頭を抱えて悩めというわけではないんですが、当事者になっている人たちや、もう帰ってこない命。その人がどれだけ悩んでいたか想像くらいはしていたいなと…。僕はどうしても想像する時間を設けてしまうので。


ー そうだね。そういうことに疎くなっているのは事実かも。

この「八卦良」って、すべての準備は整った。万事OKという意味なんですよ。だから相撲で「はっけよい 残った!」って言うじゃないですか。


ー ええ。

「万事準備は整っている」というタイトルにして、曲の結びで「FUCK YOU」と言っているのって、自分の中では「素晴らしき日常」というタイトルで全然素晴らしくない日常を歌っていることに通じるものがあるんですよね。


ー ああ確かに。この流れでアルバムで最も笑える曲のことを聞くのはちょっと気が引けるんだけど、池窪浩一さんと優くんがアレンジした「フライドポテト」と「東京うんこ哀歌」。

聴いていただけましたか(笑)。


ー ええ(笑)。池窪さんと二人で何を本気で遊んでるのって思いました。

ああ、そうですね(笑)。今作で池窪くんとアレンジした曲は伸び伸びしていますよね。


ー 特に「東京うんこ哀歌」。「私」という言葉で女性が主人公の曲だけど、これは優くんが経験したこと?

いや、実体験ではないんです。確かに僕、女性の言葉で歌詞を書いたのってほぼ初めてに近いんですよね。


ー 歌詞の中に女性の台詞が出てくることはあったけどね。

そうなんです。で、実体験ではないんですが、実際に友達から送られてきたLINEの内容なんです。それが夕方5時半くらいで、その人は6時の新幹線に乗りたかったんだけど、「地元に帰る前の品川駅でうんこ落ちてて泣きそう」って。僕その時、ジョギングしようと思っていたけど、これは曲を書かずにはいられないと思ってジョギングウエアのまま、その場でワンコーラス作って関係者に送り、でもまだ気持ちは収まらずフルコーラスをすぐに作りました!


ー うんこにはそんなエネルギーが(笑)。

でも最近流行ってますよね。「うんこミュージアム」とか、LINEの「うんこスタンプ」とか。僕、よく使ってますよ。


ー そうなんだ(笑)。そこからアルバム最後の「PERSONALITY」の話に移るのもどうかと思うけど(笑)、ラジオのパーソナリティを意味するこの曲。やはり優くんにとってラジオは大切なものなんだろうなと感じました。

例えば『オールナイトニッポン』のようなラジオの中でトップ・オブ・ザ・ラジオの世界はあるけど、その一方でYouTubeラジオって誰でも出来るじゃないですか。


ー ……(小声で)スミマセン、やってます。

ええ!やってるんですか!?


ー ごめん。優くんのことも喋った…。

ありがとうございます!いや、誰でも出来るって僕も言い方悪かったけど(笑)、この業界の人がコンテンツとして取り入れるのはまたちょっと話が違って、例えば僕の姪っ子だってやろうと思えば出来るじゃないですか。


ー そうだね。

そうなった時に、昔はラジオって受け取り手だけの気持ちしか歌われてこなかった気がしていて。


ー ああ、なるほど。

でも今ってYouTubeでも他のネットでも、誰でも芸能人みたいになれるし、誰でもパーソナリティになれる。片や表に立っている人のことはみんな批判したくて仕方ない。「表に立つ人間のくせにその発言は何だ!」って、それこそ自殺に追いやるまでターゲットを探すように叩きまくるじゃないですか。


ー 残念だけどそうだね。

だからこの曲では、発信する人たちの孤独やプライベート、人となりを曲にしたかったんです。明るく振る舞っているパーソナリティも家に帰れば、あなたと同じように猫を飼っているかもしれないし、あなたと同じようにご両親とご飯を食べているかもしれない。その両親は自分の子がラジオで喋っているのを聴いてハラハラしながら応援しているかもしれないし、家族と仲が悪いかもしれない。表に立つ人だって自分と変わらない人間。この曲はアルバム全体通して言いたいことが詰まっていますが、それをこのアルバムでは色々な切り口で歌いたいと思っていて、その最たる言葉が「PERSONALITY」なんです。僕はラジオをやらせてもらっていて、「目の前にはマイク」という歌詞もそれを見た人しか分からないかもしれないけど、発信者になれる今だからこそ、少しでもその共感値を深めたかったんです。叩く人の気持ちも考えなきゃいけないし、叩かれた人の気持ちも考えた方が良い。そういう部分に希望を見つけたかったんです。


ー 11年、12年、20年…これから先の高橋優というアーティストが楽しみです。

それがみんなに思ってもらいたいことなんです。10年目だけど収まりが良くないというか、固定概念に縛られてしまっている10年目を迎えたくはなくて。まだ「何だこいつ」って言われ続けていたいです。


ー ありがとうございました!


インタビュアー:秋山雅美(@ps_masayan


■ 高橋 優 オフィシャルサイト
https://www.takahashiyu.com/

■ ワーナーミュージック・ジャパン HP
https://wmg.jp/artist/takahashiyu/

Release

高橋優
「PERSONALITY」

2020年10月21日発売

-収録曲-

□ DISC1(CD)※期間生産限定盤A、期間生産限定盤B、通常盤共通
1.八卦良
2.room
3.RUN
4.自由が丘
5.LIFE
6.DANCE WITH ME
7.アスファルトのワニ
8.CLOSE CONTACT
9.フライドポテト
10.ABC
11.本命
12.東京うんこ哀歌
13.ORION
14.one stroke
15.PERSONALITY

□ DISC2(CD)※期間生産限定盤Aのみ
one stroke show
〜 ファンが選んだ初の弾き語りベスト10+幻の弾き語り曲「開け放つ窓」〜
1.こどものうた
2.駱駝
3.素晴らしき日常
4.福笑い
5.少年であれ
6.同じ空の下
7.リーマンズロック
8.BEAUTIFUL
9.虹
10.プライド
11.開け放つ窓

□ DISC2(DVD)※期間生産限定盤Bのみ
(Music Video)
1.パイオニア
2.太陽と花
3.明日はきっといい日になる
4.さくらのうた
5.産まれた理由
6.光の破片
7.ロードムービー
8.虹
9.ルポルタージュ
10.プライド
11.ありがとう
12.Mr.Complex Man(スペシャルエディット)
13.one stroke(未完成版)
14.room
15.自由が丘
(Documentary)
THE LIVE 2010-2020 〜Road of 10th Anniversary Document〜

PERSONALITY

期間生産限定盤A(2CD)

WPCL-13242~3 / 4,000円+税

PERSONALITY

期間生産限定盤B(CD+DVD)

WPZL-31777~8 / 4,000円+税

PERSONALITY

通常盤(CD ONLY)

WPCL-13241 / 3,000円+税

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