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映画『影踏み』山崎まさよし ✕ 篠原哲雄監督インタビュー

映画『影踏み』山崎まさよし ✕ 篠原哲雄監督インタビュー

November 14, 2019 20:30

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2019年10月31日。この日、東京・テアトル新宿にて、山崎まさよしが主演を務める映画『影踏み』のプレミア先行上映会が開催され、舞台挨拶には主演の山崎まさよし、ならびに尾野真千子、北村匠海、中村ゆり、滝藤賢一、鶴見辰吾、大竹しのぶの豪華キャストと、篠原哲雄監督が会場を沸かせた。

その数時間前、山崎と篠原監督の姿は東京テアトルの本社にあった。椅子とテーブルが置かれた広いスペースで各メディアがそれぞれ撮影やインタビューの準備をしている。山崎が映画初主演の『月とキャベツ』から約23年の月日が流れた。群馬県でロケが行われた『月とキャベツ』は「伊参(いさま)スタジオ映画祭」が開催されるきっかけでもある作品。2016年の同映画祭で原作の横山氏、篠原監督、山崎の縁が『影踏み』映画化へと繋げたのだ。

独特な緊張感の中、インタビューが始まった。

映画は、横山秀夫氏の原作ストーリーの配置を変えながらも、世界観は変えず、更に映像ならではの表現がなされている。筆者はまず篠原監督に、映像化する上で一番難しかった点を伺ってみた。すると篠原監督は「原作の中でもどうしても省かざるを得ない箇所があったことや、サスペンスの描き方として、火事や、証拠がどう残るかなどは小説で書かれているんですが、あまりそのことを映画では赤裸々に描けないので、その点は苦労しました。」と答えてくれた。

kantoku4.jpg篠原哲雄監督


“山ちゃん”、“シノさん”と呼び合う二人。互いに変わった点について山崎が「シノさんは基本的に変わってないですよ。白髪が増えて…少し太った(笑)。」と言えば、篠原監督も「山ちゃんもちょっと太ったくらいかな。」と互いに笑う。

『月とキャベツ』ではミュージシャン役だった山崎。自身を投影することが一番の役への近道だったが、今回は全く違う人間を作り上げなければいけない。篠原監督は、「簡単に言えば、ダークな部分も引き出さなきゃいけなかったから結構大変だったと思います。演じながら、役と自分を行ったり来たりする作業がきっとあったでしょう。映画にはユーモラスな瞬間がないですし、じっと何かを探っていたり、さり気なく人に何かを問いかけたり、投げかけたり、引き出したり、する役だったから。普段、山ちゃんのライヴを観ている人への投げかけ方は、ユーモアがあって笑いが起きる。それとは違う、“俳優 山崎まさよし”が非常に大きく浮上したんじゃないかなと感じました。」と語った。それに対して、照れを隠すように「やっと俳優として認めてもらった。……嘘です(笑)。」と山崎。しかしすぐさま神妙な面持ちで「 自分としては俳優然としたものはもってませんから…。」と小さく答えつつ、それでも篠原監督への安心感を口にした。

撮影現場では、役者の表現に任せることが多いという篠原監督。

「丸投げ放置プレイ(笑)(山崎)」
「そう言うと、私が何もしてないみたいな感じだけど…(笑)。」

良好な関係性が分かる冗談に、筆者を含むメディアも笑い出してしまった。篠原監督は「場をどう作るかが監督の役割。その中で俳優には好きにやってもらいたい。」と語る。役者がどう考え、どう演じようとしているか。その姿を観て、この役をどう捉えているか監督自身のヒントにもなると。

「俳優という仕事は、主観と客観の入れ替わりがずっと続いていると思うんです。篠原監督の中では演技に対して何パターンか想定していると思うけど、“山ちゃんやったらこうなるだろう”と汲んで頂いてると感じています…が、間違いですかね?」山崎は横にいる篠原監督へそう問いかけると、すぐさま「いや、全然正しいです。」と、山崎が言った俳優としての<主観と客観>に、納得の表情を浮かべながら「そういうことをきちんと喋れるようになったんだね(笑)。」と笑った。

今作で山崎が演じたノビ師。一人で行動するという意味ではソロアーティストも同じ。実生活で壁にぶち当たった時について訊かれると、山崎は「一人だと、これが正しいことなのか、道を踏み外していることなのか、ただ自分の欲望のままにしていることなのか、なかなか気付きづらい。個として生きているということは、そういう危うさを持ちながら、それでも周りや社会を観ながらちゃんと自分で進んでいくということなんだろうな。壁はずっとあって…もしかしてその壁を掘っているんじゃないかな。何か分からないものへ対して進んでいくって、そういうことなのかなと思います。」と答えた。

yamazaki4.jpg山崎まさよし


筆者は、横山秀夫作品をほぼ読破している山崎に、今作における篠原監督の映像としての魅力について訊いてみた。

「あまり説明過多で始まらず、シチュエーションがどんどん重なっていくじゃないですか。その中での心象風景みたいなものを、セリフを介さなくても“きっとそう思っているんだろうな”と観客に思わせる表現があると思います。小説の場合、台詞とシチュエーションを文章で説明しないといけないので、映画のように語らずして表現するということは結構難しいことだと思うんです。(ポスターの“真壁修一”を指さしながら)この人、あんまり喋りませんしね(笑)。」

笑いながらそう言う山崎。篠原作品の魅力を肌で感じ取っていることが分かった。

『8月のクリスマス』(2005年)から14年ぶりに長編主演を務める山崎。 今年1月に公開した篠原監督の『君から目が離せない 〜Eyes On You〜』 では『月とキャベツ』でヘアメイクを担当した馮啓孝がプロデューサー兼メイクアップデザインを担当し、山崎も主題歌「Eyes On You」を書き下ろした。更に今作では『月とキャベツ』撮影スタッフが再集結。

「“みんな集まるけどお前どうするねん”って言われて断る理由がないし、僕だって、“主役は誰でやるんですか?”ってなるじゃないですか(笑)。」

今作のオファーを受けた理由について、絆を感じるエピソードを笑い話に変えて話す山崎が印象的だった。

さらに竹原ピストルとの共演についてや、山崎が担当した主題歌についても伺ってみた。


ー 山崎さんは、同じオフィスオーガスタの竹原ピストルさんと、ライヴではなく役者として共演されていかがでしたか?

山崎:ピストルのコンセントレーションというか、集中力とフォーカスの仕方、高め方はもう俳優ですよね。ピストルなりの俳優観というか、彼の中での演じる世界を持っているとすごく思いましたね。僕はどちらかというと周りの空気に乗っかる感じ。でもピストルは確固たる像がありました。

篠原:こっちも観ていてすごく面白かったです。それまで「山さん、山さん!」って言っていたのに、よーいスタートの合図が出た途端「おい、修!」って、胸ぐら掴んでるわけですから。


ー 今作で山崎さんは劇伴も担当されましたが、10月5日(土)東京・中野サンプラザにて開催された『影踏み』完成披露上映会&Quartet Special Concertでは、自身の演技を観ながら音をつけていく作業について、辛かったと語られていましたね。

山崎:非常に気持ち悪い作業でした(笑)。自分を観て音楽をつけるわけですから。でも数回観ているうちに客観的に観られるようにはなりました。

篠原:音楽がある程度出来た後に、どのシーンにどの音楽を使うか当てはめていくんです。それによって、もともと持っていたコンセプトと変わっていくことがあって。「こういうテーマを持っていたけど、そうではない意味も出てくるんじゃない?」っていうことはありました。

山崎:ありましたね。僕は登場人物に沿って曲を書くんですが、「このシーンにその人物は出ていないけれど、この音が合うんじゃないかな?」と、シノさんが仮であてたりしましたね。

篠原:したした。それで少し編集が変わった部分も出てきました。


ー 主題歌「影踏み」を書いたタイミングはいつでしょうか?

山崎:クランクアップが終わり、大まかな編集で繋いだ作品を観ながら書きました。


ー 楽曲への想いを教えてください。

山崎:当初やはりバラードで、ある種感動的な曲をプロデューサーの松岡(周作)さんは期待している感じでした。エンドロールで流れるので、リズムはバラード系のゆったりしたもので良いんですが、おそらく感動にも色々あると思うんです。曲だけが勝手にひとりはしゃいでいたら違う話だし…。なので、非常にノスタルジックな旋律で、映画で描かれなかった心情やシチュエーションを歌うことが良いんじゃないかと思いました。


ー 篠原監督は初めて「影踏み」を聴かれた時、どう感じましたか?

篠原:いやぁ、良い曲だと思いました。後半に音楽録りという作業があって、そこで初めて披露してもらった感じでした。彼は彼で主題歌だけでなく、他の曲(劇伴)も作りながら徐々に「影踏み」のラストに至っているような過程だったから、その4日間くらいのドキュメンタリーを撮ったら面白いんじゃないかと思うくらい、きっと作業は大変だったと思いますよ。山ちゃんの、音楽家としての色々な部分がそこに出てきた気がします。そういう流れの中で、映画のエンドなので歌の中身も含めて象徴しているわけで、“おお、こういう歌か!”と、僕らなりの感動がありました。


映画『影踏み』は 11月8日(金)群馬県で先行公開。その後、11月15日(金)に全国ロードショー。


取材・文・写真:秋山雅美(@ps_masayan


■『影踏み』公式サイト
https://kagefumi-movie.jp/

■ 山崎まさよし オフィシャルサイト
http://www.office-augusta.com/yama/

関連画像

Apple Music

リリース情報

山崎まさよし
「Quarter Note」

2019年11月13日発売

-収録曲-

1.「Regression」
2.「愛にコリータ」
3.「Eyes On You」
4.「ロートルボクサー」
5.「知らんけど」
6.「アイムホーム」(テレビ東京系 金曜8時のドラマ「駐在刑事」主題歌 2018年放送
7.「回想電車」(近鉄TVCM「語りたくなる、伊勢志摩。(2019 春 伊勢神宮編)」/「語りたくなる、伊勢志摩。(2019秋 鳥羽・志摩編」曲)
8.「影踏み」(11月15日全国公開映画「影踏み」主題歌)
9.「プロフィール」
10.「インターバル」
11.「Find Song」

■ 初回盤ボーナスCD
<収録内容> 全8曲
映画『影踏み』オリジナルサウンドトラック

1. Theme of MAKABE -Piano-
2. Theme of MAKABE -All Instrumental-
3. Theme of HISAKO -Piano-
4. Theme of HISAKO -All Instrumental-
5. Theme of YOKO -Piano-
6. Theme of YOKO -All Instrumental-
7. Sun & Moon
8. Sun & Moon -Instrumental-

■ CD購入者特典
クリアファイル(アーティスト写真のアザーカットを使用)

Quarter Note

初回限定盤2CD

UPCH-29350/1 / ¥4,000+税

Quarter Note

通常盤CD

UPCH-20539 / ¥3,000+税

インフォメーション

映画『影踏み』
11月15日(金)全国ロードショー
群馬県先行公開中


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出演:山崎まさよし 尾野真千子 北村匠海
中村ゆり 竹原ピストル 中尾明慶 藤野涼子 下條アトム 根岸季衣 大石吾朗 高田里穂 真田麻垂美 田中要次 滝藤賢一 鶴見辰吾 /大竹しのぶ
原作:横山秀夫「影踏み」祥伝社文庫)監督:篠原哲雄 脚本:菅野友恵 音楽:山崎将義
配給:東京テアトル
コピーライト:© 2019「影踏み」製作委員会

- STORY -
単なる「空き巣」ではなく、深夜に人の居る住宅に侵入し盗みを働く、通称「ノビ師」と言われる泥棒。寝静まった民家を狙い“現金”を盗み出す忍び込みのプロで、その中でも真壁修一(山崎まさよし)は一線を画すスゴ腕のノビ師。証拠も残さず決して口を割らない、その高く強固な壁を思わすしたたかさから、いつしか警察からは「ノビカベ」とあだ名された。ある夜、修一は侵入した稲村邸の寝室で、夫の寝ている側に火を放とうとする妻・葉子(中村ゆり)の姿を目撃する。咄嗟の行動で放火現場を止めに入ったが、その直後、修一は逮捕される。2年後、刑期を終えた修一を迎えてくれたのは弟・啓二(北村匠海)、そして恋人の久子(尾野真千子)だけ。ただ、修一の頭にはこの2年ずっと気がかりなことがあった。何故、あの日の侵入がバレていたのか?何故、自分だけが逮捕されたのか?そして、あの時夫を殺害しようとしていた妻・葉子の行方は...

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