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スキマスイッチ『POPMAN'S ANOTHER WORLD』インタビュー

スキマスイッチ『POPMAN'S ANOTHER WORLD』インタビュー

April 11, 2016 19:00

スキマスイッチ

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2013年、デビュー10周年を記念してベスト盤『POPMAN’S WORLD』をリリースしたスキマスイッチが、カップリング曲を集めたAnother Best Album『POPMAN’S ANOTHER WORLD』を4月13日にリリース。カップリングは実験室だと言う二人。「少しのマニアックさと整頓しつくしていない感じ。言い方を変えると少し荒削りだったりする部分がある。」と大橋は言っていた。それはカップリングの域を超え、時として表題曲より彼ららしさが浮き彫りとなり、場合によっては「実験結果」が表題曲へ反映される場合もある。新しくレコーディングされた“壊れかけのサイボーグ”と、ミニストップのCMソングの為に書き下ろされた“フレ!フレ!”についても語って頂きながら、彼らがデビュー前に夢見た話にも触れてみた。


ー 今回アナザーベストをリリースするきっかけは何かあったんですか?

常田:ずっと出したいとは思っていたんです。カップリングとしてまとめたものが、どういう風に受け止めてもらえるのか知りたかったし。というのも、カップリングのキャラクターとして僕らはずっと「実験」してきたつもりなんですが、その時思いついたアイデアや手法、新しい機材を取り入れてみて、スキマスイッチに合うか検証していくんです。大きなところで言えば、作ってきた制約をそこで解放、解禁してみるというのも、ひとつの実験としてやってきたことなんです。だから僕らの中ではそのキャラクター性は似ていると思っていて、ひとつにまとめるとコンテンツとしてもディスクとしても聴けるのかなと考えていました。そこが大きな理由のひとつかな。


ー やはりそれを「カップリングベスト」と言ってしまうのは違うかなと?

大橋:「カップリングベスト」と言うと、表題曲のベストより弱いイメージがして(笑)。今シンタくんも言いましたが実験室として、今迄やってこなかったけどそこで試してみて、良かったら表題曲やアルバムの曲に活かしていけたらと思っているんです。なので結構挑戦的なことをやっていて。まぁ整頓しないまま衝動的な部分で作品を作るという意味では、表題曲を主に聴いてくれている人たちからするとそれこそアナザーワールドというか、ちょっと違う一面を垣間見たりするんじゃないですか。


ー ええ。

大橋:そういう意味でも「カップリング曲を集めました。」というよりも、僕らの実験室で行った実験の数々を見てもらって聴いてもらって、「だからこの辺からリズムのループが表題曲でも出てきたのかな。」など感じてもらえたら面白いんじゃないかなと思い、『POPMAN’S ANOTHER WORLD』というタイトルにしました。


ー 今アルバムに関してのオフィシャルコメントでシンタさんが語った「端っこフレーバー」というのが、その「実験」に繋がるんですか?

常田:そうですね。少しずつ取り入れていくのはすごく分かり辛かったり中途半端だったりするので、取り入れてみたいと思ったものは思い切ってやってみる。ですけどテーマにそぐわなかったりすることもあるんです。特にアルバム曲だと全体のバランスを考えますし。一回やってみるけど前後のトータルバランスを考えてアルバムに合ったものに変更したり。でもせっかくチャレンジして自分たちも納得出来たものなので「どうしようか?」と悩んだ時に、カップリングという場所が用意されていれば、僕らとしても健康的に楽曲を世に出すことが出来るんです。だから一度ガッと挑戦してみて、その間の割合を変えたものをまたリリースしていければ、色々な要素が入り交じった作品が作れるので、「端っこ」が沢山あるのかなと思っています。


ー そういう意味ではシングルの方がアルバムでの実験より自由度が高いんですね。実は今迄、アルバムの方が自由度が高いと思っていたんです。

常田:僕らは10曲から12曲くらい作りますが、まずはシングルありきで2、3曲あって、その中から「この曲はアルバムに入れよう。」というようにストーリーづけをしていくんです。そういう風に組み立てていくと、どうしてもただやりたいものだけを適当に収録していくということが出来なくて。まあそれをデジタルとしてリリースすることも可能でしょうが、僕らとして単純にそういう作品は聴きたくない(笑)。でもカップリングであれば出来るし、そういうチャレンジがクリエイターという面では面白いんですよね。


ー 収録曲が年代順ではないのは、アルバムとしてひとつの流れを意識したんですか?

常田:時系列で聴くと、聴きづらいというのとちょっと恥ずかしいというのがあって(笑)。こういうことを試したんだというのが、分かりまくるんです(笑)。表題曲を集めたベストであればそれが年表のようで面白いんですが、それともちょっと違って聴こえたので。それにアイデアとしては、ひとつのアルバムとして完成させてみたいという気持ちもありましたので、年代順にはしませんでした。


ー でも年代順ではないことで、それこそ卓弥さんの歌声やサウンドの表現力の変化も感じられて面白いです。

大橋:そうですね。自分でもどういう風に変化していっているのか分からない部分でもあるんですが、客観的に聴いてみると昔の歌と今の歌では全然違いますから、やはり昔の歌はその当時でしか歌えなかったんだと、僕も改めて感じました。それを成長と呼ぶのか変化と呼ぶのかは分かりませんが、でもこういう形で並べることでやっぱり面白いですよね。僕は曲によって声色を使い分けて歌うのが好きなので、そういう部分も含めて楽しんでもらえたら嬉しいです。


ー “ためいき”のレコーディング方法は山崎まさよしさんのレコーディング方法を取り入れたとか。

大橋:そうです。普通はドラムから録音するんですが “ためいき”では、僕がクリックも聴かずにギターで弾き語りをして、それを録音したものに対してドラムやベースなど他の楽器もダヴィングしていったんです。


ー 卓弥さんのグルーヴから録音することで、違いは感じましたか?

大橋:感じましたね。楽曲は、いくらクリックを使ったとしてもその中に揺らぎがあって、それできっと音楽自体や生演奏の面白さが出ると思うんです。コンピューターでは出ない面白さ。ある種の人間味なのかもしれませんが、こういう録音の方法だとそれがより顕著に出ました。この時お願いしたミュージシャンの方々も大先輩で、ベテランだからこそ出来たこともあるんじゃないかと思ったんです。


ー 具体的にはどういうことですか?

大橋:急にピタッと止まるブレイクがあって、次の一拍目でパンッとみんなで入るところも一回目から結構ぴったり合うんですよ。「歌を聴いて呼吸感を感じられたら、それはやっぱり合うよ。」と言ってくださって。それがすごく面白いなと思いましたし、レコーディングをしながら感動したのを覚えています。あと僕の個人的な話で言うと、僕は歌って弾き語りをした時点で仕事が終わっているんですよ(笑)。見ていたら作品が完成していく!

常田:そうだね(笑)。

大橋:だからすごく不思議な感覚でしたね。僕の場合、大体一番最後に歌を入れて、コーラスを入れるんです。出来上がったオケに対して歌で命を吹き込むという作業が多いんですが、僕の仕事は終わっているので(笑)、あとは僕が歌ったものにみんなが良い洋服を着せて外に出られるようにしてくれているような感覚でした(笑)。


ー アハハ!この手法は他の曲でも取り入れたんですか?

常田:それが無いんです。でも逆に、そういうコンセプトで作ってみるのも面白いのかもしれませんね。


ー “弦楽四重奏のための『ドーシタトースター』”が個人的にも大好きなんですが、カルテットを入れたこのリアレンジは最初からイメージしていたんですか?

常田:最初はイメージはしていなかったです。アルバム『夏雲ノイズ』ではピアノと歌だけを入れたんですが、「何かをリカットしてみたい。」という気持ちがあって。ピアノと歌だけならカルテットを乗せても成り立つんじゃないかなと思いついたんです。でもリカットって、人に求められてやるもんなんだなと思いました。


ー というと?

常田:「あ、カルテット入れたんですね。」程度の薄い反応で(笑)。


ー そうだったんですか?(笑)

常田:曲に関しては良く出来たと思いますし、僕も好きな曲のひとつなんです。ただリカットということを大きく示してやれば良かったな。もしくはきちんと最初から考えてやるとか。その位、周りのリアクションは薄かったのでこれ以降はやっていないです(笑)



ー それこそ“電話キ”の女性の声とかも(笑)。

大橋:そうそう。

常田:「あの声は誰?」ってなるかなと思ったけど、一回も誰からも言われなかったですね(笑)。

Information

Release

スキマスイッチ Another Best Album
「POPMAN’S ANOTHER WORLD」

2016年4月13日発売

-収録曲-

□ DISC1
01. 夕凪
02. スフィアの羽根
03. ためいき
04. 電話キ
05. 石コロDays
06. Aアングル
07. 弦楽四重奏のための『ドーシタトースター』
08. 僕の話-プロトタイプ-
09. 快楽のソファー(仮)2014 ver.
10. 夏のコスモナウト
11. サウンドオブ
12. 雨は止まない
13. 小さな手

□ DISC2
01. 雫
02. ハナツ
03. 1017小節のラブソング
04. 僕の青い自転車
05. 青春騎士
06. さみしくとも明日を待つ
07. 猫になれ
08. 君曜日
09. Bアングル
10. トラベラーズ・ハイ
11. 回想目盛
12. またね。(betsu-oke ver.)
< BONUS TRACK >
13. 壊れかけのサイボーグ
14. フレ!フレ!

BONUS CD(初回生産限定盤のみ)
□ DISC3
01. 蕾のテーマ
02. 天白川を行く
03. 追伸
04. 花曇りの午後
05. 安曇野にて
06. 若葉
07. ピーカンブギ
08. 夕間暮れ
09. ノウムの調べ
10. Human relations
11. ガレポンク
12. フォノグラフ
13. 10th
14. 10th-typeⅡ-
15. ミッドナイト・グッドモーニン!!のテーマ

POPMAN’S ANOTHER WORLD

初回生産限定盤[3DISCS:Blu-spec CD2]

AUCL-30034~30036 / ¥3,800+税

POPMAN’S ANOTHER WORLD

通常盤[2CD]

AUCL-204~205 / ¥3,300+税

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