ー Aメロのヴォーカルを聴くと男くさいロックと思いきや、ギターのリフや音の変化で、細かく曲の表情が変わっていきますよね。
そうですね。ストレートなロックをベースにはしつつ、核となる部分にラテンを持ってきているのでその融合は面白いと思うし、そのラテンの起伏感は曲には活かされているんじゃないかな。
ー これがライヴとなると、以前色々な取材で言われていた「ペテン師」感に繋がるわけですね(笑)。
アハハ!モロにそうですよね、ペテン師感(笑)。ワッチ(渡會)は薔薇とかくわえそう。
ー つい想像しちゃいました(笑)。でも「アユゴナゴーと風が吹いた」とか「 シーイズゴーンと鐘が鳴れば」とか、1曲目から渡會さんの言葉遊びのセンスが出ていますよね。
擬音語を歌詞にしたかったと言っていたんです。英語にも聴こえるけど、カタカナで擬音語にする言葉遊びをしたかったって。
ー EMMAさんから見た渡會さんの、ヴォーカリスト、作詞家としての才能や魅力はどういうところでしょう?
ヴォーカリストとしては近年あまりない色気と艶を持っている、でも男らしいヴォーカリストだと思います。日本にはやっぱり少ないだろうな。それでいてリズム感や歌詞構築の器用さも備わっていて、それがちゃんと個性に結びついているので素晴らしい歌うたいです。
ー 渡會さんならではの譜割りを持っていますしね。
そうですね。本当に「渡會節」というのがあるのがすごいことだと思います。
ー “Better Day to Get Away”はミュージックビデオ(以下:MV)も作られたそうで。(取材時はMV公開前)撮影はいかがでしたか?
少し変わった感じだったんです。
ー 変わった感じ?
スタジオで普通に撮っているんですが、スマホで見ている感覚みたいな。そういう感覚で映像を観ている風に仕上げたいって監督が言っていて、見え方が面白いですよ。でも何回も何回も演奏したので結構疲れましたね(笑)。最初のひと回し、ふた回しくらいで、すでに疲れるからみんな「ふーっ」ってため息ついてるし(笑)。
ー では苦労した点はまずそこですね(笑)。
そう!だからその時に、早い曲でMVを撮るのはやめようっていう話もしました(笑)。
ー “TwistedShout”は、80年代の日本のロックを彷彿とさせたのですが。
あ、この曲の仮タイトルはまさ“80”だったんです!本当に80年代を意識しました。今、音楽では結構忘れられている世界かなと思って。それこそ荻野目洋子さんの“ダンシング・ヒーロー”が流行ったこと触れる機会もあるでしょうけど、自ら作る人はあまりいない気がしていて面白いんじゃないかと考えたんです。
ー 今の若い世代からすると一回りして新鮮かもしれませんね。
それと多分、世界感が分からないと思うんです。それこそ歌詞を書く時に、珍しくワッチが相談してきましたから。「これってどういう世界感ですか?」って。 だから 「(仮)タイトルが“80”なので、まさに80年代のイメージで。」と伝えましたけど「あ、はい…。」みたいな感じだったから、結構悩んだんじゃないかな。
ー そうだったんですね。でも80年代まんまではないので、古さを感じさせないですし、そこはやはりメンバーそれぞれが持っているルーツが違うからこその面白みなんでしょうか。
そうそう。例えば全部僕の世代で作ってしまうと、まんまっぽくなるかもしれないけど、そこへもっと若い彼らの世代の音楽性が入ってきているので、ああいう風に聴こえるのは不思議だし、かと言ってまったく80年代っぽく聴こえないわけではないから、どこかで受け継がれている部分があるのかもしれませんね。
ー この曲だけはないですが、オーソドックスなギターリフでも古さを感じさせないテクニックを用いたり、逆にあえてオールド感を出したり。そのバランスが絶妙ですよね。
やりたいことが多すぎるんですよ、僕は(笑)。今っぽい音楽も好きですし、勿論自分たちがリアルタイムで聴いていた音楽も好きですし。ロックが世界的にも下火になった時代、そこで流行っていたテクノやニューウェーブ、打ち込みなども好き。だから色々なことをやりたくなっちゃうのかもしれません。
ー そういう意味では、brainchild’sの形態はぴったりですね!
そうだね!自分で音楽性を具現化出来るとしたら、brainchild’sの形態がベストに近いんじゃないかな。
ー 当然レコーディングなどシビアな現場はあるでしょうが、色々な動画から垣間見えるEMMAさんとメンバーの雰囲気が、とても和気あいあいに感じたのですが。
第七期のメンバーになる以前も、みんな人間性が素晴らしいというか、良い意味で距離感を大切にする人たちなんです。僕が一番わがままだと思うんですけど(笑)。
ー EMMAさんはボスですから(笑)。
そうだね(笑)。僕がわがまま言わなきゃいけないシーンもあるし。でもみんな一人ひとりがムードメーカーなので、その巡り合わせは本当に素晴らしく感じています。人からの紹介で知り合っている人も多いですがそれだって奇跡に近いと思うので、やっていて良かったです。10年続けられたというのはやっぱりメンバーのお陰でもあるし、スタッフのお陰でもあるし。そういう意味で“10年出来たんだ”という感謝の気持ちはありますね。
ー その10年の間に、EMMAさん自身が作詞作曲する楽曲も増えてきたと思うのですが、”地獄と天国”はも作詞作曲、ヴォーカルを担当。天国と地獄ではなく「地獄」から始まるんですね。
地獄を先にすることで、地獄と天国が平等に見える気がするんです。天国と地獄だと、天国が良くて地獄が悪く感じそうで。
ー なるほど。「別の角度から見てみよう」という歌詞を見ても、天国と地獄は表裏一体なのかなと…。
そうなんです。物事へ対してどちらか片側からだけの目線で見るのはすごく危険なので、両方見てみた方が良いし考えた方が良い。感情だけに流されないことも大切なんじゃないかなということも考えつつ書いた曲です。でもそういうことって、実は自分の中にいつもあるテーマなんです。勿論僕だって感情的になることはありますけど、一回立ち止まって考える時も必要だと思うし。brainchild’sの会員限定サイトの名前は「URAOMOTE」(裏表)というんですが、やはり「裏」を最初にすることで平等に感じるんです。