ー ではお二人が仕事を離れた時はどういう過ごし方をしているんですか?
松室:僕は何もしていないですね(笑)。映画は観ていますが。
坂内:僕は子供がいるから、子供と遊んだりします。
松室:お子さんはお父さんの絵を見て、何か言ってきたりしますか?
坂内:まだ言わないです(笑)。
松室:僕の妹なんて容赦ないこと言ってきますよ(笑)。
坂内:そうなんですか。…言ってくるようになったら怖いな(笑)。
ー 坂内さんは作品を作る時、どういう部分から取り掛かるんですか?
坂内:だいたいは構図からかもしれません。 今回は夜を表現する色はこの青にしようというのを決めていたので、大きい面をまずボンボン置いていって。あとは画面を上下に分けたりもします。
松室:上下?
坂内:上と下で色面を分けるんです。それをずっと見ていると、他にどんなものや人を配置しようかイメージが出てきたりするんです。
松室:へー。じゃあどこでどう分けるのか、どう配置するのかが大切になってきますね。
坂内:そうそう。
ー でもこれだけ簡略化しているのに、きちんとストーリーが見えるのが凄いですよね。先程も言っていたように、思わず描き込みたくなると思うんです。それをしないのは案外勇気がいるんじゃないかなと思うのですが。
松室:そうですよね。今回正式に坂内さんへジャケットをお願いする前、坂内さんのTwiterを見ていたんです。そしたら「街を描くと人が少ないからゴーストタウンになってしまう」みたいなことを呟いていて(笑)。
坂内:はいはい(笑)。
松室:確かに肝となる人しか出てこないですもんね。(ジャケットの原画に目を落としながら)でもここにも絶対他の人はいるわけじゃないですか。
坂内:ええ。その葛藤はありますね。
松室:でも全然ゴーストタウンに見えないし。
ー 描かれてはいなくても、きちんと人がいる感じ。
松室:そうそうそう!
坂内:仕事で大勢の人を描くこともたまにあるけど、それでも…10人くらいかな(笑)。
松室:最大10人!(笑)今回は、登場人物に対してのイメージを僕が軽く提示させていただきましたが、ご自身の作品を描かれた時は登場人物の設定ってあるんですか?
坂内:何となくはありますね。多分僕の中で、自分や自分が体験したことを重ねている部分はあると思うんです。
松室:なるほど。確かに僕も「自分のこと」と思って歌詞を書いたりはしないけど、自分が思いもしないことは書けないから、どこかで自分ならこういう時にどうするかとか考えているかもしれないな。
ー そういう意味では音楽もデザインも結構共通点がありそうですね。
松室:プロセスはぜんぜん違うと思うけど、作品を作って人に何か伝えたいとか、あるいは喜ばせたいとか、そういう部分は同じような気がします。
ー 松室くんはジャケット・デザインにどういうものを求めますか?
松室:それが写真であろうがイラストであろうが今回のように切り絵であろうが、作品として完成しているわけじゃないですか。でも曲と合わせた時に、もうひとつ大きなものが完成しないといけないと思っているんです。結局CDジャケットというものがこの何十年もなくならないのは、そういう意味があるからだと思うんです。だって別にタイトルだけでも良いわけじゃないですか。でもずっと存在している。アートワークに求めるものって色々あると思うんです。例えばCDショップに並んだ時のインパクトもそのひとつ。だからたとえ音楽とアートワークが一見、全く違う世界観だとしても、合わさることでひとつの大きな作品になるのであれば、それはそれで面白いと思うんです。結局、配信で音楽がデータ化してもジャケット表1部分は存在するので、パソコンで聴こうがスマホで聴こうが出てきたジャケットデザインとリンクして音楽を聴いているから。
坂内:確かにずっと繋がっているんですね。
松室:だからそういう意味でも今回は本当に素晴らしい作品を作って頂いたと思います!
坂内:こちらこそありがとうございます!
ー ありがとうございました。
interview&text&photo:秋山昌未
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