ー 本当にNozomiさんにとって、音楽はずっと自分の中にあったものなんですね。
物心ついた時から好きだったんですよね、歌うことが。
ー じゃあ仕事として他の選択肢を考えることはなかった?
多分好きすぎたんだと思うんですよね。私が音楽を始めたのは21、2歳の頃なんですけど、小学校の頃は合唱団に入っていたりピアノを習っていたりしたけど、中学校くらいからかな…漠然と音楽ではない何かを探さなくちゃいけないと思ったんです。それで高校生になっても私はずっと進路が決まらなくて。海外に行ってみたいという気持ちはずっとあったのでアメリカの大学に行ったんですけど、いざ向こうに行ってもやりたいことがまったくなかったんですよね。
ー まったく?
まったく(笑)。それで考えて、考えて、考えた時、“やっぱり音楽がやりたい!!”と思って、日本に帰ってきました。
ー 音楽に返るって、それってまさに今回のアルバムそのもの!
そうですね。
ー 先程、音楽を聴いて胸がギュッとなると言っていましたが、特別その曲に想い出があるわけでもないのに、たまらなくそういう気持ちになる曲ってやっぱりありますよね。
ありますね。
ー 私は、トッド・ラングレンの“A Dream Goes on Forever”がまさにそれ。でも今回、“In a Silent Room”も、そういう気持ちになって。
えー、嬉しい!あの曲は前作に収録した“The Silent World”のレコーディングのことを思って歌ってるんですよ。
ー そうだったんですか。
その日のレコーディングの一番最後に、“The Silent World”の歌入れを、やるだけやってみようと思ったんです。時間は深夜2時とか3時だったかな。これ、ちょっと言葉にするとあれなんであまり言いたくないんですけど…(笑)
ー ん?
その時、音楽の神様に会ったような気がしたんです。それがすごく感動して忘れられなくて。
ー もしかしてそれが最後の歌詞「Did you see me cry afterwards? That was not for sadness but for joy」(和訳:あとで私が泣いたのは 悲しかったからじゃなくて嬉しかったから)に繋がるのかな?
そうです。その時は電気も全て消して、真っ暗な状態でレコーディングをしていたんですが、そのまま暗い部屋でプレイバックしたらすごい涙が出ちゃって…。
ー それは聞いていても感動するんだけど!
良い話ですよね(笑)。
ー そういえば今回、和訳も歌詞カードに掲載したそうですが、かなり難しかったとか?
難しかった!自分で書いたのに(笑)。
ー アハハ!でもニュアンスってありますからね。英語では同じ単語だけれど、少しだけ表現を変えたり。
そうそう。含みがあるというか幅があるんですよね、日本語だと。だからどういう風に訳すのが良いのか結構悩みました。自分の言いたいこととのバランスも難しかったし。もちろん楽しい作業ではあったんですけど。
ー そういえば、M7“Judee”は、ジュディ・シルのこと?
そうなんです。このアルバムの中で自分が一番好きな曲。
ー 素敵な曲ですよね。
嬉しい!
ー ジュディ・シルは仕事場でよく聴いていますよ。
そうなんですか!良いですよね、ジュディ・シル。
ー 今回は何故ジュディ・シルのことを歌に?
バンドマンの友達とお酒を飲んでいた時にジョニ・ミッチェルの話になったことがあって。ジョニ・ミッチェルのアルバムが音数が少なくても何であんなに良いのかっていう話だったんですけど、私はジョニ・ミッチェルはそこまで通ってないんですよ。色んな人から「好きでしょ」と言われることも多いし、もちろん一通りは聴いたんですけど、それくらいで。それでしばらくジョニ・ミッチェルについて考えてたんですけど、それより私はジュディー・シルが好きだなと思ったんですね。でもジュディー・シルってジョニ・ミッチェルがどんどん売れていった傍で、だんだん下火になってオーバードーズで亡くなったじゃないですか。その友達と飲んでいた時に「死んでから評価されることってどうなのか?」っていう話もしていたので、それで今度はしばらくジュディー・シルについて考えて。でもそれって結構昔からよく考えていることなんです。