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【コラム】オフィス オーガスタ特集 最終章 佐藤洋介篇 前編:エンジニアとは。

【コラム】オフィス オーガスタ特集 最終章 佐藤洋介篇 前編:エンジニアとは。

August 23, 2016 19:30

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ー そうなんですか!?

「周波数特性」というものなんですが、人間の耳が聴こえる範囲は20Hz〜20,000Hzと言われてます。


ー そんなに広いんですか。

人間の場合、実は耳だけでなく、おでこの骨や身体の振動など、全ての震えで音を認識しているんです。だから耳で聴こえるのは20Hz〜20,000Hzですが、それ以上の音も感覚的に拾っています。昔の、例えばカセットテープなどの周波数特性は16Hz〜240,000Hzくらい。かなり耳で聴こえる周波数を超えているでしょ?


ー 本当ですね。

これは空気の振動を、うまい具合に収録するような可聴範囲でアナログが出来ている証拠なんですが、コンピューターになると「サンプリングレート」というものがあって、録音する基準を最初に決めると、それ以上とそれ以下のものが入らないようになるんです。


ー そうだったんですか!

CDだと16bit、44.1kHzというのが基準なんですが、あれがまさに20Hz〜20,000Hzなんです。でもレコーディング現場では、少し前までの標準が24bitの48kHzなので、現場ではCDよりもっと高い音質で録られています。今だともっと高くて、24bitの96kHz。それがいわゆるハイレゾリューション。(以下:ハイレゾ)


ー あ、なるほど!でもそのkHzがいまいちピンとこないというか。すみません(笑)。

いえいえ(笑)。44.1kHzの「kHz」いうのは1秒間に写真が撮られる枚数なんです。1秒間に44,100個の音の写真をブワーッと撮って区切るんですが、それの変化を録っていくんです。


ー なるほど!ただ1秒間に44,100個って宇宙的レベルな数で(笑)。

…と、思うんですが(笑)、人間はそれ以上のものを認識するんですよ。だから48kHzだともっと上の音も出ますし、「こっちの方が音がシャープだな」とか「クリアだな」というのを感覚的に分かるんです。勿論一個一個を聴いているわけではないですが、フワッと流れた時に「ガサッとしているな。」とか「音が乾いているな、濡れているな。」という感覚的認識のようなもので感じるので、ハイレゾの方が音が良いというのは、44.1kHzより96kHz、つまり96,000枚の音の写真を撮られているからということになります。


ー すごくよく理解出来ました!

良かったです(笑)。


ー エンジニアの方って、人によってアーティストとの携わり方が違うと思うんですが。

そうですね。これは一言では言えないと思うんですが、人によって考え方やアーティストとの携わり方は違う気がします。


ー 洋介さんはどういう携わり方が多いんですか?

僕はアーティストが表現したいものや、好きな音楽などをちょっとずつ話しながら聞いているうちに「あ、こういうのが好きなんだな。」ということを感覚的に汲み取っていくんです。「この音楽が好きということは、多分ギターがこういう音で鳴っていると気持ちよいと感じてくれるんじゃないかな?」と思いながら提案していきます。

20160822145008.jpgー 海外のエンジニアの方はアーティストに対しても「もっとこうすべき!」という主張が強いと聞いたことがあるんですが、日本と海外ではやはりかなり違うものなんでしょうか?

多分、海外と日本は音楽制作現場の立ち位置が違うんじゃないかな。だからプロデューサーという感覚も違うはずなんです。


ー というと?

海外のプロデューサーは、音楽的にどうこうと言うよりかは資金面を重視しているんです。それに対してエンジニアは芸術肌。日本でのエンジニアはどちらかというと技術者的な扱いだけど、海外はひとりのアーティストと捉えているので、アーティストとアーティストのぶつかり合いみたいなところがあるんです。そういう意味では日本とは違って、かなりアーティストとのせめぎ合いがあるんじゃないかな。


ー なるほど。そういえば、日本のアーティストが海外でレコーディングをする際、日本でのレコーディングと音の違いがあるかどうかという議論がよくされますが、実際どうなんでしょう?

音は違うと思いますよ。勿論環境によっての違いもありますし、電圧もそうで。空気もそうだと思います。空気は音が伝わるものなので、例えば亜熱帯で録られたものと湿度の低いカラッとした地域で録られたものでは音の伝わり方が違うでしょうし。


ー だからロンドンの音が湿っぽいって言われているのも、関係しているのかもしれないですよね(笑)。

それとエンジニアの個性が一番大きいかな。基本的に海外はプロデューサーにしろエンジニアにしろ、自分たちが気に入っている音にしてもらいたいから、アーティスト側から寄っていく感じなんです。


ー そうなんですか。

そう。だからどんなに有名なアーティストでも、その音にして欲しいと狙ってくるんです。例えばLed Zeppelinの場合はこのエンジニアだとか、Lenny Kravitzの場合はこのエンジニアだとか。そういう、カッコいいと思う音を作っている人のところで録りたいと思うんですよね。Tchad Blakeのようなサウンドにしたいなとか。だから音を作り上げる一種の芸術ですよね。このエンジニアが担当したら、その人の音になるというところが凄いんですよ。日本はどちらかというと、ヴォーカルの個性ありきだから。勿論海外でも、Sheryl Crowのように声を聴いてすぐ分かったりしますが、例えば後ろでドラムの音がバンッと鳴った時に大体分かるんですよ。「これ多分、Tchad Blakeだな。」って(笑)。

 

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