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半﨑美子、「もしかしたら今、お手紙をテーマに書くタイミングかもしれない。」『うた弁4 you』インタビュー

半﨑美子、「もしかしたら今、お手紙をテーマに書くタイミングかもしれない。」『うた弁4 you』インタビュー

August 3, 2023 17:30

半崎美子

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「地球へ」が令和6年度版 小学校用教科書「小学生の音楽」に掲載決定し、長年の夢が花開いた半﨑美子。そんな半﨑が8月2日(水)に『うた弁』シリーズ第4弾『うた弁4 you』をリリース。手紙をテーマにした今作は、M8(追伸)「地球へ with Anointed mass choir」以外、すべて新曲。ファンとの繋がりを何より大切にしているからこそ、メールやSNSが主流の今、“手紙”というテーマを持ってしてもなんら不自然さを感じない。今回はその『うた弁4 you』への想いを伺ってみた。
 

ー 『うた弁』シリーズ第4弾『うた弁4 you』は手紙がテーマですが、なぜ手紙をテーマにしようと思われたんですか?

いつかお手紙をテーマにしたいという気持ちはずっとありました。今回は第4弾なので、“4”と“For”のダブル・ミーニングで、“あなたへのお手紙”をテーマにできました。『うた弁』シリーズのきっかけになった「お弁当ばこのうた~あなたへのお手紙~」(NHK「みんなのうた」起用曲)からの系譜で、ふと“For you”という言葉が頭に浮かび、“もしかしたら今、お手紙をテーマに書くタイミングかもしれない”って気付けたというか。それで今回このお便り形式に繋がりました。元々、今までいただいたお手紙は大切に保管していて。


ー 半﨑さんらしい!その量だけで家が建ちそうですよね。

本当にそう(笑)。何通にもなるお手紙から、ちょっとしたメモ書き的なお手紙まで。いつか手紙部屋を作れたらと思っています。本当はお一人お一人にお返事も書きたいんですが、なかなか難しくて……。でも作品としていつかお返事を書きたかったので、今回“お返事”という形のお手紙がテーマのアルバムが出来ました。


ー 半﨑さんといえば、「明日へ向かう人」など、受け取ったお手紙から曲へ繋がることもあるので、テーマとしてとても自然ですよね。

そうですね。お手紙ってこの現代においてすごく希少なものになりつつあるけれど、私自身、すごく馴染みがあるので確かに自然な流れかもしれないです。


ー またジャケットもすごく可愛くて。(資料を見ながら)

良いですよね!今、サインを入れたファンクラブ用のジャケットしか持っていないんですが、是非中も見て欲しくて……(手元のジャケットを渡しながら)


ー (いただいたジェケットのページをめくりながら)可愛い!半﨑さんが色々なところにいる。これはCDが欲しくなりますね!

はい!是非中身も含めて手にとっていただきたいです!


ー 今までの『うた弁』シリーズは曲目を一品目、二品目と数えましたが、今回はお手紙ですので一通目、二通目という数え方で。一通目の「途」は歌詞が進むにつれて、主人公の心情というか取り巻く環境が、それこそ道の途中で移り変わっていくのを感じました。



自分自身へ励ましや自分を鼓舞する時って、やっぱり心の揺れがあると思うんです。本当は不安なんだけどそれを払拭するために、自分自身を励ます言葉を連呼するとか。この歌詞の中にもそういう揺れのようなものがあるかもしれません。この「途」(みち)は、途中や途上の“途”と書きます。昨年、立ち止まることをテーマにした『うた弁3』をリリースし、同テーマで開催したコンサートは「立ち止まることも歩みである」という形で終わりました。道の途中で立ち止まってまた歩き出す。そんな流れの中でこの曲は昨年のテーマから地続きになっているので、今この曲を皆さんに届けることは意味があると思っています。


ー “どんな明日も開けば花になる 今あなたが信じた種は知っている”という歌詞は、単なる楽観的思考でも綺麗事でもなく、苦悩を体験しているからこそのポジティブさを感じました。

そうですね。ただ単純に “頑張ろう!”と言うのではなく本当に自分自身の経験として紡ぎ出された一つの言葉であり、想いなんです。


ー それと“あなたは選ぶだろう 絶えず自分であることを”という部分は、特に個人的に胸に刺さりました。私自身も何の繋がりも実績もなく今の仕事に踏み込んだので、結構周りの人に反対されたり理解されないこともあって……。

そうだったんですね。今の私が、歌手活動を志して上京し、迷いもがきながらも奮闘している当時の自分に言えることって、“その道を真っすぐに進んでいたら、共に進むべき人に出会えるよ”ということかなと思うんです。様々な選択をしながらも、きっとあなたは自分が自分であることを選んでいくだろう。そういう意志を持って進んでいくだろうって。


ー 選ぼうと思えばもっと楽な道もあるのに、結局自分はまたその“途”を選んじゃうんでしょうね。

そうなんですよね。


ー この歌詞を見た時に、The BEATLESの「The Long And Winding Road」の“But still they lead me back To the long winding road”(僕は導かれて戻ってくる。長く曲がりくねった道に)という歌詞が頭に浮かびました。

ピッタリですね!でも秋山さんがそうやってご自身の歩みをこの曲に重ねてくださったことはすごく嬉しいです。自分を信じるって容易くないし、特にそうやって周りに“やめた方が良い”と言われた時はそれを押し通すパワーも必要ですし。でもこの曲に込めた<未来からのメッセージ>みたいなものが、その道を進む手立てとして良い作用を生むとしたらすごく嬉しいし、自分が自分であることを選んだ結果、今こうやって秋山さんがインタビューしてくださり、私もこうやってお話しできている。それはひとつの結果でもありますよね。


ー そう考えるとやっぱりこの“途”を選んで良かったです!

私もです!

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ー 「雪の消印」は、相手を想う優しくや深い愛情を感じました。

先日、ファンクラブイベントでこの曲を歌った時、寮に入っている息子さんのことを思って涙が止まらなかったとおっしゃっている方がいて。面と向かって言えなくても、手紙だからこそ溢れてくる想いがあると思うんです。例えば遠い地で頑張っている子どもへだったり、外国で頑張っている友人へだったり、単身赴任中の家族へだったり……。この曲ではそういう想いを表現出来たのかなと思っています。手紙って、こんなことを書こうと思っていなかったのに書いてるうちに色々な想いが出てくるということはありませんか?


ー あります、あります!

実はこの曲で主人公が綴ったお手紙自体は、出しても出さなくてもよくて。もしかしたら自分の気持ちを吐き出すための手紙かもしれないし、ただ願いを込めて書いただけかもしれない。そういうのもあって良いんじゃないかなと思うんです。


ー ちなみに半﨑さん自身、ご両親にお手紙を書かれたり逆にもらったりしますか?

来ていましたね。姉からも。


ー お姉さんからも来るんですね。良いですね。

いつもは冗談ばかりのお手紙の中に、ひとつだけ10枚綴りぐらいの真面目な手紙があって。私がインディーズ時代、当時朝子が住んでいた沖縄にライブに行った後に送られてきた手紙なんですが、そういうのも全部改めて読み返して当時の心境に立ち返ったりしました。父は上京してからずっと私に年賀状を送ってくれているんですが、その便りに「頑張ってね」みたいな何か一言だけ書き添えてあるんです。でも8年くらい経った頃かなぁ……私の活動を気にかけてくれるようになってから「頑張って」が「一緒に頑張ろう」という文面に変わったんです。そういう変化だけでも気持ちが伝わって正直嬉しかったですね。たとえ親兄弟だからと言って、そんなに何でもかんでも聞けない。でも願うことは多分一緒だと思うんです。


ー 本当にその通りですよね。「途」と、この「雪の消印」は武部聡志さんがサウンドプロデュース。「途」はエンディングへ向けてコーラスなどの壮大さが印象的でしたし「雪の消印」は頭サビのアカペラに惹きつけられ、歌とピアノとチェロのシンプルな構成がかえって歌詞や歌声を引き立てているように感じました。



武部さんはいつも歌詞を大切にアレンジしてくださるので「雪の消印」であれば、深々と雪が降ってる情景が浮かんでくるようなノスタルジックなイメージにも重なります。オーダーの段階で、イメージは何となく伝えるんですが、武部さんが最初にピアノスケッチした音源を送ってくださる時点で意思疎通が完全に出来ていて。これまでコンサートでもずっと音楽監督をしてくださっていますし、作品も重ねていくうちにそうなっていった気がしますが、例えば私がピアノの弾き語りでワンコーラスしか出来ていなかったとしても、その後に構成がAメロが半分でBメロが来て……とか、自分が考えていた色々なパターンと一緒だったりして驚くことも多くて(笑)。


ー それはすごいですね。

ええ。更に武部さんのエッセンスが加わり、本当に楽曲の物語がより深く届くようなアレンジにしてくださいました。


ー 手紙というテーマにピッタリなのは「この文字が乾く前に」。この曲は日本郵政のイベントのために制作したそうですね。

そうです。「春のメッセージフェスタ2018 in THANKS KITTE」というイベントだったんですが、事情があり本番では発表出来なくて。今回のアルバムにはピッタリだと思って収録しました。


ー 「雪の消印」が終わり、この曲のイントロが始まった時に、“これはライブだ!”と感じました。ドラムとリズミカルなベースが会場の空気を変えてクラップが広がる風景が浮かんできたというか。

確かにこのイントロはライブ感がありますよね。イントロで郵便屋さんが近づいてきてワクワクするような気持ちというか。この曲は、いただいた一通のお手紙から出会いが始まっている、まさに自分自身の体験をそのまま歌詞に落とし込みました。


ー “涙で滲んで読んで最後まで読めなかったけど”という歌詞は半﨑さんらしいですよね。

そうですよね(笑)。もう全然読めないぐらい涙が流れて……。内容は勿論ですが、手紙独特の行間や文字の佇まいみたいなものも相まって涙が止まらなくなっちゃうんですよね。手紙って書く経験としても、いただく経験としてもやっぱり時間の贈り物だと思うんです。その人への想いを馳せながら書き始めて、筆を止めて思いを巡らしてまた書き出して……。そうやって書き上げた手紙をポストに入れる瞬間を含めて、全ての時間が宛先の“あなた”に向かっている。勿論メールで送ることも出来るけど、絶対的に費やす時間がその温もりに繋がっている気がします。


ー 便箋を選ぶ時間もそうですよね。相手の好みや季節を考えて。

そうですね。実際届くまでの時間もそうだし、相手から返事が来るとしても1日の間ですぐに行き交うメールと違って何日もかかるわけじゃないですか。