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海蔵亮太、『Communication 2 ~ Covers』インタビュー!デビュー5周年の経験と出会いの先には。

海蔵亮太、『Communication 2 ~ Covers』インタビュー!デビュー5周年の経験と出会いの先には。

February 22, 2023 18:30

海蔵亮太

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ー 歌い方ひとつで歌のニュアンスって変わりますもんね。それと今回アレンジで一番驚いたのが「糸」でした。SUIさんらしいというか、少しLo-Fi感があるというか。それでいてピアノはドラマチックで。

さすがトラックメーカーですよね。アレンジが来る前は、壮大というか開けるサウンドの仕上りを想像していたんですが、どちらかというと逆に内向きで朴訥とした世界に独りポツンといるような世界観だったので、最初にこのアレンジを聴いた時、“あ、歌い方変えなきゃ”って思ったんです。自分が歌おうとしていた歌い方のままだとこのアレンジと合わなくて。


ー 中島みゆきさんのオリジナルがヴォーカルを全面に打ち出していたのに対して、海蔵さんがそっと歌っていたのはそういう理由もあったんですね。

ええ。中島みゆきさんの詞を読むような想いで歌いました。たまたまそこに音符が付いてたぐらいな感じで。今回そういう歌い方が多いのかな。「愛燦燦」もそうですが、“気張って歌うぞ!”という感じの曲はあまりなかったかもしれません。


ー なるほど。清水翔太さんの「花束のかわりにメロディーを」も自然に歌われていましたね。あの曲をTHEカラオケ★バトルで歌われた映像がなんと174万回再生!(取材時)

ありがたいですね。あの番組での、いち歌唱に過ぎないのにそんなに観ていただいて。今回、この曲はTHE FIRST TAKEみたいな感じでせーの録りをしたんです。だからライブ感は一番あるかもしれません。自分の中ではもっとこうしたかった、ああしたかったと思うところは色々ありますが、でも逆にそれができない生感みたいところも良いかなと思って。ちょっと声がかすっちゃったところも、それはそれで素直というか実直な感じがこの曲の世界観と合うと思うし。


ー すごく良かったです!それに清水翔太さんは世代ですよね。

世代ですねー。清水翔太さんが「HOME」でMステに初めて出たのを観た時は衝撃でした。勿論日本でもブラックミュージックやR&Bは流行っていたけど、あそこまで全面に押し出した人がピックアップされることってあまりなかった気がしていたので、“来たか、こういう時代が!”と思いました。それに時を同じくして加藤ミリヤさんや青山テルマさんなどJ-POPらしさもあるブラックミュージックも話題になったので、そういう意味では若い世代のそういうシーンを牽引してきた人だったのかと思いますね。


ー 確かにブラックミュージックやR&Bのルーツを持つアーティストは他にもいますが、そういうサウンドが色濃い曲はシングルになりづらいし、そもそもブラックミュージックの表現って難しいですよね。

日本語とブラックミュージックってリズムが違うから、それを日本語に落とし込むのは相当難しいのに、あれだけサラッと出来ちゃう清水翔太さんは器用さを感じました。だからこそそういう人が、ザ・ポップスと言える「花束のかわりにメロディーを」をリリースした時の衝撃は今も覚えてます。


ー カバーをする上で大切にすることは?例えば今回のように清水翔太さんが好きとか、単純にこの曲歌ってみたいとか。

基本的には歌詞の内容ですかね。勿論メロディーラインが好きなものはありますが、やはり歌うからには歌詞をきちんと伝えたいし、最初に質問された今作の選曲の理由にも繋がりますが、今作それぞれの曲もこういう時代だからこそこの歌詞の内容を伝えたいと思って選曲したんです。メロディラインやリズムは人それぞれ感じ方や受け取り方が違うけど、歌詞の内容は<言葉>として皆さんが読み取れる一つのツールだと思うんです。それはカバーアルバム第一弾の『Communication』に関しても同じだったんですが、それこそ今回「秋桜」を選んだのもそういう理由が大きくて。自分が30代になって、親も還暦を過ぎて今はまだ元気でいますが、例えばそれまで普通に会っていたのに急な訃報を知るなんてことがニュースになったり、自分の身近なところでもあったり……。いかに元気な両親でも明日、もしくは数週間後どうなるか分からないと想像した時に、今の時代、そしてこの歳だからこそ両親の為に想う歌をリアルに歌えるだろうなと思い収録しました。この曲は嫁ぐ娘と母が一緒にいる最後の日という物語なので、死とは少し違いますけどね。


ー 寂しさという点はどちらにもありますよね。

僕は親になったことがないので分かりませんが、子供が離れていくことは嬉しいことでもあり寂しいことでもあると思うんです。同世代で親になっている人も当然いるし、そういう将来を考えたりする人も多いでしょうが、もし自分がまだ10代、20代だったらこの曲は多分歌わなかったと思います。


ー この年令、この時代だから説得力があるのかもしれませんね。それと歌い方ですが、この曲でのチェストボイスがとても気持ち良かったですし、エモーショナルな歌い方は胸に響きました。

いつもの自分ならファルセットで歌うであろう部分を、あえて際どいラインでミックスボイスで歌ったりもしました。その方が情緒が出るかなと思って。あと息継ぎするタイミングはすごく考えましたね。ここで感情を一番入れたいと思うところの手前で息継ぎするのはちょっと違うし、あえて一番苦しい状態で一番高い音を出すとか。

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ー それがエモーショナルさに繋がっているんでしょうし、そういう意味では歌の表現が違って聴こえます。

そう思うと確かに今作それぞれ声色が違うので、違う人が歌ってると思われたらどうしよう(笑)。


ー それはないと思うけど(笑)声の表現や表情は明らかに違う気がしています。

コロナ渦になってから全くライブやイベントが出来なくなった時に、もう一度自分の声を見つめ直したいと思ったんです。僕、上手く歌いたいとは全く思っていないけど、自由に歌いたい気持ちは強くて。じゃあ自由に歌えるのはどうすればいいだろうって改めて考えてボイストレーニングに通うようになったんです。まあ時間はかかりましたが、自分自身の引き出しみたいなのものが少しずつ増えてきたので、今作はその引き出しの色々なところを感じていただける作品にはなったのかなと、今お話をしていて思いました。


ー プロに対しておこがましいですが、歌唱力はデビュー当時から軍を抜いていましたが、声の出し方や表現力はかなり変わったと感じました。特に「愛のカタチ -Strings Ver.-」はその違いを感じやすいですよね。

そうなんですよ!今回はリアレンジですが、僕自身もそれはすごく感じています。昔よりも出せるキーがだいぶ上がったんですよね。昔はここが限界だと思っていた少し下の方ではキラキラした音は多かったけど、余裕もそんなになかったとか、個人的に感じる部分は色々あって……。5年経っているので、自分も人間としても変わった部分があるし、“この曲はこう伝えたい”という意志も少しずつ変わって、それが形になっている気がします。ただこの「愛のカタチ -Strings Ver.-」は、最初に「愛のカタチ」を歌った自分がいるからこそ今こうやって歌えているんだなと感じるところもあるので、どちらが良いか悪いではなく、ただ単に同じ曲だけど自分の伝え方が変わったと特に感じています。


ー 私は確かこの曲のリイシュー(2019年)からインタビューをさせていただき、その後もずっと聴かせていただきましたが、「愛のカタチ -Strings Ver.-」 は音源だけなのに圧倒的な存在感を感じましたし、勿論良し悪しの問題ではなく、今作の中で個人的に一番好きかもしれません。

嬉しい!僕も大人になりました(笑)。


ー アハハ!

でもこの曲のレコーディング、めちゃくちゃ早かったんですよ。多分2回くらいしか歌ってないんじゃないかな(笑)。


ー それは凄い!

いや、僕もびっくりしましたよ!まず一回は練習じゃないですか。一回通して歌ってみて次に本番として歌って、改めて直す部分を聞いたら「もう録れたから大丈夫です。」って(笑)。僕も「いやいや、本当に大丈夫なんですか?!知りませんよ!」って焦りましたもん。


ー でもこの曲に瑞々しさを感じたのはそういう要因もひとつかもしれないですよね。ひたすら何度も録り直しをすると技術でカバーするようになるかもしれないし。

確かに何回も歌っちゃうと最初の頃のフレッシュさは変わってくると思うし、実際デビューの頃は結構技術推しみたいなのがあったかもしれません。ここでちょっとエッジを入れてみようとかロングトーンの長さは何秒とかビブラートは後半にかけるとか、小賢しいことは考えていたと思います(笑)。


ー 小賢しいって(笑)。

それこそ昨年色々なライブやイベントでファンの人と生の音楽のやりとりを直接出来たから、“音楽ってそういうことじゃないんだ”と考えるようにもなったし、今回こういうアルバムも出来たんだと思います。皆さんが望んでいるのはテクニックではなく、曲の世界を海蔵亮太の声を通して聴きたいということなんだって。だから自分の傲りにも気付けたんだろうし。


ー 傲ってはいないと思いますが、そういう部分を踏まえて6年目やそれ以降は変わってくるかもしれませんね。

変わってくると思います!考え方だけでなく曲のジャンルに関しても「なんでもやります!」みたいな感じにはなってきたのでどんどん色々な要素を取り入れて、でも自分らしく人生を謳歌したいですね。最近ファンの方に「めちゃくちゃ楽しんで歌っている!」って本当によく言われるんですよ。勿論以前からずっと楽しかったんですが、多分よりナチュラルに音楽を楽しめている自分がいるんだろうなとは思っています。海蔵亮太の第2章がスタートという感じかもしれないので、是非皆さんも楽しんでもらえたら嬉しいです。


ー ありがとうございました!これからも楽しみにしています。


インタビュアー / フォト:秋山雅美


■ 海蔵亮太 公式HP
https://www.ryota-kaizo.com

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