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長澤知之、バンドサウンド・ミニアルバム『SLASH』インタビュー

長澤知之、バンドサウンド・ミニアルバム『SLASH』インタビュー

October 8, 2019 11:30

長澤知之

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今年3月にリリースしたアコースティックミニアルバム『ソウルセラー』から半年経った頃、長澤知之のマネージャーから「さらなる進化を遂げた長澤をお伝えできるかと思います!」と連絡が来た。それが『ソウルセラー』連作のバンドサウンド・ミニアルバム『SLASH』(10月2日リリース)。その言葉に嘘はなかった。今までの長澤作品の中ではかなりスタンダードなアプローチだが、リズムの流れや歌詞の発想、スタンダードを決して退屈にさせない声。それらすべてが長澤らしくありながら、新しい世界も感じさせる。先行配信の「KYOTON」、「世界は変わる」に続き、月刊ムーとコラボした「ムー」は9月に開催された【Augusta Camp 2019】でも会場をかなりざわつかせた。そんな話題作も収録の『SLASH』について、色々と話を伺ってみた。


ー オーガスタキャンプ、お疲れ様でした!

ありがとうございます!


ー「ムー」を歌った時、宇宙人が来ましたね(笑)。

来た来た(笑)。


ー あとUFOも来て会場のテンション上がったし。

そうそう。来てくれて良かった(笑)。盛り上がったしね。


ー 3ヶ月連続先行配信の第三弾「ムー」は月刊『ムー』とコラボ。珍しいというか、面白いコラボですよね。

実は最初からこのコラボをテーマに書いた曲ではないんです。いつも通りの曲作りというか、ひとつのモチーフがあって、そこへ複合的に人物を重ねたり自分を重ねたりしていく中で「ムー(仮)」って仮タイトルをつけていたんです。今までも仮タイトルがそのまま正式なタイトルになることが多いんですが、この曲もそのパターンで(笑)。で、ディレクターとこの曲の話をしている時に「“ムー”っていうタイトルは何からつけたの?」って聞かれて、雑誌を見て主人公がどんどん思想に入っていく話だから「あの雑誌のムーだよ。」って答えたら、その流れで「じゃあ、雑誌のムーとコラボ出来たら面白いかもね。」っていう現場の思いつきから生まれた発想だったんです。


ー だってジャケットデザインだって…。

もろだもんね!(笑)


ー そう、もろ!(笑)

まさか月刊『ムー』さんがこんなに大らかだったとは思っていなかったから、どうなるんだろうと思っていたけど、快く協力してくださって本当に嬉しかったですね。


ー「ムー」のMV Introductionには矢追純一さんとかも出ていて、何やら本格的だし。

そうそう!


ー 長澤くん自体はUFOの存在を信じているほう?

僕自身、地球外生命体を信じていないわけじゃないし、広大な宇宙だからありえるかもしれないとは思っているんだけど、この歌詞の主人公のように心酔してるわけではないかな。ただ、ちょっと前に太陽系外の惑星で水蒸気が発見されたらしくて、水分があるっていうことは生命が生きられる可能性が高いっていうことだから地球外生命体がいても不思議ではないでしょ。歌詞じゃないけど「無いなんて言えない 誰にもね 無いなんてない」。そうは思っています。


ー この曲のコーラスを初めて聴いた時は、 何かを疑いなくまっすぐに信じる者の…ある意味、狂気みたなものを感じて、「KYOTON」の歌詞じゃないけど “うわ 怖い 怖い 怖い”って思っちゃいましたよ。

アハハ!それは良かった(笑)。自分は教会に通っていたから聖歌隊をイメージしたんです。地方の聖歌隊って場所によってはそこまでレベルが高くないというか…歌にバラつきがあるんですよ。でもそれが逆に良くて。 コーラスを担当してくださった方々は皆さん素敵で、とても歌がお上手なんですが、地方の聖歌隊の、下手でも一生懸命な感じをイメージしていたから「あんまり上手に歌わないでください。」ってお願いして。


ー あのコーラスが本当に上手で綺麗だったら聴こえ方は違っていたと思う。

ゴスペルみたいにね。


ー そうそう!歌詞も攻めてるよね。「ブラックメイソン」とか「どうせあの豚どもは」とか。

うんうん。


ー スタッフから難色を示す声とかは?

いや、特には。むしろみんな乗り気だったんじゃないかな。マネージャーとかもね(笑)。

<マネージャー:(笑)>


ー こういうことを面白がってしまうのが面白いなと思って。長澤くんのInstagram(https://www.instagram.com/nagasawa.official/)でも宇宙っぽいエフェクトの写真が結構ありますよね。それこそマネージャーさんとか…。

ディスコの中で仕事してるっていうやつね(笑)。どんなに周りが盛り上がっても仕事!あ、ちなみに「ムー」のMV(取材時はまだ公開前)にも一瞬マネージャーが出ているので、それも観てください(笑)。


ー 観ます、観ます(笑)。そう言えばオーガスタキャンプのかなりギリギリまで「ムー」のMV撮影だったとか。

2日前だったかな。オーガスタキャンプの前日は前夜祭があるから、友達の車で夜走りして向かって。MV面白いですよ。僕は殆ど出ていないけど、今回はこういうテイストの曲だから僕たちがどうしたいかとか、僕をどう映して欲しいかというより、完全にお任せにしたんです。勿論大まかなプロットには目を通しているけど、あえて細かいことは聞かないようにしていて「とにかくこの曲をモチーフに色々と遊んでください。」ってお願いしました。


ー 早く観たいです!今回色々なタイプの曲があるけど、特にベースやドラムなどボトムを効かせた曲が多いなと思いました。 3月にリリースしたアコースティックミニアルバム『ソウルセラー』の連作となる、バンドサウンド・ミニアルバム『SLASH』で意識した点は?

単純に、ある程度の差別化というか、アコースティックとバンド・サウンドの2部連作として違うものという部分は考えたけど、そこに縛られすぎて「この曲はこのアルバムに収録出来ない」って思うのはちょっと違うなと思って。だから気楽な気持ちでバンド・サウンドに臨もうと思いました。バンドがバンドと言える所以はリズム体にあるじゃないですか。ギター2人だけならユニットだし。


ー ええ。

特にドラムがいることがポイントというか。だからとても信頼出来るドラマーの方にお頼みしてきたし、そのドラマーの方が出すアイデアって大きくて。特に今回叩いて頂いた秋山隆彦さんにしたって、TRICERATOPSの吉田佳史さんにしたって、自分が大好きなドラマーなので人格的にも尊敬出来るし。だから僕が「こういう風にして下さい。」って言ったことに対しても、“長澤くんはこうしたいんだろうな”とご自分の中でうまく消化して叩いてくださり、またそれがピッタリと来るから、そういう面では信頼出来る方にレコーディングをお願い出来たことはかなり大きいです。


ー やっぱりそういうことが長澤くんらしさに加え、新しさも作り上げているのかもしれないですね。今作は特に新鮮な楽曲も多かったし。

ありがとうございます。


ー そういう意味では「90's Sky」も面白いと思っていて。ドラムだけでなく須藤俊明さんのベースも気持ちよくうねっているし、あまり今まで長澤くんにはない雰囲気の曲というか。90年代って良い意味でお気楽な明るさがあって、この曲にもそういう前向きさを感じました。

ジャストそれだけしかない曲。それ以上には何も思惑がなくて。90年代の頃って自分は10代で一番音楽の影響を受けているから、その時に見た空や、その時にギターを手にしたこと、ラジオから流れてくる音楽……そういうものを思い浮かべながら、でも懐古趣味になるわけじゃなく、ただ楽しかった思い出だけを書いた曲。


ー ああ、なるほど!だって1番のAメロとか、もしかしたら長澤くんがこうだったのかなって思えたし。

うん。そうだった、そうだった。


ー ボトムが効いてると言えば先行配信第1弾の「KYOTON」のツーバスが、かっこいい!ここまでシンプルにハードなサウンドって珍しいんじゃない?

ツーバスではないけど『P.S.S.O.S.』(2007年)に収録の「零」に近いのかなぁ。あの曲はBPMが200近くてめちゃくちゃ早かった。


ー え、そんなに早かったんだ!「KYOTON」は?

「KYOTON」はそこまでいかないかな。


ー そうなんだ。ツーバスの勢いに飲み込まれてめちゃくちゃ早く感じてしまった(笑)。でもツーバスでありながら、メロディは(The Rolling)Stonesや初期のWingsっぽさもあって。

うんうん。やっていることはスタンダードだから、そこにツーバスが入ったことでまた違う面白さが出たんじゃないかと思っています。


ー そう。今回ベーシックな部分はスタンダードな曲が多いと感じました。

かなりスタンダードかもしれないです。前から自覚していた部分ではあるんだけど、どう歌っても自分の歌声からは逃げられないし。自分の歌声っていうのがスタンダードじゃないっていうのも自覚し始めているから、これでなお特異なことをベーシックにやる特異な僕がいて……っていったら特異そのものになっちゃうから(笑)。それはそれで好きなんだけど、ただスタンダードなことをやっても変にありきたりにならない自信があるんですよね。だからこういうのも良いかなって、素直に楽しめるようになりました。


ー 例えばジョン・レノンの特徴的な声でスタンダードな曲を歌うとすごく格好良いでしょ。

はい。


ー 長澤くんの声と楽曲の関係って、それに似ているような気がしていて。

ジョン自身も自分の声がコンプレックスだったらしいしね。だからThe Beatles時代もソロの時代も自分の声をダブルにしてたし。


ー 確かエンジニアだったと思うけど「あんなに素晴らしい声なのになぜエフェクトをかけたがるのか分からない。」って言っていたみたいだし。

きっとそういうものなんでしょうね。


ー 歌詞の主軸ではないけど、白目むきそうな上目遣いで主人公の周りをぐるぐると回る女の子。そういえば、ああいう女の子への描写って「STOP THE MUSIC」でもあったなって(笑)。

あったね(笑)。


ー ただ「いつでもどうぞ」は、そのまま女性目線から歌った曲で、こういうのも面白いなと思って。

「KYOTON」で白目むいてる女の子目線の歌(笑)。


ー なるほど(笑)。っていうか、キャラクターが濃い!

アハハ!