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【レビュー】高橋優『かくれんぼ』

January 27, 2025 22:00

高橋優

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【レビュー】高橋優『かくれんぼ』

1月22日(水)に発売された高橋優9枚目のアルバム『HAPPY』。

「キセキ」(TBS『news23』エンディングテーマ)、「現下の喝采」(日本テレビ『Oha!4 NEWS LIVE』テーマソング)、「BRAVE TRAIN」(秋田県冬の大型観光キャンペーン「誰と行く?冬の秋田」テーマソング)その他多数のタイアップ曲を収録。更に「青春の向こう側」が、映画『結束、その先へ~侍たちの苦悩と希望~』(2月21日(金)公開)の主題歌に決定したニュースも、リリース日前日に飛び込んできた。その他、強烈なメッセージを感じる新曲「明日から戦争が始まるみたいだ」、「WINDING MIND」、「かくれんぼ」、「青春の向こう側」に加え、配信版には収録されないCDのみに収録のボーナストラックとして、令和5年7月に秋田県内で発生した大雨災害を受けて制作された「はなうた-pray for Akita-」の豪華全12曲を収録。どれも“今”の高橋優が詰まっており、濃い内容になっている。

すでにポップシーンでは『HAPPY』のインタビューを掲載中なので、是非そちらもチェックしてもらいたい。そうすれば何故今回、アルバムから「かくれんぼ」をレビューとして選ばせてもらったのか分かるはずだから。インタビュー中、高橋氏は「この曲は思ったままを書いてください」と言ってくれた。なのでここからメディアのレビューではあるまじき書き方をすることを、今回だけはどうぞ許してもらいたい。

どういう形であれ、多くの人が経験したであろう大切な人との別れ。この曲の主人公が離れてしまった相手は恋人だろうか、それとも大親友だろうか……。歌詞は実際に読んでいただきたいのであまり具体的な言葉には触れないが、大切な人が戻って来てくれたと安心し、主人公が見渡した場所は……筆者の涙腺はまずここで決壊。横で仕事をしている仲間にバレぬよう目薬をビシャビシャと流し込み、曲を止める。マズイ……このままではインタビューでこの曲の質問をすることが出来ない。そして別の意味で実際に質問出来なくなったのはライター失格だった(苦笑)。

と言ってもこの曲は、これでもかと涙を誘う演出をしているわけではない。ある種の異化効果かもしれないが、宗像仁志氏によるシンプルなアレンジが高橋氏の歌を際立たせ、ただ想い出を淡々と語るような声の表情と、随所に潜んでいる優しくも切ないパワーワードに胸が押しつぶされそうになるのだ。これが単なるカタルシスなのか、主人公へのエンパシーなのか、実は高橋氏の実体験かも……と想像しての感情なのか本気で分からなくなった。

“またね”を二度と言えないまま離れてしまった時の苦しみは計り知れない。優しい瞳でふと“君”を想い出す時だって本当は空虚かもしれないし、言葉を選ばずに言うと苦しみを痛みでかき消す自傷行為かもしれない。この曲を聴いているとそんな感情に溺れ、正直これもあるまじきことだが、今もまだ曲を細切れでしか聴けずにいる。

長きにわたり高橋氏をインタビューさせてもらい、高橋氏の音楽に触れてきて思うのは、彼の音楽が時として刻印や焼印のように一生消えず心に在り続けるチカラを持っているということ。そしてこの曲はそのひとつだと思っている。いや、筆者にとっては間違いなくそう。だからこそアルバムツアーで歌うであろうこの曲と向き合えるのか今から心配している。もし関係者席でハンカチを離さない人(もしくは涙を垂れ流している人)がいたなら筆者だと思ってもらいたい。

さて、こんな恐ろしく自分勝手な内容で高橋氏にビールを飲んでもらえるか不明だが、ここでレビューを締めくくるとしよう。


■ 『HAPPY』のインタビュー
https://popscene.jp/feature/058058