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【レビュー】back number『アイラブユー』

October 26, 2022 21:00

back number

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【レビュー】back number『アイラブユー』

「想いにしても愛にしても、本来形の無いものですが、本当はいつも目にしていて、触れているのかもしれません。」

back numberの清水依与吏は、NHK連続テレビ小説『舞いあがれ!』の主題歌として書き下ろした「アイラブユー」についての公式コメントの中で、そう語っていた。ピアノの優しい音色が曲の扉を開くと、飛び方を教えてくれる公園の落ち葉に対して“親切にどうも”と返してしまう清水依与吏のセンスがAメロから顔を出し、その後も曲の随所で魅力を放つ。愛する人を笑顔にするにはどうすれば良いか、グルグルと渦巻く脳内の思考は愛する相手どころか当人だって見ることは出来ない。しかしそれは相手への愛情や心遣いとして仕草や言動、表情として表れる。「愛」という言葉が入っていなくとも聴く人が愛を感じるこの曲のように。
アレンジとプロデュースは「ヒロイン」、「手紙」、「クリスマスソング」、「ハッピーエンド」、「瞬き」などこれまで数々のバクナン名曲を手掛けてきた小林武史氏が担当。バンドサウンドと小林氏のピアノ、ストリングスはJ-POPのヒットメーカーならではのバランスで、温かく優しく、それでいて気持ちを高鳴らしてくれる。印象的な最後のフレーズ、“道のりと時間を花束に変えて”では、まるで傍点打つようにバスドラが響く。

SNS映えをイメージしたキャッチーなイントロレスの曲も中毒性が高くて嫌いではないが、時代に動かされない音楽としての在り方はきっとドラマ視聴者のみならず多くの人の心を掴み、聴くほどに心に刻まれるだろう。

この曲を聴いていたら、曲調やシチュエーションは全く違う「君の恋人になったら」をふと思い出した。あの曲は、こんなことをしようとか、こんなことを言われたいとか、あまつさえ妄想に“あああ”と打ち震えているこれまたバクナンらしい側面の曲だが、もしあの主人公が「アイラブユー」の主人公と同一人物であれば、その時間の経過は更に大切なものに感じる。無論同一人物でなくとも「アイラブユー」は名曲だと言えるし、「君の恋人になったら」とこの曲を重ねたあのは筆者の勝手な妄想にすぎないが。
「アイラブユー」は、誰もが心にある愛の一番根本の部分を優しく思い出させてくれる。

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