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平井 堅、デビュー30周年イヤーライブ【Ken Hirai 30th Anniversary Ken's Bar Special !! 2025 - 2026】ファイナル ライブレポート!

March 4, 2026 20:00

平井堅

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平井 堅、デビュー30周年イヤーライブ【Ken Hirai 30th Anniversary Ken's Bar Special !! 2025 - 2026】ファイナル ライブレポート!

1995年、シングル「Precious Junk」でデビューした、平井堅のデビュー30周年イヤーライブ【Ken Hirai 30th Anniversary Ken's Bar Special !! 2025 - 2026】が、東京公演の2DAYS目、2月23日(月祝)東京・国立代々木競技場 第一体育館にてファイナルを迎えた。昨年12月20日(土)大阪府・大阪城ホールを皮切りにスタートした「Ken's Bar」だが、ツアーという形では、2019年4月~5月実施の「Ken's Bar 20th Anniversary Special!! vol.4」全国4都市・6公演(大阪、三重、徳島、東京)以来となる。

童謡「赤とんぼ」でスタートとした今回の「Ken's Bar」。ステージには草が生い茂り、大きな石もある。それだけでもいつもの「Ken's Bar」とは違う雰囲気だ。2部構成ということや、平井自身のライフワークと位置づけるコンセプト・ライブであることに違いはないが今回、平井には“今までと全く違うステージを作りたい”という想いがあったようで、Ken’s Barのネオンサインもなく、演奏やステージを含む演出からもその想いは感じ取れた。

それでも「知らないんでしょ?」での琵琶の音色には一瞬戸惑った。逢坂誉士の撥が弾く打撃音は会場に緊張感をもたらすと同時に静寂さえ感じさせ、切なくも透明度の高い平井の歌声だけが広がっている。 この日の東京は20℃を超える暖かさで会場は熱気で汗ばむ程だったが、琵琶の鋭い一閃が会場の空気を切り裂き、熱を帯びていた代々木第一体育館の温度を一気に下げたかのように感じた。平井は中盤まで石に腰掛け、客席に背を向け歌っている。琵琶のスクラッチ音が空間に溶け消えると、オーディエンスは時空を歪ませる没入感から我に返ったように拍手をした。


今回、都度ビジョンで仄暗い森の中が映し出されていたが、今回の演出は監督集団「5月」が担当。連続ドラマ『災』の映像世界に心動かされた平井からの熱望で『災』の監督・脚本・編集を担当し、映画・ドラマの領域で活動する監督集団「5月」に演出をオファー。先に記した“今までと全く違うステージを作りたい”という平井の意向をもと、ディスカッションが重ねられたそうだ。昨年5月に開催された「Ken Hirai 30th Anniversary Ken's Bar - One Night Special !! -」ではただただ平井の歌声に圧倒されていたが、今回は映像を含め、平井のイマジネーションが具現化された世界観にも圧倒……というか没入した。

数曲を除き基本的には平井×1楽器での構成というコンセプトも興味深い。情報で埋め尽くされた現代、聴こえない音への想像力や余白を楽しむことはひとつの贅沢かもしれない。特に昔からのファンであれば何度聴いてきたかしれない曲に新たな息吹が芽生えた瞬間なのだから。

ビジョンにメンバー名が刻まれるたび客席からは熱い拍手が送られ、それに応えるかのように各プレイヤーによる渾身のソロパフォーマンスがステージの温度をさらに引き上げた。石成正人がソロから「the flower is you」を奏でる。平井の深く柔らかい歌声とクリアなギターの音色が温かく重なる。なんと心地よい時間なんだろう。サビ頭の「KISS OF LIFE」。冒頭の平井のファルセットは華やかで、筆者個人的にも大好きな曲だ。この日オーディエンスが初めてクラップを響かせ、鈴木 大のピアノが小気味よい旋律を奏で、そのグルーヴに多幸感が満ち溢れる。平井が大サビ前の長い高音でみせる心憎い“間”に大歓声が沸いた!


「Gaining Through Losing」を含む全6曲で【ACT1】が終了すると休憩を挟み、朝川朋之のグリッサンドで【ACT2】がスタート。平井の歌声がハープの弦を震わせ、ハープの音が平井の感情をさらに引き出す。そんな濃密な対話を見せた「Ring」。軽やかでありながら芯のあるハープの音色と平井の情感豊かな歌声が重なった瞬間、国立代々木競技場 第一体育館というの広大な空間は、音の粒子がどこまでも降り注ぐ静謐な星空の下のような幻想的な風景に塗り替えられた。河村 “カースケ” 智康のドラムが響く「キミはともだち」では、平井がリラックスして歌っているように感じた。取り立てて笑顔や大きなアクションがあるわけではなく、ただ歌を楽しんでいる、そんな空気感だ。だが続く「LOVE OR LUST」でその空気は一変。亀田誠治の低くうねるベース。怪しげな赤いライトがステージにもたらす強い陰影。2番Aメロの“閉じ込める”を平井はあえてオクターブ上を歌いフックをつけ、ライトは赤から青へ代わり、その2色が表裏一体は割り切れない人間の本能を表現したこの曲そのものだ。亀田のグルーヴと平井のファルセットはクールでありながら色気(エロティシズム)を感じさせる。

やはり「POP STAR」はテンションを上げる!

20260304yoyogi03587.jpegここではバンドサウンドが一体となり、電飾をまとい登場したあっくんともっくん(ミュージックビデオに登場するアライグマとモグラの着ぐるみ)と、やはり電飾をまとった平井を盛り上げる。ミラーボールのように瞬く色とりどりの光がオーディエンスの歌声と笑顔に降り注ぎ、あっくんともっくんと一緒に踊る平井に歓声が沸き平井の顔にも笑顔がこぼれた。(手をひかれて退場するあっくんともっくんが可愛すぎた)

拍手に混ざり、平井の名を呼ぶオーディエンス。その熱を覚ますかのように、映像は森の中。ザッザッと歩く音。フクロウの鳴き声。風音……徳澤青弦のチェロが「バッハ 無伴奏チェロ組曲 第1番」を奏でる。伴奏はなく、たった一台のチェロが自分自身と対話するように紡ぐメロディ。その孤独で気高い響きは、人間のエゴや虚栄心、その裏にある孤独を痛いほど突く「かわいそうだよね」へ。ひとりぼっちの感情は伏線となり、二つの曲がひとつの物語のように繋がる。ステージの大きな石にピンク色の服を着た女性たちが白い花を手向けていく。そう、置くではなく手向ける。そう表現する方が正しいと感じた。その静かな儀式はこれから始まる物語のプロローグだと気づいた。続いて放たれたのは「ノンフィクション」。

20260304yoyogi04033.jpeg「今日はどうもありがとうございました」そう挨拶すると、平井はその白い花たちを手に取り、石成がギターを掻き鳴らす。このレクイエムを歌う平井の声を、筆者はいつも命の輪郭をなぞるようだと感じている。曲が終わり、ビジョンの森は空が広がる草原へと出た。あぁ、ここがこのステージなのだ。大きな石にはやはり白い花が置かれ、みると枯れている。会場を包む拍手を聴きながら、筆者はこの物語を噛み締めるように自身がペンを走らせているノートをみつめた。

【ACT2】が終わり、アンコールで鈴木のピアノに合わせ平井の声、と共に悲鳴にも似た歓声が。なんと平井はアリーナから登場!「どこ?どこ?」オーディエンスはキョロキョロと平井のいる場所を探す(筆者も同じく)。平井はリクエストコーナーのテーマソング(?)を歌いながら歓声を浴びつつ練り歩き、ステージへ。
ここからは平井がバズーカで放ったボールをキャッチした人のリクエストを聞く「リクエストコーナー」。平井は、本編とは違うリラックスしたムードで、キャッチした人と軽く会話をしながらリクエストを聞く。

最初のファンが選んだのは「太陽」(『没後120年 ゴッホ展-こうして私はゴッホになった-』のテーマ曲)。美しい旋律は苦悩の隙間にある光を感じさせ、平井のシルキーボイスはオーディエンスを魅了した。その後もボールをキャッチした人と冗談を交えながらの会話に、会場も笑顔が多い。

2曲目のリクエスト「君の鼓動は君にしか鳴らせない」を歌い終わると平井はステージ袖のスタッフに何かジェスチャーで合図を送っている。その後「今日は最終日なので」と、本来2曲だったリクエストをもう1曲追加。あぁ、バズーカを用意して欲しいということだったのか。これには会場から喜びの歓声が飛んだ。3人目のファンが選んだのは「ほっ」。このリクエストコーナーでは鈴木と相談するシーンが映し出され、それを観られるのはちょっと贅沢に思え嬉しかった。

「何を話そうかと思うんですが……」少し下を向き考える平井には色々と思うこともあるのかもしれない。「30年間、僕を歌手にしてくれて、歌手として生きさせてくれて本当に感謝しています。ありがとうございます」そう感謝を述べつつも、自分自身に合格点を出せれば歌っていくと告げた。「それは本当に身勝手でエゴイスティックな気持ちでね。もっとホスピタリティ溢れる歌手になれれば良かったんだけど……」とストイックな本音も垣間見せながら「そういう意味では頑張らなきゃいけないんだけど、ただ1番僕が皆さんにまた会いたいと思っています!」その言葉を聞いたオーディエンスの嬉しそうな顔に、拍手に、思わず心の中で“だよね!”と強く同意した。最後は童謡「ふるさと」。その歌声は、“帰る場所”を示しているように感じたし、そうありたいと強く願った。

20260304yoyogi04579.jpeg平井堅という歌手の30年の歩みと、これからへと続く時間を静かに感じさせながら【Ken Hirai 30th Anniversary Ken's Bar Special !! 2025 - 2026】は締めくくられた。

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□ セットリスト

【ACT1】
01 赤とんぼ
02 知らないんでしょ?
03 僕は君に恋をする
04 the flower is you
05 KISS OF LIFE
06 Gaining Through Losing

【ACT2】
01 Ring
02 キミはともだち
03 LOVE OR LUST
04 魔法って言っていいかな?
05 POP STAR
06 かわいそうだよね
07 ノンフィクション

【ENCORE】
EN1 太陽(リクエストコーナー)
EN2 君の鼓動は君にしか鳴らせない(リクエストコーナー)
EN3 ほっ(リクエストコーナー)
EN4 ふるさと

Photo:岩佐篤樹
Text:秋山雅美



■ 平井堅30th記念スペシャルサイト
https://kh30th.net

■ 平井 堅 Offisial Website
http://www.kenhirai.net