センチミリメンタル、東名阪ツアーが大盛況の下に終幕「みんなの生きる日々を優しく守れたら」
March 3, 2025 17:30
センチミリメンタル

センチミリメンタルが、東名阪ツアー『センチミリメンタル LIVE TOUR 2025 “ribbon”』を完走。3月2日、ツアーファイナル公演を東京・Zepp Haneda(TOKYO)で開催した。
センチミリメンタルは、昨年10月に『映画 ギヴン 海へ』の主題歌を表題曲としたシングル『結言』をリリース。また、『映画 ギヴン 海へ』の公開を以って、アニメ『ギヴン』シリーズが完結したことを受けて、同シリーズにこれまで提供した楽曲を自ら歌ったセルフカバーアルバム『for GIVEN』を今年2月にリリースした。今回開催されたツアーは、長く携わってきた作品の完結という、センチミリメンタルにとって節目のタイミングで実現したもの。本人も「濃厚」と称するキャリア総ざらいのセットリストをバンド編成で披露した。
開演時刻を迎えると、SEと光の演出を経て、センチミリメンタルが登場。バンドメンバーと息を揃えて鳴らす特徴的なリズムのキメに、ああ、この曲だと理解した人が多かったのか、フロアからすぐに歓声が上がった。ライブのオープニングを飾ったのは「ステージから君に捧ぐ」で、観客は早速、拳を上げたり声を出したりして大盛り上がり。続けて演奏されたのは「生きていかなくちゃ」、「キヅアト」といったアッパーチューンで、ギターのフレーズ、ベース&ドラムのグルーヴを翼に変えて、センチミリメンタルの歌声がどんどん伸びていった。センチミリメンタルとバンドメンバーの村田隆嘉(Gt)、永見和也(Ba)、ナガシマタカト(Dr)は長い付き合いだが、今回のツアーを経てますます結束が強まったことが、クリアなアンサンブルから伝わってくる。
ツアーのチケットは全公演ソールドアウト。東京公演の観客も、この日を楽しみにいろいろなことを頑張ってきたのだろう。フロアのテンションは初めからかなり高かった。観客からの「カッコいい!」「最高!」といった声に、センチミリメンタルは「最初から飛ばし過ぎじゃない?(笑)」と照れ笑い。そして「とはいえ、まだ3曲しかやってないから。跳んで回って、手拍子できる元気はありますか?」と次の曲の歌詞になぞらえた投げかけに、観客のテンションがもっと上がった。そう、次の曲は「青春の演舞」だ。センチミリメンタルとバンドメンバーの鳴らすみずみずしいサウンドは、観客の高揚感とも共鳴。その後は、観客も「ララララ」と歌い、温かなムードの中で演奏された「ひとりごと」、センチミリメンタルが鍵盤を奏でながら歌うバラードゾーンと幅広く展開した。
「ストレイト」「パレイド」を皮切りに、ライブの後半では『for GIVEN』収録曲を連続で披露。このブロックでのハイライトは「冬のはなし」だろう。「僕の人生を変えてくれた大切な曲」と曲紹介にふさわしい名演に、観客は心を込めて拍手や歓声を送る。ピアノソロを通じて、共通のメロディを持つ楽曲「海へ」へと繋げるライブアレンジも素敵だった。
2019年のメジャーデビュー時から『ギヴン』に楽曲を提供しているセンチミリメンタル。『ギヴン』とセンチミリメンタルがタイアップ作品と作家の関係性を越えて、心の深いところで繋がっているんだなと、今回のライブで改めて感じさせられた。本編ラストのMCでは、センチミリメンタルが、デビューまでの道のりを「こんなに大勢のみなさんの前で演奏できるようになるとは、想像できないくらい苦労した」と回想し、自身にとって『ギヴン』は「僕の音楽を、僕が信じてあげられなくなりそうになった時に認めてくれた作品」であると語った。『for GIVEN』というセルフカバーアルバムのタイトルは、“ギヴンのために”と“許された”(forgiven)のダブルミーニング。自分は『ギヴン』と出会ってこれまでやってきたことを許された感覚になった、だからこそこの作品がみんなの人生の一つの“許し”になれば、という想いを込めたとのことだ。
センチミリメンタルは観客一人ひとりに対して、「たくさんのことが今まであって、たくさん泣いたり笑ったりしてやってきました。みんなもきっとそうだよね」と語りかける。さらに「プレゼントは最後にリボンを結んで完成するもの。一つ一つが今に繋がっていて、こうして今、みんなと結ばれたなと思っています。僕もみんなと同じように普通の人間で、普通に生きています。だから、みんなの普通に生きる日々を優しく守れたらなと思います」と言葉を重ね、「『ギヴン』という作品が許してくれた大事な大事な1曲、ずっと大切に歌ってきた曲をやって終わりたいと思います」とMCを結んだ。
本編ラストに披露された「結言」は、先述の通り『映画 ギヴン 海へ』主題歌だが、元々は、センチミリメンタルが悩みを抱えながら活動を続けていたインディーズ時代に制作された楽曲だ。MCで語られた想いを胸に歌うセンチミリメンタルの声、鍵盤のタッチは優しく、一つひとつの音や言葉が温かく伝わってきた。2番Aメロにある〈ありがとう〉という歌詞は、“歌う”というよりも“話す”に近い素朴なニュアンスだ。そんなところからも、アーティストとファンとしてではなく、いち人間として、同じ目線で、相手と向き合っていることが伝わってくる。間奏ではバンドのサウンドに導かれるようにして、センチミリメンタルが新しいメロディを歌っていた。桜色の照明の下、今この瞬間に芽生えた気持ちを音楽に乗せる。〈この歌を忘れなければ/ぼくらずっと一緒だから〉というラストフレーズは弾き語りで。終演後それぞれの日常へ帰っていく観客一人ひとりに、大切なメッセージを手渡した。
今回のツアーは、センチミリメンタルにとって過去最大規模のツアーで、彼にとって“挑戦”だった。アンコールでは、かつてオープニングアクトとして出演したZepp Nagoyaでのライブで上手く言えなかったという「いけるか、Zepp!」という煽りをリベンジする一幕も。リベンジは見事成功し、アンコール1曲目「星のあいだ」は晴れやかなムードの中、観客の盛り上がりとともに演奏された。きっと過去の自分が報われたような感覚になったのだろう。楽曲が終わると、センチミリメンタルは「その時代はお客さんがいなくてね……」と改めて当時を振り返る。その上で「あの頃は全員が敵に見えたし、この景色が壁に見えた。でも不思議なもので、今は壁に見えなくて。自分を守ってくれる存在に見えますね」と心境の変化を語り、「ありがとう、本当に」と観客に感謝を伝えた。
そして「これからの僕らの人生に光が当たるといいな、これでよかったと思えるといいなと思って歌います」と「僕らだけの主題歌」へ。まるで人生の伏線回収のようなライブのエンディングで、〈もう戻れないね〉というフレーズがかつてなくポジティブに響いた。戻れないから、全部を携えて、前へ進む。人生は楽しいことばかりではなく、時には挫けそうになることもあるが、今日のように美しい日がいつかやってくると信じて歩いていく。両手の指を固く組んで、〈過去 未来 今が手を繋いで/次の夜を照らしてる〉というフレーズを噛み締めるように歌っていたセンチミリメンタルは、次の瞬間、両手を大きく広げ、〈ここにいるよ〉と堂々と歌い上げた。全身全霊のボーカルに、バンドメンバーも熱い演奏で応える。同時にステージから光が溢れ、私たちの目の前に夜明けの光景が現れた。その光は確かな温度を伴って、観客の心の中に残り続けるに違いない。今度はセンチミリメンタルの音楽が、リスナー一人ひとりのお守りになってくれるはずだ。
全17曲を演奏後、センチミリメンタルは観客に「この音楽たちにリボンを結んであなたに渡します」と伝え、ツアーを締め括った。ライブの終演後には、3月15日から初のアジアツアー『Centimillimental ASIA TOUR 2025 “ribbon”』へ出発することをファンに改めて報告。続けて、9月より、国内6都市をまわる初の全国ツアーを開催するとの発表もあり、フロアには喜びの歓声が広がった。さらに、年内に2枚目のオリジナルアルバムをリリースできるよう、現在準備中とのこと。今後ますます加速していくであろうセンチミリメンタルの活動から目が離せない。
Photo by 山川 哲矢
■ セットリスト(3月2日(日)東京・Zepp Haneda)
01. ステージから君に捧ぐ
02. 生きていかなくちゃ
03. キヅアト
04. 青春の演舞
05. スーパーウルトラ I LOVE YOU
06. ひとりごと
07. とって
08. 東京特許許可局
09. nag
10. ストレイト
11. パレイド
12. うらがわの存在
13. 冬のはなし
14. 海へ
15. 結言
[ENCORE]
01. 星のあいだ
02. 僕らだけの主題歌