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Nulbarich、「終わらないけど、一旦まじサンキュー!」活動休止前最後のライブ『CLOSE A CHAPTER』ライブレポート

December 10, 2024 18:00

Nulbarich

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Nulbarich、「終わらないけど、一旦まじサンキュー!」活動休止前最後のライブ『CLOSE A CHAPTER』ライブレポート

「一旦まじサンキュー!」
2024年内の活動をもって休止を発表したNulbarich。活動休止前の最後のライブ『CLOSE A CHAPTER』を12月5日(木)東京・日本武道館にて開催。Nulbarichが武道館に立つのは2回目。2018年2月以来6年ぶりとなる。今回のスタートはクローズの始まりでもあり、Nulbarichの音楽とステージが大好きな筆者は、正直アンビバレンスな状態にあった。だがステージのラストでJQ言った言葉と、この日のステージがすべてを物語っていた。

スモークが青いライトに揺らぎ、登場したメンバーのシルエットに拍手が響く。今回は、JQ(Vo.)に加え、歴代メンバー12人(ツインドラム、ツインキーボード、トリプルベース、クワトロギター、マニピュレーター)が勢揃いしているのでセットだけでも圧巻だ。スクリーンに「NULBARICH」の文字が映し出されると、ライトは青から赤くステージを染め、JQが登場。オープニングは「TOKYO」。LEDはステージをぐるりと取り囲むような仕様で、映像分割も出来るが1枚の画になった時の空間演出は見事だった。スモークがアリーナ席のオーディエンスにも流れ出し、まるで朝焼けのよう。

Queenの「We Will Rock You」を思わせる力強いドラムとクラップから「Stop Us Dreaming」へ。会場にマイクを向け、軽やかにステージを動き回るJQ。「全力できてよ。全力できてよ。全力できてよ。全力でこいよ!」鼓動を震わせるバスドラと歪むギターを背後にJQがオーディエンスを煽れば、彼らも全力で応える。続く「NEW ERA」はイントロで歓声が沸く。この曲でNulbarichの存在を知った人も多いのではないだろうか。開放感あるフックとグルーヴィーな鍵盤の音色、飛び跳ねるJQ。冒頭でアンビバレンスな状態などとぬかしておきながら、気づけば筆者は3曲目にしていつものようにただ楽しんでいた。多分それは勢揃いしたメンバーと音楽の中で楽しげに遊んでいるようなナチュラルなJQの姿があったからかもしれない。
『ポケットモンスター』シリーズのゲームサウンドをもとに新しい音楽を世に届けるプロジェクト「Pokémon Music Collective」から今年5月に配信リリースされた「Lucky (feat.UMI)」。今回はソロでバンドアレンジを楽しませてくれた。ソウルフレーバーの「Spread Butter On My Bread」からJQがドラムを叩く「JUICE」への流れは痺れた。「楽しんでいこうね」軽快なテンポと楽しげな表情でドラムを叩くJQに、2018年の武道館を思い出した人も多かったのではないだろうか。

大きな歓声が鳴り止まない。しかし「In Your Pocket」のイントロ、エレキの音色を背に「ぶっちゃけ言うわ。想像してたより歓声少な!よわ!」ハハっと笑いながらオーディエンスを煽るJQの声や「楽しんでいこうよ!」という口調からギアが変わったのが分かる。本気でついて来いと言っているようだ。都会的なサウンドと心地よいループ、キャッチーなメロを併せ持った「Super Sonic」は言わずもがな名曲中の名曲。各々好きなようにリズムに身を委ねるオーディエンス。これぞ音楽の醍醐味だと心の中で気持ちよくその景色を観ていた。「STEP IT」のピアノソロに歓声が沸き、ギターソロに拍手が広がる。「そんなんじゃ踊れないよ」JQがフロアへマイクを向ければ、2階席の一番うしろまで跳ね上がるオーディエンスの姿が見える。UKガラージのリズムが心地よい「Liberation」、武道館を包むスペーシーなリバーブからの「Zero Gravity」、楽しげに身を寄せながら曲を彩る「Follow Me」など、クアトロギターだからこその層の厚さやサウンドの違いで楽しませてくれ、鳴り止まない拍手と歓声で会場が熱気に包まれている。ギターだけではない。それぞれの音のグルーヴは最高にクールだ。

「踊ろう!」
清々しい口調のJQが「VOICE」のヴァースで響かせるファルセットは、ただただ心地よい。しかし何度聴いたかしれないキャッチーなフックを暫くは生で聴けないんだと思うと涙腺が崩壊しそうになる。「全部みんなのおかげで、全部みんなのせいです。全部みんなのおかげで、全部みんなのせい!」「It's All For Us」のイントロ、そういうJQは何を考えているんだろう。“この場所は変わらない〜誰にも踊らされない 感じたまま踊ろうや”これはリリックだが、今のJQの本音にも思えた。

セッションのリズムは「It's Who We Are」のものだとすぐに分かる。それでもオーディエンスはそのイントロに歓声を上げた。ジャジーなアレンジ、アグレッシブなエレキソロは会場のボルテージも上げ、「Kiss You Back」ではクラップが広がる。「エモ ムリ!エモ ムリ!ぶつけよう。終わっちゃう」細い何本もの照明の光が天井からフロアを照らす「Almost There」のイントロ、JQはそう言った。23曲目、実際終わりが近い。メンバー全員のボルテージが集結した「Skyline」が終わり、会場にはJQの言葉さえかき消すほどの歓声が響いた。「うんざりだよ、歌うのなんて。もう飽きたわ」熱量を切らさない24曲ぶっ通しのパフォーマンス。完全な本音じゃないにせよ、そう言いたくもなるだろう。8年間走り続けたNulbarich。JQは、ここまで一瞬だったと言う。「大したこと言えないけど」と前置きをした上で、メンバー13人で飲んだときに「JQだから集まったんだよ」と言われたことへの喜び、長きにわたりNulbarichのステージを支えてきたスタッフへの言葉、メンバーへの感謝を口にした。

「どうせなら酸っぱい味も辛い味も甘い味も味わった方が、きっと今日みたいに何かフラッシュバックさせる時にいっぱいあった方がいいでしょ、思い出なんて。観ないふりはしない。どうせなら噛み締めてやるんだ。終わらないけど、一旦まじサンキュー!」その言葉と共に、最後に選んだのは「Sweet and Sour」。キラキラと舞う紙吹雪と達成感あふれるJQの笑顔が印象的だった。
曲が終わりメンバーに「何か挨拶しとく?バイバイって」と言ってみたり、メンバーとハグした後に「泣いてるやついる!」と小学生ばりに茶化してみたりのJQ。しかし今回の活動休止は、Nulbarichというバンドが呼吸を合わせるために一旦しゃがむ期間であり、決してネガティブなものでないと感じさせてくれ、オープニングで感じていたアンビバレンスな状態はクリアになった。(勿論寂しくないわけではない!)

終演後、ステージ後方に新曲「Lights Out feat.Jeremy Quartus」のミュージックビデオが突如投影、さらに来週12月11日に本楽曲が収録されたアルバム『CLOSE A CHAPTER』がリリースされることがアナウンスされ、ファンを喜ばせてくれた。公演名と同様「CLOSE A CHAPTER」=章を閉じる・幕を閉じる、とタイトルが付けられた本作ではmabanuaとの初タッグでリリースされた先行シングル「遊園」、現在制作拠点とするLAで制作された「Believe It」を含む全12曲が収録される。

活動は休止するが、その間もNulbarichは自分たちの中にあることを感じさせてくれた最高のライブだった。

Photo:岸田哲平
Text:秋山雅美


□ セットリスト
M01 TOKYO
M02 Stop Us Dreaming
M03 NEW ERA
M04 Handcuffed
M05 Backyard Party
M06 Lucky
M07 SMILE
M08 Cigarette Butt
M09 Spread Butter On My Bread
M10 JUICE
M11 In Your Pocket
M12 Super Sonic
M13 STEP IT
M14 Liberation
M15 Zero Gravity
M16 Follow Me
M17 VOICE
M18 It's All For Us
M19 Floatin'
M20 It's Who We Are
M21 Kiss You Back
M22 A Roller Skating Tour
M23 Almost There
M24 Skyline
M25 Sweet and Sour


■ Nulbarich HP
https://nulbarich.com/

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