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flumpool、ビルボードライブツアーを完走!クリスマスをテーマにした選曲とアレンジで、ファンと分かち合った温もり

December 25, 2023 14:00

flumpool

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flumpool、ビルボードライブツアーを完走!クリスマスをテーマにした選曲とアレンジで、ファンと分かち合った温もり

flumpoolが2年振り2度目となるビルボードライブツアー<flumpool 15th Anniversary「 ROOF PLAN 」〜Sweet Christmas Session〜with Yuji Sugimoto & Shohei Yoshida>を開催した。タイトルにある通り、サポートを務めるのは2021年に続く参加となる、元WEAVERで現在はソロプロジェクト「ONCE」としても活躍する杉本雄治(Pf)と、これまで幾度もflumpoolとステージを共にしてきた吉田翔平(Vn)。12月8日・9日の横浜公演を皮切りに、15日・16日は東京、ファイナルの22日・23日大阪公演まで6日間、各日2ステージ制で全12公演を実施。格式高いシックなライブレストランを舞台に、クリスマスをテーマにアレンジした楽曲群を届け、冬の一夜を温かく彩った。レポートするのは、15日の東京1st公演の模様である。

クリスマスソングのBGMが流れる場内では、開演を待ちながら食事やドリンクを楽しむ観客。厳かな鐘の音が響くと、メンバーは階段を降り、客席エリアを通過してステージに到着。阪井一生(Gt)、尼川元気(Ba)、小倉誠司(Dr)、最後に辿り着いた山村隆太(Vo)は大きく両手を広げて礼をして、ハンドマイクを握り「君が笑えば ~Just like happiness~」を歌い始めた。思いがけないレア曲の披露だったが、温かなコーラスが生み出すハーモニーは、ライブのコンセプトにピッタリと合致している。観客は着座のままステージを見つめ、メンバーも基本的にはチェアに腰掛けて歌唱、演奏し、落ち着いたムードでライブは進んで行った。

イントロが無くいきなり歌から始まって意表を突いたのは、代表曲「君に届け」。前半は阪井のアコースティックギターと杉本のピアノ、吉田のヴァイオリンだけで、メロディーの良さを活かしたアンサンブルとなっていた。間奏から尼川のベース、小倉のドラムも加わって全員での演奏へ。最後に音を止める瞬間、互いに目を見て呼吸を合わせるメンバー間には、まるで小さなスタジオでプライベートな演奏を楽しむかのような、リラックスした温かなムードが醸し出されていた。

「来てくれた皆さん、ありがとうございます。近いでしょ?この近さに慣れました?」と山村が語り掛けると、余りの近さに観客はドギマギと動揺した様子。「同じ気持ちです(笑)」と山村は共感を示し、“手が届く距離”と言いながら実際に手を動かしてみせたり、観客の顔を覗き込むように見つめたりしてコミュニケーションを交わし、空気を和ませていく。「クリスマスが近いので、クリスマスをテーマにアレンジしてきました。ビルボードは(客席との距離が)近いけど、逆に言うと皆さんの熱が伝わるので、心ホクホクになって帰ろうと。冬に心温まるライブになればいいな、と思っています」と語ると、乾杯を呼び掛けた。

阪井の歯切れのよいギターと尼川のベースで始まり、艶やかなヴァイオリンの音色が加わってスタートした「DILEMMA」は、原曲とガラリと印象の変わった大人びたアレンジで驚かせた。<抱き寄せる>というフレーズを歌いながら、伸ばした右手をグッと引き寄せるなど、山村は身体の動きも駆使して表現豊かに歌唱。小倉のドラムは華やかなフィルインを鳴らし、杉本のピアノも眩く煌めいた音色を奏でた。「two of us」はピアノで始まり、小倉のドラムはジャジーな匂いを漂わせ、雰囲気を一変させていた。

「楽しんでますか、皆さん?」とMCで呼び掛けた阪井は、山村に向かって「なんでお前だけ、そのジュース(※ビルボードライブとのコラボドリンク)飲んでるの?」とツッコんで、尼川が「ヴォーカルの特権!」とクレームを上乗せ。当の山村は、観客の料理の皿で溶けてしまったアイスを見て「僕達の温もりで溶けた」「(カップルで)『“あーん”したらあかん』っていうルール。2人しか見えてへんやん? 俺が視界におらんやん?」などと客席を巻き込み、笑いを巻き起こしていく。音楽だけでなく、その温かなムードもまたflumpoolライブの魅力である。阪井主導のメンバー紹介では、杉本が「こんなにお客さんを弄るバンド、見たことない(笑)。距離も近いし、15年のflumpoolとファンの皆さんの関係性ならでは」とコメント。吉田は「1stセットが終わった後の(2ndまでの)2時間で、映像を観て、“ここはこうしたほうがいい”とか、未だにやっているんですよ。そういうストイックさが10年経っても変わってない」と、メンバーの影の努力を絶賛した。小倉は紹介されると立ち上がって頭を下げ、「ビルボードでこんなカオスなバンド、初めてだと思う。すみませんでした」と謝罪。尼川、阪井はそれぞれ礼をして観客に手を振り、最後にコールされた山村は「大事なメンバー、今日来てくれたお客さん!」と讃えると大きな拍手が起きた。

クリスマスシーズンを、「人を思うことの寂しさや孤独を教えてくれる季節」でもある、と表現した山村は、「そんな心の影にスポットライトを当てた曲」だと解説して「僕の存在」を届けた。ピアノとヴァイオリンによる序盤のアレンジは原曲に忠実で、山村の歌唱表現がより豊かに進化したことがハッキリと感じ取れる。やがて全員の音が加わり、しっとりとした演奏を繰り広げていく中、阪井のギターソロは圧巻。多彩な音色を次々と繰り出し、情感豊かなメロディーを爪弾いた。メンバーは背後から強いライトに照らされ、逆光の中で曲を終えるとそのまま小倉のドラムから「ディスカス」がスタート。尼川のベースがファンキーに跳ねながらリズミカルに絡んでいく。艶っぽさと遊び心のあるアレンジで、山村は立ち上がりステージを動き回ってパフォーマンスした。

杉本のピアノ演奏をBGMにして、山村が「flumpoolは皆さんご存知の通り、10月1日にデビュー15周年を迎えました」と語り掛けると、観客は大拍手。来し方を振り返り、「活動休止、バンド自体が完全に止まってしまったこともありました。だけど、素直に弱さを見せる大切さも認識しました。本当の温かさとは、自分の心を開いて伝わってくる、人からの温もりだと気付いた」と続け、「これまでつくってきた過去の自分たちの歌に、もう一度今の気持ちを込めて届けたいな、と思って選んだ曲です」との紹介から「36℃」を披露した。オレンジ色の温かな光にステージが包まれて、コードを奏でる阪井のギターストロークに乗せ、切なく美しいメロディーラインを歌い始めた山村。いくつもの壁を乗り越えて15周年を迎えた今、歌詞が新たな意味を帯びて心に響いて来る。バンドへの想い、ファンとの関係性など、“今のflumpool”を映し出す曲として聴こえた。

小倉がウィンドチャイムを鳴らしたのを合図に、ステージ背後の幕が左右にゆっくりと開いていき、全面の巨大ガラスに美しい夜景が出現した。この上なくロマンティックなムードの中、始まったのは「Snowy Nights Serenade ~心までも繋ぎたい~」。ジングルベルも鳴り、ミラーボールが強い光を放って、会場全体を包みこんでいく。間近なシートだけではなく、上方座席の観客ともしっかり視線を合わせながら、山村は<心からありがとう>というフレーズを熱く歌い届けた。終盤、赤と緑のライトが点灯し、会場はクリスマスカラーで染め上げられていった。

懐かしい曲たちが多いセットリストだったが、直近のナンバー「Magic」の力強さ、15年というキャリアを積み重ねてなお変わらぬピュアさにも胸を打たれた。歌詞に耳を澄ますと、flumpoolというバンドは、聴き手の心と直に繋がり合える音楽を様々な形で表現し、送り届け続けてきたことに改めて気付かされるのだった。「ラスト1曲は、もっと皆さんの温もりを近くで感じたい、そんな気持ちで選びました」との紹介から、「Touch」を披露。原曲とはリズムアレンジをガラリと変え、イメージを一新していた。終盤で「皆さんの声を聴いてみたいんですけど、行ける? ビルボード!」と山村は観客の歌唱をリクエスト。メンバーもコーラスし、全員の声が混ざり合って生まれた一体感の中、本編は幕を閉じた。

すぐにアンコールを求める手拍子が鳴り始め、メンバーは全員コラボドリンクを手に再登場。“ヴォーカル特権”疑惑で笑いを巻き起こした本編中の伏線が回収され、それに気付いた客席からはどよめきが起きた。最後に届けたのは、「大切なものは君以外に見当たらなくて」。日本武道館における15周年記念ライブでも最後に披露した特別な1曲だが、大胆な再構築を施したアレンジ。音数の少ない箇所、全員が揃って音を鳴らす箇所とのメリハリを際立たせ、メロディーの美しさとパワフルな演奏を存分に堪能。山村は終盤、渾身の歌唱を轟かせた。

「最後までありがとうございました、flumpoolでした」と山村が代表して挨拶し、一列に並んで深く頭を下げると、改めてメンバー紹介。「ホールとかと違う空気感で、こういう温かさがビルボードの良さだと思います。またやりたいなと思っています」と山村。「来年(2024年)は全国ツアーも決まっています。15周年の集大成ということで、セットリストもやりたい曲をたくさん届けていきたいなと思っています。今日は遠くから来てくれた人もいると思いますけども、次は皆さんの住む街の近くに行ってライブができることを、心から楽しみにしています」と語り、3月からスタートする全国ツアー<15th Anniversary tour 2024 「This is flumpool !!!! 〜15の夜に逢いましょう〜」>への想いを述べた。「今年が終わってしまって寂しい気持ちはありますけども、また来年皆さんと会えると思うと希望が湧いてきます。皆さんも同じように、悲しいこと、悔しいことたくさん生きているとありますけども、お互い前を向いて、また笑顔で会える日を信じて頑張っていけたらいいなと思っています。今日はどうもありがとうございました! 早いけどハッピーメリークリスマス! そして、良いお年を!」と挨拶。寒い冬だからこそ感じられる“温もり”をコンセプトとし、クリスマスに合うアレンジを施されたflumpoolの楽曲群は、いずれも新鮮な発見に満ちていた。ステージ上でメンバーが顔を見合わせて呼吸を揃え、音を鳴らしたり止めたりする、その一部始終を間近に見ることができるのは、観客にとって貴重な体験に違いない。flumpoolとそのファンが見つめ合い、心の距離を一層近付けたであろうコンセプトライブツアーだった  

取材・文 / 大前多恵
カメラマンクレジット:KAYO SEKIGUCHI



<セットリスト>
01.  君が笑えば ~Just like happiness~
02.  君に届け
03.  DILEMMA
04.  two of us
05.  僕の存在
06.  ディスカス
07.  36℃
08.  Snowy Nights Serenade ~心までも繋ぎたい~
09.  Magic
10.  Touch

ENCORE
大切なものは君以外に見当たらなくて

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