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「TUBE LIVE AROUND SPECIAL 2022 Reunion オフィシャルライブレポート

November 1, 2022 12:00

TUBE

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「TUBE LIVE AROUND SPECIAL 2022 Reunion オフィシャルライブレポート

夏といえばTUBE!彼らの33回目の横浜スタジアム公演は3年ぶりの有観客開催。3万人の大観衆が集結した、トリプルスリーを超えるクアトロスリーの記念碑的公演を全曲独占放送・配信!

1991年から30年連続で、地元・神奈川のホームグラウンド・横浜スタジアムでコンサートを行ってきたTUBE。夏の風物詩として定着してきたが、コロナ禍の影響により2020年は無観客での開催、昨年はついに中止に。

2020年はデビュー35周年でもあったが、アニバーサリーライブもままならなかった。ファンもメンバーもスタッフも、それぞれにもどかしい思いを募らせてきたが、ついにその思いを解き放つときが来た。

今年9月3日。待ち望んでいた有観客でのハマスタ公演が実現。ライブタイトルは再会を意味する「Reunion」。声援やジェット風船禁止という制約付きではあるものの、熱い気持ちを抱えた大観衆が球場を埋め尽くした。  

場内が暗転し、汽笛が鳴る。ヨコハマの夜ならではのムーディーな空気に包まれる。TUBEの4人は意表をついてグラウンドのスタンド側に設けられたエンドステージに登壇、メインステージへ縦に4人連なるかるがも自転車で移動する、ユニークなオープニングで幕が明けた。

ヴォーカルの前田亘輝が「だって夏じゃない」を熱唱し、他のメンバー3人は手を振るファンに向けてサインボールを投げ込んだりシャボン玉を吹いたり。全身で熱視線を浴びて音楽のエンジンも温まり、さあ、アクセル全開!

妖艶な女性ダンサーが彩りを加え、春畑道哉のラテンフレーバーなギターがさく裂した「ガラスのメモリーズ」、続く「さよならイエスタデイ」ではリズミカルなパーカッションが激しく揺れ、グルーヴィーな角野秀行のベースがアグレッシブにうねる。

90年代前半のシングルを3連発したところで、前田が聴衆に向けて熱い言葉を投げ掛ける。「3年ぶりだよ、みんな!」誰もが割れんばかりの拍手喝采を贈る。

一拍置いて、懐かしいサキソフォーンとキーボードのフレーズが鳴り響く。泣けるTUBEメロディを代表する「夏だね」そして「湘南 My Love」だ。冒頭からパワフル全開の松本玲二のドラムスも、ここでは心地良い余韻を残す。

続いては、80~90年代のヒット曲を集めた「ハマスタスペシャルメドレー」。当時の懐かしい映像と共に、アゲアゲなナンバーが続く。「夏を待ちきれなくて」「ゆずれない夏」「SUMMER DREAM」「夏を抱きしめて」「Beach Time」「Only You 君と夏の日を」。細かい説明は不要だろう。怒涛の大ヒット曲の連発に、ボルテージは早くも最高潮。まさにサマーナイトフィーバー!

公式TikTokの企画応募者から選ばれた2組との「シーズン・イン・ザ・サン」セッションを挟んで、4人は再び360度を見渡せるセンターステージへ。スツールに座ってプレイされたのは日本の祭りをイメージした「夏祭り」、リリースされたばかりの63枚目のシングル「夏立ちぬ」、そして壮大なバラード「Remember Me」。汗ばんだ素肌を、ハマの夜風が優しくぬぐう。

圧巻は永遠の愛を誓う名曲「君となら」だった。毎夏恒例、前田が大量の水を全身で浴びて噴水のカーテンの中で歌う。以前は耐えながら歌う前田の表情が少し辛そうにもコミカルにも見えた演出だったが、この夜の前田の表情は喜びに満ちていた。水しぶきがまるで歓喜の涙のように美しくあふれていた。滴り落ちた心の雫は、どこまでも透き通っていた。

感動の余韻にひとしきり浸った会場の空気を引き裂くような稲妻が走る。春畑のギターソロだ。日本初の女子プロサッカーリーグ「WEリーグ」のテーマ曲「WE PROMISE」。照明が舞台を赤く照らし、スリリングなギターの音色と共鳴する。松本が「スターリョージ」としてメインヴォーカルを務める「俺達のために乾杯!」を挟み、春畑の最新ソロアルバム表題曲「Spring has come」へ。彼らの音楽性の幅広さが堪能出来るセットリストに、場内から感嘆のため息が漏れる。

至福の時はあっという間に過ぎ、フィナーレが近付く。彼らの真骨頂とも言えるラテンな「ジラされて熱帯」「真夏のピュ~!」では、来場者に配られたリストバンドが発光し、会場がさながら巨大な野外ディスコと化す。ホーンセクションもますます熱を帯び、カーニバルはクライマックス!

最後は前田自ら、そして、皆のために。「傷だらけのhero」「You'll be the champion」。ステージと客席がひとつになって力強いアンセムを分かち合う。悩み苦しみ、時に傷付いても、決して負けずに進んでいく。誰もが人生の英雄であり、王者なんだ。真摯なメッセージがハマスタの広い空間を熱気で包んだ。彼らの本質はまぎれもない、正真正銘のロックンロールバンドだ。胸熱な気分に酔いしれながら、夜空に放たれる花火の光が往く先を見つめていた。

来場者に配布されたリストバンドが青く点灯しイルミネーションのような美しさを描く中、アンコールへ。メンバー、サポートメンバー、ダンサーが踊りながら再登場し、TUBE夏音頭ともいえる「海の家」を披露。続く「恋してムーチョ」では、オーディエンスが心の中で「ラララ」を大合唱する。最後は「この曲演らないと夏を終われないでしょ!」と「あー夏休み」へ。日本の夏の象徴とも言えるナンバーでこの夜を締めてみせた。

様々な葛藤や困難を経ても、「暗くなるばかりじゃいられない!」。彼らはあえて笑顔を絶やさない。最後は4人で感謝を込め、マイクを使わずに「どうもありがとう!」と叫んで去っていった。

彼らが何故、誰からも愛され、親しまれ、そして、深くリスペクトされているのか。その答えがこの夜改めてわかった。どこまでもピュアでひたむきな姿勢、それがTUBEなんだ。満たされた表情で帰路につく人々の足取りに、明日へと立ち向かう力がみなぎっているように見えた。それが彼らの音楽の魔法、底力だ。最高じゃないか。

この夏、全国各地で3年ぶりの納涼行事が開催され、多くの感動が生まれた。この夜のコンサートも、コロナ禍という困難を乗り越えた祝祭であったと言えるだろう。彼らの記念碑公演を見ずして、今年の夏は終われない。

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