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Augusta Camp 2018 -20th Anniversary- Presented by The PREMIUM MALT'S ライヴレポート

Augusta Camp 2018 -20th Anniversary- Presented by The PREMIUM MALT'S ライヴレポート

October 11, 2018 20:00

オフィスオーガスタ

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9月23日(日・祝)、富士急ハイランドコニファーフォレストで開催された【Augusta Camp 2018 -20th Anniversary- Presented by The PREMIUM MALT’S】は二度と来ない、かけがえのない1日だった。1999年、山崎まさよしの単独野外コンサート【YAMAZAKI MASAYOSHI in Augusta Camp】として始まったオーガスタキャンプも、今年で20年。初回から現在までの映像が流れると「懐かしい!」「若い!」などの声が飛び、ライヴは福耳によるCOIL(岡本定義)の“ミュージック”からスタートした。COILと福耳は20周年。スキマスイッチ15周年と、今年のオーガスタキャンプはアニバーサリーに溢れている。バンドメンバーはあらきゆうこ(Dr)、種子田健(Ba)、田中義人(G)、中北裕子(Per)、細海魚(Key)。

第一部、Newcomer Act、第二部で構成された今回。第一部、ポップシーンとしてまず注目すべきは、やはりデビュー前から密着してきた松室政哉だろう。今年スキマスイッチの全国ツアーにオープニングアクトとして帯同していた松室は、そのスキマスイッチとコラボレーション。「どうですか、ロングコートは。」大橋卓弥は、すぐさま松室の衣装にツッコミを入れ、常田真太郎は静かに笑っている。松室も「絶対イジられると思った!」と即答。たったこれだけのことだが、この3人の良好な関係性が伺い知れた。大橋は少し前にSNSで「大橋卓弥 夏フェスでチンピラシャツ着がち」と書かれたことを早速ネタに「僕はいつも通りチンピラシャツですけどね(笑)。」と笑いを取っている。曲はスキマスイッチのツアーでも歌った“きっと愛は不公平”。この切ないバラードで松室は大橋と歌声を重ね、互いのソロを意識している。スキマスイッチがステージを降りると、9月19日にリリースしたばかりの“海月”の話に。この曲は松室が18歳の頃に作った作品。当時オーガスタキャンプを観る側だった松室は「18歳の時、まさかこの曲をオーガスタキャンプで歌うなんて思いもしてなかった」と語ると「皆さんにとって一番最初に浮かぶ大切な人を思いながら聴いて頂ければ嬉しいです。」と続け、力いっぱい歌いあげた。

次に注目したのは、新曲“Close to me”を初披露した長澤知之。一緒にいられる時間の喜びを歌ったこの曲は愛に満ちている。人間の持つ様々な業を一枚一枚めくっていくと、最後はこの曲のようにシンプルに美しく愛を感じられるのだろうか。スクリーンに映し出された歌詞と丁寧に歌う長澤の声が秋空へ溶けていった。ここであらきゆうこを残し、バンドメンバーは退場。第一部を締めくくるのは福耳のニューアルバム『シンガーとソングライター 〜COIL 20th Anniversary〜』の曲たち。 オーガスタキャンプの20年を語る上で、当然COILの存在は大きいので、やはりそこにも注目したい。まずはこのアルバムの主役である岡本定義を筆頭に、スキマスイッチが登場。岡本が彼らの為に書いた“雨天決行”。「本当はスキマスイッチにシューゲイザーを演らせたかった」と、同アルバムインタビューで岡本は語っており、その意外性は本当に面白そうだが良い意味でスキマスイッチらしいポップな仕上がりは筆者個人的には気に入っている。この4人のスペシャルバンドを岡本は「ミゴイルイッチ」と命名。続いて山崎が、曲名に因んでティーカップを持って登場。「何ですか? ミゴイルイッチって。」とお約束のツッコミも忘れない。ミゴイルイッチをバックバンドに従え“エーゲ海でお茶を”しっとり歌うと、最後は山崎と入れ替わりに浜端ヨウヘイ、松室政哉、村上紗由里をコーラスに呼び込んで“メロディ~君のために作ったんだから~”で終了。ニューカマーへ襷を繋いだ。

Newcomer Act一組目はロサンゼルス在住、18歳のSSW 出立樫太。プロフィールにも「R&B、フォーク、ゴスペルなどのフレーバーを併せ持つメロウでポップなソングライティングセンス」とあるが、印象的な歌声とネイティブな英語でエド・シーランやジェイムス・モリソンのようなサウンドを奏でる。MCで見せる初々しさは好感が持てた。今迄のオーガスタアーティストとも違うポピュラリティで、“This is how I feel”を含む3曲を披露。出立は今秋誕生するオーガスタの新生レーベルより第一弾アーティストとしてデビューが決定している。次に、岡本と一緒に登場したのは同じく18歳のSSW、HaiRi。話している時と印象の違うスモーキーな歌声に惹き付けられる。“LOVE★G〜愛の重力定数〜”を岡本のギターで歌うと、「夢の中にいるみたい。」と笑顔を見せる。昨年、同会場でのオーガスタキャンプ、バーベキューステージで演奏していたHaiRiは、今年地元長崎の高校を卒業。実際卒業式でも歌った自身の卒業ソング“未来のつぼみ“でステージを後にした。第二部で大橋は「ニューカマーにも恐怖しか感じない」と冗談めかしく話していたが、実際今後期待大の二組だった。

第二部がスタートし、バンドと共に登場したのは竹原ピストル。スキマスイッチとともに“同期の桜”を披露した。このライヴレポートを読んでいる人の殆どは知っていることと思うが、竹原ピストルは以前「野狐禅」というユニットで活動しており、スキマスイッチとはデビュー同期。オフィスオーガスタを一度離れた竹原は野狐禅も解散。ソロとして再び此処に戻ってきたのだ。「例えば野狐禅で出ていた当時のオーガスタキャンプを思い返しながら、例えば4年前にまたオーガスタに拾ってもらったことによって、とても久しぶりにスキマスイッチのお二人と再会した時の照れくささと嬉しさを思い返しながら…」と、オーディエンスの感動を誘いながらも、この日の為に作った曲の歌詞を曲振りで殆ど説明してしまうオチまで用意されているあたりはさすが竹原。だが「スキマスイッチデビュー15周年に寄せて」というサブタイトルと、オフマイクでの雄叫び、 一緒にステージに上がれるこの瞬間の感謝を込めた歌詞には結局感動させられるのだ。

「ピーちゃんの歌も良かったけど、ちーちゃんの歌にも良い歌があるから、聴いて下さい。」落ち着いた口調なれど名前をかけた元ちとせの挨拶に、オーディエンスは笑顔で拍手。細海の鍵盤がダブのリズムを刻む“ワダツミの木”。広い空の下、オーガスタキャンプで聴くこの曲は格別だ。続いて登場したのは、さかいゆう。「福耳も20周年ということで、20年前の今日、みなさん何をやっていたか覚えていますか?」唇の端に笑みを浮かべた、よく見る表情でピアノを奏でながらオーディエンスへ問いかける。同年はさかいがミュージシャンに進むきっかけを作った友人が亡くなった年であり、その友人へ向けた“君と僕の挽歌”空いっぱいに歌声を響かせた。ステージに残ったさかいが浜端ヨウヘイを呼び入れると、杏子と山崎まさよしも登場。浜端は来年メジャーレーベルよりデビューすることを発表。「おめでとうー!ヨウヘイ!」杏子の祝福とオーディエンスの拍手に「今から始まると思いますので、皆さんよろしくお願い致します!」と、決意を新たに、みんなでこの曲を演ることが夢だったという“MUSIC!!”を、一瞬声を震わせるも感無量な表情で力強く歌い、オーディエンスのワイパーにくしゃっと顔をほころばせた。

「皆さん楽しんでますかー?」次に登場したのは秦 基博。
「ずっと見ていて、色々コラボレーションがあったりしていますが、気づいたらさっき(第一部)も一人でしたし、ピーちゃん(竹原)はスキマスイッチのお二人とすげー仲良くしているし、同期(長澤)は何してるかなと思って話しかけてみたら、最近ハマっている携帯ゲームの話しかしてくれないし。」秦は淡々とした口調で会場を笑わせる。イントロの冒頭で歓声と拍手があがった“鱗(うろこ)”。昨今、映画やドラマやCMなどで更に秦の楽曲を耳にする機会が増えたが、それでもこの曲の瑞々しさは薄れることがない。曲力というのはそういうものだろう。気がつけばうろこ雲は赤く染まり始め、肌に感じる空気も冷え始めたが、雰囲気を一変させるようなドラムの音で、オーディエンスのボルテージを上げることは容易に想像出来た。「オーガスタキャンプ楽しんでますかー!」ラメ入りの黒い衣装で登場したのは杏子。BARBEE BOYSの“STOP!”でバンドと共にエネルギッシュなステージを見せる杏子に、肌寒さを忘れるほど熱狂した。続いてバスドラがクラップを誘うとスキマスイッチ登場。杏子のステージに触発された大橋が「俺もテンション上がってきたぜー!」と叫ぶと、常田までもが「俺もだぜー!」と叫ぶ。大橋は杏子が置き忘れた帽子を一瞬被ると、スキマスイッチのライヴでは定番の“全力少年”の長いシンガロングで更に会場のテンションアップ!スキマスイッチのステージが終わり、ふと空を見上げると月が出ていた。